11月27日 国際報道2018
11月8日にアメリカ カリフォルニア州で発生した大規模な山火事による犠牲者は北部だけで88人。
過去最悪の被害となっている。
多くの犠牲者が出ている北部では
ようやく火が消し止められたものの
27日現在で連絡がつかない人が200人余にのぼり
現地では懸命の捜索活動が続いている。
毎年のように発生しているカリフォルニアの山火事だが
今年はなぜここまで被害が拡大したのか。
今回の大規模な山火事で被害が最も大きかったパラダイス。
カリフォルニアがゴールドラッシュにわいた19世紀半ばに
山を切り開いて造られ
その名のとうり自然豊かな楽園として知られていた。
老後を穏やかに暮らそうと多くの高齢者が暮らしていたが
連絡がつかない人が200人余にのぼり捜索活動が続いている。
自宅を焼け出された人たちは隣のスーパーの駐車場などにテントを張って避難生活を送っている。
(パラダイスの被災者)
「この先どうなるかわからないけど
仮住まいしながら前に進みたい。」
「自宅も店も失い
残念だけど
この街での再建はあきらめたわ。」
この街でなぜ被害が拡大したのか。
原因の1つと考えられているのが気象条件である。
(ABC 11日放送)
北部は例年になく少雨で
この先も雨は降りそうにありません
カリフォルニア州では例年
空気が乾燥する春から9月ごろまでが“山火事のシーズン”と言われてきた。
しかし最近はこの時期に限らず火災が発生するようになっている。
気象当局によると
今年の夏はカリフォルニア州一帯で平均気温が高く
9月は例年の5%程度しか雨が降っていない。
雨が降りやすくなる10月に入っても北部の降水量は平年の半分以下。
土壌や草木がからからに乾いたところに強風が吹きつけ火事を拡大させたと
専門家は見ている。
(UCLA 気象学者 ダニエル・スウェインさん)
「非常に強く乾燥した風が延焼を拡大させ
道路や川を超えて人口密集地まで達した。
ここまで速く山火事が広がることは誰も予想できなかったと思う。」
悪条件がいくつも重なって起きた山火事。
その火の勢いを
パラダイスから避難した住民はこう証言する。
(パラダイスの被災者)
「これまで見たことのない勢いで炎が渦巻きながら一気に広がった。」
「風が炎をあおって延焼を拡大させた。」
予想を超える速さで燃え広がった今回の山火事。
犠牲者が増えたもう1つの原因と考えられるのが
非難の遅れである。
山火事が発生した11月9日。
(パラダイスの被災者)
「道路は大渋滞でパニック状態でした。」
地図で確認すると
山間部のパラダイスから街の外へ抜ける主な幹線道路は1本だけ。
この1本の道に避難する車が集中し
大渋滞が発生した。
そこへ道が入り組んだ住宅街から多くの車が押し寄せる。
しかし渋滞している幹線道路に合流することができず
多くの車が立往生した。
火事が発生した直後
車に娘を乗せた父親は周囲を炎に囲まれるなか必死に抜け道を探していた。
この親子は炎を潜り抜けなんとか非難することができた。
しかし渋滞に巻き込まれたまま車内で犠牲になった人も少なくない。
(パラダイスの被災者)
「車の中で焼死した人や車から出て火に包まれ亡くなった人もいた。
まさにパニックだった。」
大規模な山火事が頻繁に発生するカリフォルニア。
異常気象が常態化するなか
当局だけでなく
そこで暮らす市民にも新たな備えが求められている。
指摘されているのは
非難を呼びかけるシステムが不十分だったという点。
多くの犠牲者が出たパラダイスでは山火事などが起きた際に
住民に対して一斉に非難を呼びかける防災無線のようなシステムは無かった。
当局によるとホームページに登録した人に対しては
電子メールやSNSを通して避難を呼びかけたということである。
ただ被災者は「火が迫って来たので慌てて逃げた」という人たちばかりだった。
パラダイス周辺はゴールドラッシュの時代に金を探すために開拓されたということで
道路は入り組んでいて
過去の山火事でも避難しようとする車で大渋滞が起こっている。
このため当局は山火事が起きた場合には
道路を一方通行にしたうえで
地域をいくつかのゾーンに分割して順番に避難するということにしていた。
住民は車による避難訓練をしていたが
想定を上回る規模で山火事が広がった。
リスク解析会社の試算によると
被害総額は北部だけで100億ドル(1兆1,300億円)。
ロサンゼルス近郊でも大規模な山火事があり
合わせると被害総額は州全体で1兆5,000億円にも達する見通しである。
課題となるのが住宅の確保である。
カリフォルニア州はIT産業の業績拡大などを背景に好景気が続いていて
住宅不足によって住宅価格は高騰している。
カリフォルニア州では1万3,000棟の住宅が火事で焼失。
被災者にとっては厳しい状況が予想される。
生活の再建を進めつつ
さらにいつあってもおかしくない次の山火事への備えも早急に求められる。