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原石を掘り出して磨いていく

2012-02-25 14:33:08 | 編集手帳


  2月22日付 読売新聞編集手帳


  戦前、
  国語の浄化を目的にした詩人の団体がつくられ、
  佐藤春夫も会員に名を連ねた。
  永井荷風は日記に書いている。
  〈佐藤春夫の詩が国語を浄化する力ありとは滑稽至極といふべし…〉
  (岩波文庫『断腸亭日乗』より)

  時は流れて戦後、
  佐藤が選考委員を務める芥川賞を石原慎太郎氏『太陽の季節』が受賞した。
  佐藤は選評に書いている。
  〈この作者の美的節度の欠如を見て最も嫌悪を禁じ得なかった〉

  さらに時は流れて今、
  石原氏が芥川賞の選考委員を降りた。
  〈今の作家は時代を反映していない〉
  〈昔は新人賞の作品は面白かったけど、
   全体に(レベルが)下がってきたかな〉(本紙のインタビューに答えて)

  退任した石原氏(79)と黒井千次氏(79)に代わって、
  奥泉光(56)、堀江敏幸(48)の両氏が新たに加わり、
  芥川賞の選考委員は全員が戦後生まれになるという。
  どういう“原石”が掘り出されるか、
  楽しみに待つとしよう。

  荷風は佐藤を嗤(わら)い、
  佐藤は石原氏に眉をひそめ、
  石原氏は当節の若手作家に失望を隠さない。
  才能とはいつの世も、
  先輩たちの苦言と渋面のなかで磨かれていくものなのだろう。

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