11月2日 NHK「おはよう日本」
人類共通の財産である世界遺産が開発と保全の間で揺れている。
多くの世界遺産があるオーストリアでは
豊かな自然や歴史的地区で開発の計画が進められ
その保全が課題になっている。
オーストリアとハンガリーの国境にまたがるノイジードラ―湖。
自然豊かな湖には300種類以上の野鳥が生息。
アシが茂る景観も高く評価され
2001年ユネスコの世界遺産に登録された。
湖の近くにある街では屋根の上にコウノトリも住み着いている。
しかし湖のハンガリー側で
リゾートホテルや港 公園などをつくる大規模な建設計画が浮上。
地元政府は
“環境には問題なく
工事を始める予定”と説明している。
オーストリアの大学生 ゴルビッヒさん。
(大学生 ゴルビッヒさん)
「もし開発計画が進めば自然は大きく破壊されます。」
ゴルビッヒさんが中心となり地元の約40人が反対活動を行なっている。
そこで8月
国際的な30の環境団体と連携して
世界遺産を登録するユネスコに働きかけた。
世界遺産の登録が抹消される可能性がある「危機遺産」に載せることを促し
ユネスコから警告してもらうことで歯止めをかけたいと考えた。
(大学生 ゴルビッヒさん)
「世界遺産の登録抹消を望んでいるのではありません。
開発がその地位を脅かすと
政治家に知ってほしいのです。」
一方 危機遺産に登録されても開発計画が進んでいる地域がある。
ウィーンには
ヨーロッパの歴史を今に伝えるゴシック建築のシュテファン大聖堂や
ハプスブルグ家の栄華を伝える王宮などがあり
町の歴史的地区は世界遺産に指定されている。
この地区に6年前
高さ73メートルの高層ビルを建設する計画が示されたのである。
(2017年7月 世界遺産委員会)
「ウィーンの歴史的地区を危機遺産に登録します。」
ユネスコの世界遺産委員会は2017年
ビルの建設によって歴史的地区の景観が大きく変わるおそれがあるとして
危機遺産に指定。
ウィーン市に見直しを求めている。
しかし危機遺産となってからも
市民の間では反対への機運は盛り上がりを見せていない。
(市民)
「市民の多くはビルの高さに興味はありません。」
ユネスコの警告を受けて
ビルの高さを低くするなど対応を検討しているウィーン市。
しかし
(ウィーン市 都市開発担当者)
「ここは人々が生活し働く場所でもあります。
ウィーン市は美術館ではありません。」
市の担当者は“計画の撤回はない”と強調。
新型コロナウィルスの影響で経済が大きな打撃を受けたこともあり
国際的な会議が開けるホールなどを整備し
“新しいウィーン”の姿を示していく必要があるとしている。
(ウィーン市 都市開発担当者)
「コロナ後のウィーンを
観光客にとってより魅力的な町にする必要があります。」
ユネスコの担当者によると
歴史的建造物を保全するための資金の多くは観光業に頼っているため
新型コロナウィルスの感染拡大で観光業が大きく落ち込んだ影響が出るのではと
懸念されている。