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「#MeToo」から3年 映画界の変化

2020-12-17 07:05:04 | 報道/ニュース

11月16日 NHKBS1「国際報道2020」


映画界ではびこってきた男性優位や女性への抑圧。
世界3大映画祭の1つ ベルリン国際映画祭は
今年8月
これまでの「最優秀男優賞」と「最優秀女優賞」を廃止。
来年からは受賞者の性別を問わない「最優秀主演賞」と「最優秀助演賞」を設けると発表した。
そのきっかけとなったのが3年前に始まった性暴力やセクハラを告発する一連の「#Metoo」運動である。
世界的に活躍する女優が次々と被害を名乗り出たことで瞬く間に広がり
それに勇気づけられた多くの女性が声をあげるようになった。

ニューヨーク・タイムズのカンター記者。
3年前 ハリウッドの著名なプロデューサーだったワインスティーンの性暴力事件をスクープした。
(ニューヨーク・タイムズ カンター記者)
「被害者の話はあまりにも強烈で
 絶対に真実を暴かないといけなかったのです。
 ワインスティーン被告のセクハラを世間に知らせないまま死んでいくことはできません。」
しかし取材は難航。
さまざまな圧力がかかったという。
(ニューヨーク・タイムズ カンター記者」
「多くの女優に話を聞きましたが
 当初 被害を話してくれたのは1人だけでした。」
それでも厳しい取材を重ね
ついに真実を明るみに出した。
(2017年 10月5日 ニューヨークタイムズ)
ワインスティーン氏はセクハラ告発者に数十年にわたり口止め料を払い続けた
この記事がきっかけとなりワインスティーン氏は逮捕。
今年3月 性的暴行などの罪で禁錮23年を言い渡された。
この間 多くの女優・歌手・モデルなどが#MeToo運動に賛同。
ハリウッドをはじめ
映画界全体で当たり前とされてきた男性中心の文化に風穴があき始めた。
2年前のカンヌ映画祭では大きな変化が起きた。
コンペティション部門の審査員の半数以上を女性にしたのである。
さらに映画界の根本的な変革を目指す新たな運動も。
その名は「50/50by2020」。
映画界の選考委員や応募作品の監督の女性の割合を増やすため
男女比などを公表するもので
スウェーデン映画協会などが提唱している。
これまでに世界3大映画祭のカンヌやベルリンを含む少なくとも119の映画祭が署名した。
(スウェーデン映画協会 サーナーCEO)
「この運動はまだ始まったばかりですが
 世界の多くの国から受け入れられています。
 映画界にはさらなる多様性が必要で
 変化を求め続けます。」
中でもカンターさんが「きわめて大きな変化だ」と指摘するのが
ハリウッドで当たり前とされてきたキャスティング・カウチ。
“寝て役をとる”ことの見直しである。
(ニューヨーク・タイムズ カンター記者)
「“キャスティング・カウチはハリウッドそのもので今更変えることはできない”
 という風潮でした。
 しかしもう受け入れられません。
 間違った行為だと認識が変わってきました。」

ベルリン国際映画祭が性別の違いによる表彰をやめることは変化の象徴と言える。
映画祭の代表者は
“監督や脚本などの賞では性別は問われない
 俳優の賞も演技の出来栄えだけを基にすると考えた“と説明している。
さらに性別だけでなく広く人権への意識も高まっている。
2020年9月にはアメリカ映画祭最高の栄誉とされるアカデミー賞の主催団体が
作品賞について
出演者の一定以上を女性やマイノリティー・障害のある人などとする新たな選考基準を
2024年から適用すると発表した。
こうした取り組みは社会問題などを描くなどしてきた映画祭として
変わらなければいけないという危機感を表している。
企業や学校などでも #MeToo 運動に触発される形で多くの女性が声をあげ始めている。
一方でニューヨーク・タイムズのカンター記者は
“見過ごされている問題もある”と指摘している。

#MeToo 運動の影響は世界に広がっている。
アメリカではセクハラ関連の申し立てが増加。
また韓国では政府がセクハラの相談窓口を設置した。
日本でも2019年3月
性犯罪の無罪判決が4件相次いだことから
被害者に寄り添う気持ちを花で表現しようという“フラワーデモ”が開かれるようになった。
その一方でカンターさんは
“特に社会的に弱い立場の女性たちにとってはまだまだ声をあげにくい状況だ”と指摘する。
(ニューヨーク・タイムズ カンター記者)
「もし日常的に上司のセクハラを受けるレストランで低賃金で働く女性がいて
 その女性の立場は3年前と変わったでしょうか。
 私は変わったとは思えません。
 “すべてが変わったけれども何も変わっていない”ということです。」
そして“女性の立場を向上させるため声をあげ続けることが大切だ“と訴える。
(ニューヨーク・タイムズ カンター記者)
「変化は誰かが声をあげることで起きるのです。
 過去は変えられませんが
 自分の痛みを社会の変化につなげられるかもしれません。」

新型コロナウィルスの感染拡大によって
日本のフラワーデモは
一時オンラインでの開催を余儀なくされ
運動をどう広げていくかが課題となっている。
さらに多くの国で外出制限が行われ家で過ごす時間が増えたことから
家庭内での性暴力が増えたという報告もあり
職場や家庭で弱い人たちの声に今いっそう耳を傾けるべきである。
日本の場合
性暴力やセクハラの被害を訴えた人がいわれなきバッシングを受けるケースがあるが
これはアジアで広く見られる課題だという。
カンター記者は
背景には
性暴力の被害を口にしたり
被害にあった人が身内にいるのは恥ずかしいと感じる文化があるからではないかと指摘する。
カンター記者が取材の過程をまとめた本の中に出てくる
ワインスティーン被告の事務所で働いていたアジア系の女性は
性暴力の被害にあったということを家族にすら話していなかった。
カンター記者が家を訪ねて家族は初めて知ったという。
家族も受け入れて最終的には実名で公表するまでになった。
日本を含むアジアでは性に関する話題自体タブー視されている現状がある。
暴力やセクハラのない社会の実現のために勇気をもって声をあげるだけでなく
そうした声を受け止めることが重要である。



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