11月14日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
パレスチナは長年イスラエルの占領下にあり
物流や人の移動が制限されている。
そのため貿易収支は輸出が輸入の5分の1以下と赤字が続き
経済が低迷している。
こうしたなか
世界最大のイスラム教の国との経済交流を通じて活路を見出そうとする動きが始まった。
パレスチナ暫定自治区の主要都市ナブルス。
地元産のオリーブ油とナツメヤシの加工販売をしているジアドさん。
10年前から輸出を開始し
去年の輸出額は日本円で7億円だった。
(食品加工販売業 ジアドさん)
「パレスチナには素晴らしい農産品があります。」
地元経済の発展のためにも販路を拡大し輸出を増やしたいジアドさん。
頭痛の種となっているのがイスラエルがパレスチナに課している物流の規制である。
パレスチナは貿易港を持っておらず
輸出にはイスラエルの貿易港を利用せざるを得ない。
物品を港に運ぶことも容易ではない。
検問所ではパレスチナからやって来たトラックはいったん積み荷を持ち上げて
もう一度イスラエルのトラックに積み替えなければならない。
その理由は
パレスチナのトラックはイスラエルへの乗り入れが禁止されているからである。
積み荷は厳しい検査を受けなければならず
コンテナへの積み方にも厳しい制限がある。
このため
コンテナ1つあたり日本円で18万円余の追加コストと
多くの時間を費やさなければならないとジアドさんは言う。
(食品加工販売業 ジアドさん)
「治安が悪化すると商品は倉庫に戻され
さらに1週間待たされます。
物流の規制によりコストがかさむため
私たちの商品は価値競争力がありません。」
さらに人の移動の制限もビジネス拡大の障害になっている。
パレスチナには空港がなく
イスラエルの空港を使うことも通常許されていない。
ジアドさんは外国で商談を行う場合
毎回隣国のヨルダンにいったん陸路で出国し
そこから第3国に渡航している。
そうしたなかパレスチナ企業とのビジネスに乗り出した国がある。
世界最大のイスラム教の国
人口2億6千万人のインドネシアである。
インドネシアは1960年代
植民地支配を受けていた国々の独立をリードする主要国だった。
その伝統から
31年前 いち早くパレスチナを国家として承認し
市民レベルでもイスラエルの占領に強く反対している。
ヨルダン川西南のエリコ。
今年7月
インドネシアの企業9社がパレスチナ企業70社と商談会を行った。
イスラエルとの国交がないため
インドネシアのビジネスマンはパレスチナ暫定自治区を訪れることは難しいのだが
日本政府の働きかけで実現した。
商談会に参加したジアドさん。
インドネシア最大の経済団体の副代表でさまざまな事業を展開するムフティさんと話す機会を得ると
国産のオリーブ油やナツメヤシの販路を拡大したいと熱心に売り込んだ。
ムフティン自身もパレスチナに連帯感を寄せているとあって
前向きな反応が得られた。
(インドネシア商工会議所副代表 ムフティさん)
「パレスチナ人は兄弟同様なので
何とか助けたいのです。
ただ支援を差し伸べるだけでなく
両者間の貿易を活発にすれば
もっと良好な関係を伊豆居ていけます。」
パレスチナでの商談会から3か月後
ジアドさんの姿がインドネシアの首都ジャカルタで開かれた見本市会場にあった。
ムフティさんのインドネシア商工会議所が
パレスチナを支援しようと
会場に専用ブースを無償で設置してくれたのである。
ムフティさんとの再会を喜ぶジアドさん。
待っていたのは朗報だった。
インドネシア政府がパレスチナの求めに応じて
関税なしでオリーブ油とナツメヤシを輸入することに最終的に同意したのである。
ジアドさんの農産品は年内にもインドネシアに輸出できる見通しになった。
ムフティさんの商工会議所は
来年4月のラマダンに合わせて
ジアドさんが出荷するパレスチナ産のナツメヤシの販売促進キャンペーンの実施を約束してくれた。
(食品加工反外業 ジアドさん)
「巨大市場への足掛かりが得られて
大変興奮しています。」
占領というハンデを背負い経済が低迷するパレスチナ。
パレスチナとの連帯感を寄せるインドネシアとの間で始まった新しい経済交流に
熱い視線が注がれている。