1月19日 キャッチ!
海外からの投資を積極的に集めることで成長してきたマレーシア。
中間層が拡大し
旺盛な内需が経済をけん引してきた。
しかし通貨リンギットは
アメリカのFRB連邦準備制度理事会による利上げの観測が出始めた1年半ほど前から急激に下落。
ドルに対し以前の水準に比べ20%ほど値下がりした。
輸入品の高騰が続き庶民の暮らしを直撃している。
中国系の住民が約30%を占めるマレーシアでは
すでに来月旧正月に向けた商戦が始まっているが通貨安が影を落としている。
旧正月の飾りつけを扱う店では
中国で生産された商品をドル建てで輸入している。
商品は去年に比べ15~20%値上がりした。
(店主)
「リンギットの下落とドルの値上がりで商売に大きな影響が出ています。
売り上げも伸びず
年々悪くなるばかりです。」
物価の上昇にさらに拍車をかけているのが
去年4月に初めて導入された6%の消費税である。
野菜や加工食品などあらゆる生活必需品が高騰を続けている。
個人消費の伸び率は金融危機が起きた2009年以来の低い数字にまで落ち込んだ。
(買い物客)
「何もかも高くなっています。
特に野菜です。
旧正月の商品はまだ買っていませんがすべてが高くなっているそうです。」
通貨安はマレーシアの労働人口の約3割を占める外国人労働者にも大きな影響を与えている。
マレーシアでは急激な開発や外国企業の進出に労働力の確保が追い付かず
周辺国からの外国人労働者が貴重な戦力として成長を支えてきた。
南部のジョホールバル。
シンガポールと国境を接する立地を生かし
300万人都市を作るという壮大な開発計画が進められている。
工業地帯には日系企業などが進出し
多くの外国人労働者が働いている。
しかしリンギット安で
外国人労働者の母国通貨に換算した収入は大きく目減り。
家族に生活費を送金しているため大きな痛手となっている。
(インド人労働者)
「2万4,000円程度した送金できないのではインドで働くのと変わりません。」
バングラデシュ人のムハンマドさんは9年前から建設会社で働いている。
リンギット安の影響で母国通貨に換算した給与はこの2年で20%ほど目減りした。
そのうえ食費など現地の生活費が高騰。
バングラデシュで暮らす妻へ送金する生活費は減らさざるを得なくなった。
(バングラデシュ人労働者 ムハンマドさん)
「妻からは送金額が減ったと言われました。
でも通貨安でどうしようもないんです。」
こうしたなかマレーシアへの出稼ぎを敬遠する動きが出始めている。
人材紹介会社では通貨安以降
出稼ぎに来る外国人労働者が激減。
毎年1,500人ほどを企業に紹介してきたが
今年度は200~300人に落ち込む見通しである。
さらに十分な給与を得られないことに不満を募らせ
契約途中の外国人労働者が突然職場から姿を消すケースも急増しているという。
1週間の間に約40人がいなくなった。
不法就労者となり
より良い報酬を求めて危険な仕事に就く人もいるという。
会社では紹介先の企業に対して外国人労働者の賃金を引き上げるよう求めているが
マレーシア経済の減速感が強まるなかにあって
賃上げは容易なことではない。
(人材紹介会社 ショーン・フー社長)
「現状への説明を求められたり
今後の生活への不安を訴えられたり
収入増の手段を訪ねられたりしますが
正直何も約束することはできないのです。」
経営者側は通貨安によって労働力不足に陥るのではないかと危機感を募らせている。
(マレーシア経営者連盟 アズマン・シャー代表)
「外国人労働者が働きやすくなるよう
企業は手当などの支給が必要です。
リンギットが2年前の水準に戻るまでシンプルな解決策は存在しません。」