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天が泣く五月

2011-05-21 20:11:13 | 編集手帳
  

  5月13日付 読売新聞編集手帳


  雨の朝、天使が仲間の天使に弾んだ声で言った。
  「やったね!きょうは座って遊べるよ」――
  西洋の小咄(こばなし)にある。
  晴れ渡る空を飛び回るのも楽しいが、
  たまにはのんびり雨雲の上で座って過ごしたいときもあるらしい。

  5月半ばといえば地上はまだ、
  木々の若葉越しに抜けるような青空を仰いでいたい季節である。
  座って遊ぶのはもうひと月ほど待ってほしいところだが、
  ここ何日か、列島は梅雨のはしりのような雨雲に覆われている。

  思えばこの春ほど、
  自分の住んでいない地域の気象情報に耳を傾け、
  目を凝らした春もない。
  きょうの寒さはいかほどか。
  晴れているのか、いないのか…。

  大きな本震と、
  たび重なる余震で地盤のゆるんだ被災地では、
  土砂崩れが起きやすくなっている。
  ただでさえ不自由な生活のなかで、
  心配の種が増えるのはつらかろう。
  天使もきっと、雨雲の上ではしゃいではいまい。

  『雨のことば辞典』(倉嶋厚監修、講談社)に
  〈天(てん)泣(きゅう)〉という言葉を教わった。
  いわゆる天気雨の異称という。
  天が泣く。
  天気雨に限らず、
  被災地に降る雨という雨を〈天泣〉と呼んでみたい5月である。

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