3月7日 おはよう日本
東京国立博物館で開かれている展示会。
修復された陸前高田市博物館の文化財 約70点が展示されている。
破れてカビが発生した教科書
「尋常小学 修身書 卷四」昭和二年(1927)
こうした書籍の中にも修復されたものは多くみられる。
(来場者)
「日本の技術は素晴らしいと感心した。
きれいに直っている。」
陸前高田市博物館は暮らしに根付いた道具などを主に展示していた。
しかし津波でそのすべてが被害を受けた。
陸前高田市には修復が必要な文化財が約46万点あった。
これまでに修復されたのはその5分の1である。
修復作業が行われている陸前高田市の旧生出小学校。
作業を担うのは地元の人たち15人余である。
その1人 陸前高田市博物館の学芸員の熊谷賢さん
文化財のほとんどは市民から寄贈された。
ひとつひとつに暮らしの営みや人々の思いが込められていると熊谷さんは言う。
(陸前高田市立博物館 熊谷賢さん)
「博物館に資料を託した人の思いや
今まで残してきた人の思いもある。
心の復興
文化財をはじめその部分が復興することで本当の意味での復興が成し遂げられる。」
しかし津波の被害を受けた文化財の修復は世界的にもほとんど例がなく
困難で時間がかかる。
小学校には作業が手つかずの文化財がいまも20万点保管されている。
東京国立博物館の神庭信幸さんは現地で技術指導をしている。
最も大変なのは塩分を取り除くことだと神庭さんは言う。
塩分が残っていると湿気を帯びてカビが発生しやすくなるからである。
どうやって塩分を取り除くのか。
試行錯誤が続いている。
和紙で墨で書かれた書物の場合は毎日水につけながら水を変える方法を考えた。
塩分濃度をこまめに計り水につける期間を調整しなければいけない。
塩分を取り除いたら丁寧に乾燥し手作業で和紙を貼っていく。
どの和紙が適しているのか探しながらの作業である。
修復には約1か月かかり
破損がひどい場合はさらに長い期間が必要だと言う。
さらに難しいのは油絵である。
水分を含むとキャンバスが縮んで絵の具がはがれやすくなるため
水につけることが出来ない。
1年以上 方法を探し続けてたどり着いたのがゼリー状の物質。
改装から取り出した成分で作ったものである。
これをキャンバスに貼ると塩分を吸収してくれることが分かった。
絵画の修復方法にひとつの道が開けた。
(東京国立博物館 神庭信幸保存修復課長)
「今まで体験したことのないことを全部白紙の状態から進めていく。
お手伝いが出来れば携わったかいがあったと
今までやってきている。」
陸前高田市のすべての文化財を修復するにはあと10年はかかる見込みだということである。