12月3日 編集手帳
米アップルのコンピューターが日本に初めて入ったのは、
ちょうど40年前だという。
持ち込んだのは、
小さな企業を営む技術者と、
夏休みを使って渡米に同行した知人の会社員だ。
製品の設計思想の美しさにほれ込む人がいれば、
国内での事業成長を夢見る人もいた。
今は世界屈指の大企業も、
日本での普及初期には多くの個人が関わっていたと、
斎藤由多加著『林檎の樹の下で』(光文社)は紹介する。
今、
同様のエネルギーを感じるのは、
宇宙に挑む新興企業だ。
試練も多い。
宇宙空間に散らばる宇宙ごみの除去を目指すアストロスケール社の人工衛星は、
これを載せたロシアのロケットの通信が先週の打ち上げ後に途絶えたままだ。
小型で安価なロケットの製造と打ち上げをねらう別の企業も今夏、
北海道での発射実験に失敗した。
だが、
挫折は覚悟の上であることを、
関係者の取材では感じる。
同書に登場し、
大学で教べんも執るPR会社の井之上喬会長は「起業精神を持つ若者は今も多い」と話し、
若い人にもっと機会をと訴える。
過去を懐かしむのではなく、
今にいかす処方箋を探しているか。
自問する。