日暮しの種 

経済やら芸能やらスポーツやら
お勉強いたします

今年の漢字 「金」

2016-12-17 07:15:00 | 編集手帳

12月13日 編集手帳

 

 太宰治の『斜陽』に「経済学」を語ったくだりがある。
〈人間というものはケチなもので、
 永遠にケチなものだという前提が無いと全く成り立たない学問…〉であると。

ケチというよりも、
“惜しむ”学問だろう。
お金を惜しみ、
資源を惜しみ、
時間を惜しむ。
経済活動という地図上に、
無駄のない最短の道順を追求してやまない。
国の財政も家計のやりくりも、
地道ながら尊い“惜しむ”心があって初めて成り立つ。

その対極にあるものは、
一獲千金を狙う賭博だろう。
「惜」という字の心(立心偏)が金に置き換わると、
錯誤の「錯」になる。
心が金に…は、
ギャンブル依存症の悲劇そのままである。

歳末恒例「今年の漢字」は〈金〉だという。
メダルラッシュに沸いたリオの夏を思い出す前に、
与野党の攻防がつづく通称「カジノ解禁法案」を連想してしまった。
日本選手団の面々には少々申し訳ない気持ちでいる。

経営上の妙味がどれほどあろうとも、
カジノは人の不幸と不運を養分にして咲く徒花(あだばな)である。
日本経済の定評であった優秀の「秀」の字が悲しい金にまみれ、
「銹(さび)」に変わる。
見るに忍びない。




コメント    この記事についてブログを書く
« イギリスEU離脱 “研究開発”現... | トップ | 有楽町2丁目 トラットリア ... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

編集手帳」カテゴリの最新記事