歌う介護士

看取りをしたご入居者から「あなたの声は癒される」と。お一人一人を思い浮かべながら、ずっと歌い続けています。

芸術の秋、アートセラピー

2008-10-23 21:48:31 | Weblog
有名美術館では、さすがシーズン。中吊り公告を見て、ツイ行って見たくなるような展覧会が多い。
ウン、自分が行く、というよりアクテイビテイでお連れできるところが増えた。
自分は、いつも足が疲れているので、余分な行動は出来ないでいる。


都心は、まだ色づきが少ないが、
私の地元は色づき始めている。
やはり気温が2・3度違うのだなあ。

思いついて枯葉を拾い集めた。
銀杏・すずかけ・たいさんぼく・かえで・名無しの木?
紅葉はまだ色づいていない。

同僚が「え~ッ!わざわざ拾ってきたの?一人で?」と、驚く。
考えもしなかったが、買い物袋を持った中年のオバサン一人で落ち葉拾いをしている図。
うら寂しい姿に見えたかも・・・(笑い)
仕事の一貫だと思っているから何でもできるのね。

今日は、その収穫を前に広げて朝から「コラージュ創り」をする。
今日は認知症フロアの1つを看ている。
このフロアの入居者は集中力もあり、うまく指示さえ入ればまだまだ作品作りが出来る。
普段は個人作品になりがちなので、全員参加の合作とした。
と、いっても男性は不参加。体調不良者も見るだけ。
10時過ぎからはじめて、昼近くになっても出来上がりを気にして手を止めない。
午後まで、昼をはさんで4時間近くかかったが、
模造紙大の「落ち葉のコラージュ」が出来上がった。
拾い集めた落ち葉と残り毛糸のリサイクル。
出来上がった作品を壁に展示して、みんな満足そう。

「季節ごとに創りましょうか!」
「次は雪景色がいいわね!」


認知症でも疾患名も症状も、認知度も違う方5人だが、
軽度の人が重度の人をリードするという自然な流れが出来てくる。
「そうそう、ここに貼ればいいの。」
「好きなようにどれでもイイノヨ。」
「ええ、あ、それじゃだめじゃない?」
このフロアの人たちは穏やかな時間の流れの中で生活している。
強制されるのがダメな人も、合作で満足できる作品になったことで次の作品を作ろうとする意欲が出てきた。
怪しいオバサンの落ち葉拾い、アートになった。(笑い)


秋のアレルギーの真っ只中にいる私。
口の中のいがいが、からから。
喉の炎症。
声にもろに影響する。
ア~ア、1年の半分がアレルギーで悩む。歌い手としては役に立たないなあ。

モチベーションを挙げようとしているが、
上がりきれない引っ掛かりが心の底に澱んでいる。
誰にもどうにもできない滓。

介護される理由、されない自由?

2008-10-20 21:27:47 | Weblog
介護でよく使われる「その人らしく生きる」。

うちの会社のケアの考え方に、
入居者のなさりたいように生活をフォローする。
起きたい時に起きて、寝たいときに休み、食べたい時に食べる。
(と、言っても食事を取っておけるのは調理後2時間である)


社内研修で出たいくつかの事例を紹介しよう。

*生活リズムが出来てきて、毎日が活性化しADL評価が上昇している方。
「その方は、ホントは居室で自由にしていたかったのでは?
  その方にとって生活が活性化してよかったと思っているんでしょうか?」

『この方は発症するまで精力的に働いてきた方です。引きこもりでも人嫌いでもなかった。アルツハイマーという病気が引き起こした症状ではありませんか?その方に合わせるケアというのは、その方の発症までの生活や性格も背景にしなくてはいけないのでは?』

*超高齢者で、終末期と見られている方の食事形態変更
「今、おかゆに刻み食ですが、ミキサー食に変更した方が食べられるのでは?」

『前に調子が悪かった時、ミキサー食にしたことがあったけれど、嫌われました。
食事の形を変えて食べられる状態ではないのでは?栄養補助食は多少飲めるのだから、そちらで対応しませんか?』
気分が良いと「かゆ・キザミ」でも自分で食べようとする方です。

*甘い菓子とか菓子パンしか食べない
「今のままでいいんでしょうか?」

『ピック病の症状の一つだから、そこを判っていて欲しい。甘い食べ物を大量に摂るという症状がある。(最近知りました) 栄養状態には良くないのは判っているけど、とにかくカロリーを取る方が先。2ヶ月で3キロ以上減っている。家族も甘いものは食べるという認識は持っている。』
この方、栄養補助食品も全くダメ。水分の補給も苦心している。
(過去に同じ症状の経験があるが、そのときは経験不足で苦い思い出となった。)

*体調を崩す前は、パン・常食で半分摂取していた方。体調不良で食べられなくなり、1ヶ月経過して、かゆ・キザミで全量食べている。
「体調も戻ったし、入れ歯も直ったし、常食に戻しては?」

『ご本人に聞いたら、いまのママが食べやすいと。硬いものは噛み難くて食べられないそう。常食の時は半分しか食べてなかったが、今は全量食べられている。』
(本人の意思ということで、しばらく継続。)

*「よく似合うと誉めてくれた!」と、3週間も洋服を着替えてくれない方。
「どうしましょう?」

『誰が誉めたの!(笑い)』
次の入浴日まで待てずに、ちょうど帰る途中ばったり出会った娘さんに依頼。
家族ぐるみのケアの助かるところ。本人は3週間もたっているとは考えもしていない。この方、こだわり始めるとなかなか手ごわい方である。

*座る場所にこだわる方

他の入居者が座っていてもどかせて座らないときがすまない。場所への執着が強くなるタイプ。一度決めてしまうと移動できなくなる。


認知症の人は、座る場所も変えないほうが良いといわれることがある。
認知症の症状によって異なるので全てに当てはまるわけではない。元来の性格も影響すると私は考えている。


スタッフが起きていて欲しいと勧める入居者の別な一面(思い)を聞いた。
「何をするにも手を借りないと出来ないから、起こしてもらうのも悪いと思うよ。おやつは好きだから起きて食べたいと思うけどね。」
これも本音だろう。
「面倒だ、起きたくない!」のも本音。

阿修羅の如く多面的なのだ。


うちの子どこへつれてったの!?

2008-10-18 01:40:02 | Weblog
夕食後から訴えが決まって多くなるCさんである。
今夜は食後は落ち着いていた。(担当スタッフは、ホッ)

20時。
自分の担当フロアが片付いたので、Cさんのフロアの体調不良の人の様子見がてら訪室していたらCさんの声がする。
ノックと共に、
「ねえ、うちの子どこにいるの?」
「え?*一さんのこと?」
「違うわよ、3番目の、まだ2ヶ月の子よ。」

さすがの私も一瞬返答に迷う。(なんのこと?)
「3番目の子?なんて名前の子なの?」
「え~とね、なんていったっけな、シュンイチだったかな、忘れちゃった。」
「シュンチャン?赤ちゃんは別のところに預かってるのよ.」
「そりゃそうでしょけど、つれてきて欲しいのよ。」


いわゆる認知症の周辺症状で、混乱したり作話するには必ず原因がある。
身近なところでは、テレビを見ていて現実と結びつけたり、
テレビドラマやニュースが作話や不穏の原因になっているのがけっこう多い。
ただ、本人とずっと一緒にいるわけでないので気づかないだけだ。

Cさんは83歳。
女性は痔の出血を生理が始まった!になるし、
施設入居しておなか周りが太った奥さんが「浮気して!」と大喧嘩している場面に出くわしたこともある。(これは嫉妬妄想だが)

さすがに、赤ちゃんを連れてきて!には困った。
「もう寝ているから寝かしてあげてよ。」
「どこにいるの?」
「上の階のお部屋よ。」
「くたびれちゃって、膝が痛いのよ。」
「じゃ、暖めて休みましょう。明日の朝まで預かるから心配しないでね。」
居室まで送ってパジャマに着替えるように勧める。
「良かったわ、この年で赤ん坊なんて育てられないもの。」

と、一旦落ち着いてベッドに入ったのだが、
2時間後(もう私は帰る時間)、血相変えて「子供を連れてくるっていうから待ってたのに!」と、エレベーターで申し送りしていたフロアまで来て、私じゃなく20代の男性スタッフにいきなり怒り出す。
「え?え?え?僕ですか!?」
こういうときは思い込まれるスタッフがいる。
恐らく普段の対応が原因ではないかと思う。

入居者のターゲットになるスタッフというのは同じスタッフ。
「あの人はだますから大嫌い。」といわれていた若い女性スタッフ、
別な入居者には「うちの主人に色目を使う。」と焼餅の対象にされていた。
今の施設ではないが、こういうこともあった。


認知症の人たちは本音で生きている。
もし嫌われたとしたら、その原因は自分にある。
一緒にいて楽しく心地良い感情は残るし、傷つけられた心も残る。
人物誤認をするといわれるが、
人の識別は最後まで可能ではないかと私は思う。


3人目の子供?を探していたCさん、深夜になって息子さんが電話に出てくれたので、やっと落ち着いたそうだ。
息子さんは、3人目の子供なんかいるはずがない!と話したと思うが、
最初の段階で、私がそういったら反応はどうだったか?
現実から離れている最中の人に、現実を認識させると、
不穏が増大する時と、納得できる時がある。
Cさんはレビー小体型。
一旦穏やかになったので良しとしたのだが・・・。

トップを維持する精進を見習いたい

2008-10-16 00:02:04 | Weblog
NHKの特集でB'zのドキュメンタリーを放送していたのをご覧になられた方はおられるだろうか?
B'zは2人のユニットで、CD売り上げ20年間、常にトップだそうだ。
2人で分担して作曲と作詞をしている。
ほとんどTVでは見かけない。
うちにもCDが何枚か存在している。

わずか1小節に2週間悩みこだわる曲つくり。
一日8時間以上のギターの練習。
ボーカルは、毎日300回の呼気訓練。(きついですよ、これ)
舞台を縦横無尽に走りながら歌うためのトレーニングを毎日。
声を保つためにエアコンは使わない。
見せるための体も鍛えている。
専任のトレーナーもいるらしい。まるでスポーツ選手だ。

たまたま見たのだが、驚かさせられた。
さすがだなあ、本物のプロ根性を持つ人たちだ、と感じた。
修行している高野山の僧のような・・・。


プロと名がつけば、何事でも同じではないか。
なかなかそこまで出来ないが。だから、トップにはなれないのね。
自分は、常に、そこそこで満足してきてしまった。
まだ記憶力は大丈夫。
プロとして学ぶべきことはいくらでもある。
介護に飛び込んで、わずか8年である。
介護保険開始よりチョット早いだけ。
仕事がわかりだし、矛盾に気づいたのは丸3年経ってからだ。

B'zの精進までは真似できないが、
出来る範囲で取り組みたい。


そして、欲張りな私は音楽も併走させたい。
BGMつきの介護?な~んて、なかなかステキじゃない!

夢遊病の娘

2008-10-14 00:48:11 | Weblog
ベリーニのオペラ。ベリーニはわずか34歳で夭折したが、この「夢遊病の娘」と「ノルマ」という美しいオペラを残した。
歌曲も旋律が美しい。
が、
カデンツアの難しいことといったら!
しかし、カデンツアがあってこその美しさでもあるが・・・。

ブログ友達にチケットを取っていただけたので、久しぶりの本格的な舞台を鑑賞できた。
S音大のコンサートホールで、我が家からも近いのだ。
2年前に引っ越してきて、キャパ2000の大ホールがある。
暮れのメサイアも一緒に聴きに行くつもりである。

パンフレットの中に、選科生募集のチラシがあった。
年齢制限なしである。
アマで本格的声楽を歌いたい人のための講座。
だが、授業料は専門学校なみに高いなあ。
もちろん入所試験もある。定員15人。
少数精鋭?カア。
受けてみようか・・・、伴奏者確保できるか?
も一つ、授業時間とお仕事との調整が出来るか?
難問だ。


パソコンも習いたいし、
お仕事での研究成果も出したいし、
かなり欲張っている私である。

このところ職場で疲れ気味なので、いささか手を引こうかとも考えつつ。
何しろ、私が委託した結果などの情報がスムーズに渡されないのだ。
うちの会社、外部に送る文章までチェックが入る。
「軟らかな文章に直しましたよ。」とかいうが、
柔らかすぎると、内容が伝わらなくなることもある。
契約関係は単刀直入の方が正しく伝わる。
ま、外から転職してきたものは信用していないのだろうから仕方ない。
経営陣が変わったので、育てられた会社のカラーを変えないようにするので精一杯になっているのかもしれない。
守ろうとしても変化はとめられない。


愚痴になってしまった。

夢遊病の娘のストーリーは、かなり飛躍した「ムリ」がある。
単純な恋物語を描いているのだが。
深い愛をつむいだはずなのに、裏切られた?と思い込んだ途端!
恋敵と結婚するという。それもすぐに!
合唱も豊富にある。
一緒に行った友達は日本画家なので、
「舞台美術が美しい。」と話していた。
この舞台は以前の構成と同じだったので、収納場所もあるのだろう。
前回観賞したのは新国立の中ホールだった。
まだ引越しする前である。

大学オペラは、あちこちで聴いているが、講師クラスも出演するのでチケット代が格安なのにお得なのだ。
演奏レベルも高いのでお薦め、機会があったら聴いてみて。