3月7日 おはよう日本
マレーシア初の盲導犬 2歳のラブラドールレトリーバー ラショーン。
飼い主はスティーブン・チャンさん。
去年4月 盲導犬を支援する国際的な福祉団体からラショーン君を紹介された。
(スティーブン・チャンさん)
「とても賢い犬ですよ。
本当に賢いです。
指示をよく聞いてくれるんです。」
経営コンサルタントだったスティーブンさんは13年前に緑内障を発症した。
9回も手術を受けたが視力は回復せず
仕事を辞めざるを得なかった。
日常生活さえ満足に送れず自殺すら考えた日々。
しかしラショーン君と出会い再び生きる希望を取り戻したと言う。
(スティーブン・チャンさん)
「盲導犬がいることで言えることはひとつあります。
それは目に障害があっても何かを成し遂げられるということです。」
しかしラショーン君と外出できるようになったものの
新たな壁にぶつかった。
マレーシアでは盲導犬を連れて利用できる施設がほとんど無い。
この日スティーブンさんは妻が運転する車で近所のショッピングモールに出かけた。
犬とともに歩く姿にたちまち厳しいまなざしが集中。
すぐに警備員が駆け付けた。
結局スティーブンさんとラショーン君は追い出されてしまった。
(スティーブン・チャンさん)
「この犬は視覚障碍者のための盲導犬だと説明しましたが
ダメだ 出ていけ 犬は外にいろと言われました。
これまで何度もありましたから慣れてしまいましたよ。」
イスラム教ではブタと同じように犬を不浄な生き物とみなしている。
マレーシアでは国民の6割以上がイスラム教徒名だけに犬に嫌悪感を示す人が多いのである。
「もし犬を触るとしても
布で巻いたりして直接触れないように手を守らないといけないわ。」
「不幸にも触れてしまったらその部分を清めないとね。
イスラムの教えに従わないといけないからね。」
イスラム教徒ではないスティーブンさんは犬への抵抗は無い。
盲導犬が果たす役割を知ってもらうため
映像作家に日々の行動を撮影してもらいインターネットに公開している。
バスやタクシーの乗車を断られる場面は実際の出来事である。
盲導犬が拒絶される日常をあえてさらけ出した。
(スティーブン・チャンさん)
「視覚障碍者が盲導犬を連れて
行きたいところに行けるよう社会を変えたい。」
そうした思いは少しずつ伝わっている。
この日会ったのは映像を見たというイスラム教のタクシー運転手。
運転手はスティーブンさんとラショーン君の現状に心を痛め
初めてタックシーに犬を乗せることを決めたのである。
さらにスティーブンさんは視覚障碍者の日常を体験してもらおうと
暗闇の中で食事をするイベントも開いて盲導犬への理解につなげている。
「視覚障害がある人たちと同じ体験が出来て理解が深まりました。」
「盲導犬はもっと認められるべきだよ。
視覚障害があっても買い物に出かけたりごく普通に過ごせるからね。」
(スティーブン・チャンさん)
「マレーシアはイスラム社会ですが希望はあると信じ続けています。
どれだけ時間がかかっても私が元気な限り
盲導犬への理解が進むよう取り組み続けていきます。」
イスラム教徒にも盲導犬を受け入れてもらえるよう
スティーブンさんとラショーン君は歩み続けている。
スティーブンさんが盲導犬を知ったきっかけは
盲導犬の一生を描いた日本の映画だったそうである。
将来は盲導犬を育成する施設を作っていきたいということである。