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夏草の茂れる星に還かへり来てまづその草の香かを云いひし人

2013-11-16 08:00:25 | 編集手帳
11月8日 読売新聞編集手帳

指示は「くだす」よりも「仰ぐ」ほうが気楽なのは誰でも知っている。
作者不詳の古い歌にある。
〈笛吹かず太鼓たたかず獅子舞の後足あとあしになる胸の安さよ〉

それでも誰かが笛を吹き、
太鼓をたたかねば組織は動かない。
人並み外れて能力が高い人のつらいところである。
多くの人命を預かる海運の世界には、
「船長は胃潰瘍になって一人前」
という言い回しがあると聞く。
ましてや宇宙での仕事となれば、
神経のやすまる暇はあるまい。

国際宇宙ステーションで日本人初の船長となる若田光一さん(50)がきのう午後、
宇宙に旅立った。

約半年間の滞在中に超小型衛星の発射実験などをこなし、
最後の2か月ほどは船長として6人のチームを率いるという。
「日本人の和の心を大切にしたい」と語っている。
どうか平穏で、
実り多き旅になりますように。

皇后陛下の詠まれたお歌がある。
〈夏草の茂れる星に還かへり来てまづその草の香かを云いひし人〉。
4年前、
若田さんは宇宙から帰還して語った。
「ハッチが開くと、草の香りがした」
と。
船長の任務を終えて地球に帰ってくるのは来年の、
木々の若葉が匂う頃になる。

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