3月15日 NHK海外ネットワーク
野球がさかんなキューバ。
子どもたちの心もアメリカへと飛んでいる。
「ヤンキースに入りたい。」
「アメリカの選手のプレーが見たい。」
時流に乗ってビジネスに取り組む人も増えている。
オープンカーに観光客を乗せるツアーで生計を立てている男性。
社会主義のキューバでは原則として労働者全員が公務員である。
男性もかつては公務員だった。
しかし政府が経済活性化のために一部の職種で個人のビジネスを認めたのを機に
思い切って仕事を変えた。
その結果 公務員試合には約3,000円足らずだった月収は
多い月は10万円を上回るまでになった。
「国交正常で観光がさらに盛んになれば仕事が増えてもっとお金を稼げる。」
個人経営のレストラン。
エビなどカリブ海の海産物をふんだんに使ったメニューで外国からの観光客をもてなす。
店では最近 客の半数以上をアメリカ人が占めるようになった。
(アメリカ人観光客)
「キューバの本場の料理を食べることができてよかった。」
今はアメリカから直接キューバに行くことはできないが
第三国を経由して入国するアメリカ人旅行客が増え続けている。
1日の売り上げは多い日には30万円以上になる。
(レストランの店主)
「まずキューバで店を大きくして
アメリカ 世界各国に店を広げたい。」
個人でビジネスを営む人はキューバで年々増えている。
しかしその割合はまだ労働者全体の1割程度と言われている。
ビジネスには多額の資金が必要だからである。
大半の労働者は個人のビジネスとは無縁である。
アメリカとの国交正常化が実現しても
収入の上ではあまりメリットがないと見込まれている。
ハバナに住む元公務員のカルメン・カルミナールさん
国交正常化は社会主義体制に手厚く守られてきた市民生活を変えてしまいかねないと懸念している。
カルミナールさんは家事手伝いの仕事をしていて去年病気で働けなくなった。
それでも母親と娘2人となんとか暮らしてこられたのはキューバの福祉制度のおかげである。
その1つが配給制度。
主食の米・油・豆
キューバでは政府の補助ですべての国民がひと月に決められた量の食料品を割安で手に入れることができる。
しかしキューバ政府は財政難から配給を年々減らしている。
今の1か月分の配給量では10日ほどで食料が尽きてしまうと言われている。
(カルメン・カルミナールさん)
「以前よりも配給でもらえる量が減った。
どんどん減っていって大変なことになるのではないかと心配。」
足りない分ははるかに高い市場価格で買う人もいる。
しかしカルミナーラさんはお金がなく米も配給頼みである。
配給と娘の収入でなんとか暮らしているカルミナーラさん。
アメリカとの国交正常化の実現はキューバ国民の間に
昔は無かった格差を生み出すことになるのでは。
そんな新たな懸念が持ち上がっている。
(カルメン・カルミナールさん)
「私は皆が平等なのが理想だと小さいころから教わって育ってきた。
不平等は嫌いだが残念ながら今はそれが現実になっている。」