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3月21日 編集手帳
ポスターの文字「上方落語」をプレイガイドの担当者は“ドカタ”落語と読み間違えたという。
桂米朝さんが初めて東京で独演会を催したときのこぼれ話を、
劇作家の大西信行さんが『落語無頼語録』(角川文庫)に書き留めている。
漫才人気に押されて絶滅寸前に追い込まれた過去が、
上方落語にはある。
古老を訪ねては忘れられた噺(はなし)を拾い集め、
現代に通じる笑いのセンスで洗い上げて高座にかける。
それを独力で成し遂げたのが米朝さんである。
研究者と表現者が別人ならば、
世に似た例はあろう。
動物学者として絶滅危惧種の蝶(ちょう)を幾つも再発見したのみならず、
みずから蝶に身を変じて美しく舞ってみせた人をほかに知らない。
〈人はみな吾(われ)と同じく祈るらんわが米朝の命ながきを〉。
歌人の吉井勇が八代目桂文楽に寄せた一首を借りて“米朝版”に改変してみたが、
落語ファンの誰もが抱いた願いであったろう。
米朝さんが89歳で死去した。
喜(き)ィ公(喜六)に清(せい)やん(清八)、
茶金(ちゃきん)の旦那(『はてなの茶碗(ちゃわん)』)から鞍馬の天狗(てんぐ)(『天狗裁き』)まで、
みんな、
お供をして旅立ってしまった。
そんな気がする。