愛を信じたら、本物の光が見える。
ギレルモ・デル・トロ監督、今回は製作者として、この作品に関わっている。スペイン国内でゴヤ賞の7部門を獲得した他、数々の賞に輝いたこの作品ということと、休日というのも重なって大勢のお客さんだった。そういえば、「パンズ・ラビリンス」も衝撃的な作品だったよね。ファンタジーというものの、登場するキャラクターや人物も不気味なものがあって、結末も哀しいものだった。映像美とスペインの歴史的背景も取り入れながら、重厚な作品だった。
いきなりネタバレになるが、今回のこの作品の結末も哀しいものだった。ホラー映画ではあるが、軸にあるものは、母と子の物語。主人公母ラウラの息子への愛情の深さを思いしらされるような・・・・。その愛情の深さは物語が進むにつれてラウラを孤独へと導いていくことに・・・。そりゃ愛息シモンが突然いなくなるわけだから、正気がなくなるのは当たり前だ。日増しに息子への愛情は強くなり、夫も引いてしまうほどだ。当然の事だし、母ラウラの気持ちが分からなくはない。徹底的にシモン探しを始めるラウラ。そして驚くべき事実などが、次々と明るみになる。やるせない気持ちや物語の展開の恐ろしさ何かも、観ている私にもヒシヒシと伝わってくる。
あらすじ
海辺に建つ古い孤児院で他の孤児たちと楽しく暮らしていた少女ラウラ。やがて彼女は里親に引き取られ、孤児院を後にする。30年後、医師である夫カルロス(フェルナンド・カヨ)と7歳の息子シモン(ロジェール・プリンセプ)と共に、再びこの地に戻ってきたラウラ(ベレン・ルエダ)。彼女は閉鎖されていた孤児院を買取り、障害を持つ子どもたちのための施設として再建するため、開園準備を進めていた。そんな中、シモンがイマジナリー・フレンドを相手に楽しげに遊ぶようになり、かすかな不安を感じ始める。そして、施設の開園を祝うパーティが催された日、シモンが忽然と姿を消してしまう。警察も加わっての懸命の捜索も実を結ばず、その一方でオカルトめいた言動をエスカレートさせるラウラは次第に周囲から孤立していく。それでも必死にシモンの行方を追う中で、いつしか孤児院に秘められた恐ろしい秘密へと近づいていくラウラだったが…。(allcinemaより)
さらに詳しく・・・・。
広くて古い屋敷の中でたった一人の寂しさから空想上の友だちを作って遊んでいるシモンにラウラは不安を覚えるが。そんなシモンは難病抱えていたいるため、空想の友だちのことを嬉しそうに話す姿に、叱る気にはなれなかった。
そんなある日、開園準備に忙しいラウラを一人の老女が訪ねてくる。ソーシャルワーカーのベニグナ(モンセラート・カルーヤ)と名乗るその女は誰も知らないはずのシモンの病気のことや、シモンが養子であることなど、ぶっしつけに話始める。
ラウラは薄気味悪くなり、彼女を追い払う。だがその夜、屋敷の庭にある物置小屋から老女らしき影が出て行くところを見かけたラウラは恐怖にとらわれる。
一方シモンの空想上の友だちとの遊びはエスカレート状態となり。トマスという名前までつけて絵に描いて見せたり、宝探しごっこをしたり・・・・。
施設が開園して、友だちがやって来ればそんな遊びは止むだろうと思っていたラウラ。次第に不安に駆られる。
それから数日後、施設の入園希望者を集めたパーティの最中、忙しくしているラウラの気を惹こうと騒ぎ出したシモンを思わず叱りつけてしまう!
怒られたことで、すねて何処かへ行ってしまったシモン。ふと気になってシモンを探すが、代わりに現れた奇妙なマスクに覆われた子供。その子供のいたずらで、ラウラはバスルームに閉じ込められてしまう。
ようやく外に出たラウラはシモンを探して、屋敷はもちろんのこと、海辺の洞穴も探すが。神隠しにあったかのようにシモンは忽然と姿を消してしまう。
シモンの名前を呼び続けるラウラだが・・・・。
警察も捜査に乗り出すが、シモンの行方は全く分からないまま、半年が過ぎていた。ラウラとカルロスは相変わらず望みをつないで、捜索を続けていた。
周囲の人々は難病を抱えているシモンはもう死んでいると思っていたが、ラウラはシモンは生きていると信じていた!
静まり返る屋敷の中で聞こえる物音や気配にますます敏感になり、誰かがいると言ってはカルロスを当惑させるようになっていく。
ある日、カルロスの運転で街に出かけたラウラは乳母車を押して歩くあの老女ベニグナを見つける。シモンの行方を知っているに違いない・・・・。声をかけようとした瞬間、目の前でベニグナは事故に遭い、命を落とす。
ベニグナの正体は?
彼女の部屋から1枚の写真と古い8ミリフィルムが発見される。実は彼女はラウラの過ごした孤児院の職員だったことがわかる。
ラウラがいた頃は楽しい日々だったが、ラウラが養女としてもらわれた後、孤児院で悲惨な出来事があったことを初めて知る。
そしてもっと驚くことが!ベニグナには息子がいたのだ。8ミリフィルムを見たラウラは驚愕!若き日のベニグナと息子の姿を見つける。その子供こそ、シモンがいなくなった日にラウラをバスルームに閉じ込めたあの子供だったのだ。そして名前は、シモンが話した“トマス”だったのである。
ここからさらにネタバレを・・・・。
何故?ラウラはこの場所へやって来たのか。それはシモンの生まれた秘密にあった。何とか7歳になるまで育てた息子はベニグナの言うように、ラウラの本当の子供ではなかった。未熟児でしかもすでに死を約束された子供だった。だがラウラはそのことを承知で育てることを決意。そしてどんなことをしてでも、シモンを守り育てようと思った。2000gしかない命は、ラウラに笑いかけた。そんなシモンへの強い愛情を持ったラウラはかって孤児だった自分が育った孤児院での幸せなときを過ごした場所で、シモンに幸せな生涯を送ってほしいと考えたのだ。そして30年ぶりにシモンを連れて移り住んだということ。
しかし運命は思わぬ方向へと進む。まさかこの施設で悲惨な事件が起こっていたなんて・・・・・・。そしてそのことは、屋敷の中に塗りこめられていた。ラウラがその事実を知ったのは、シモンが消えてからだ。皮肉な話である。
30年前に死んだトマスは入園パーティの日、子供たちに紛れてやって来た。そして、シモンはトマスがいなくなった途端、消えてしまった。実は死と隣り合わせという7歳のシモンは、敏感にこの屋敷に住み着いている死者と会話出来るようになっていたようだ。
ラウラはシモンの妄想だと取り合わなかった、しかしシモンがいなくなった今、無人となった屋敷のなかで、ラウラは何とかシモンに近づこうとするのだ。自ら死に至ることを始めるわけだ。息子への思いはラウラに思わぬ方向へと導くことになる・・・・・。シモンに逢いたい!ラウラの切実な思い、そして愛。シモンに会うには恐ろしい代償が待ち受けているのは分かっていても、恐怖よりシモンへの愛のほうが強いのだろう。
ラウラは分かっていた。シモンがすでに亡くなっていることを。でも逢いたい!そのシモンと会う方法を教えたのは霊媒師のアウロラ(ジェラルディン・チャップリン)
ラウラの哀しみ、苦しみを知って、こう語った。「その悲しみが力となって貴方を導き、彼の声を届けてくれるわ。そして見えないものを信じなさい。信じたら必ず見えるわ」と・・・・。
いよいよ彼女はシモンに会いに旅立つ。死者の中からシモンを探し出すために。
30年前、皆で遊んだかくれんぼ、「1、2、3、壁を叩け」と大きな木の幹を叩いたことを思い出し、シモンに会うために再現するラウラ。
日本の遊びと同じ。「だるまさんがころんだ」を思い出す。
とうとうカルロスがくれたクルスを切る!あぁ~~もう戻ることは出来ない。
ようやくシモンはラウラの腕の中に・・・・・。
シモンと再会した!周りには30年前のラウラの友だちがいる。これは現実?それとも夢?
生と死の間で見たものは、これこそ本当の愛なのだろう。ハッピーエンドじゃないけど、ラウラにとってはハッピーエンドなのかもしれないなあ。やっぱり「パンズ・ラビリンス」とどこか被るよね。ラウラのシモンへの愛、凄いよね。母はやっぱり強い!
監督:J・A・バヨナ
製作総指揮:ギレルモ・デル・トロ
上映時間 | 108分 |
製作国 | スペイン/メキシコ |
公開情報 | 劇場公開(シネカノン) |
初公開年月 | 2008/12/20 |
ジャンル | ホラー/ドラマ/ミステリー |
映画インタビュー「永遠のこどもたち」 バヨナ監督に聞くこちらをご覧下さい。
http://www.theorphanagemovie.com/ (英語)
オフィシャル・サイト
http://www.elorfanato-lapelicula.com/ (スペイン語)
オフィシャル・サイト
http://www.cinemacafe.net/official/eien-kodomo/
※1月12日、京都シネマにて鑑賞
トラックバックありがとうございました。(*^-^*
30年前の友達と再会したラウラは子供の頃の自分に戻る事が出来て、
ラウラの心は満たされたのかもしれないですね。
ラウラも含めて“永遠のこどもたち”のように映りました。
この作品を観てヒューマンホラーのテイストが
中田秀夫監督の映画に似ているように感じていました。
J.A.バヨナ監督は中田秀夫監督の『仄暗い水の底から』がお好きだったのですね。
と、言ってもぷー太郎のままですが…
不景気なのかどうか…
希望する職種の面接を受けるも落ち続ける…
私に非があるのかどうか…
そんな時に気分転換へと映画館に足を運びたいところですが、なかなか。
やはり、足を運べない私にとっては、ここは、
とてつもなく居心地の良い映画館であります。
これからもよろしくお願いいたします。
都合がつかず、なかなか観に行けないんですが、、、悲
デル・トロ監督の作風が好きなので何とか劇場に足を運びたいと思ってます!
怖かった・・。
これほど怖いとは。。。宣伝の仕方も上手かったですね。乗せられましたモン。
で、シモンは、死と隣り合わせにいたので、あっちの世界のことを敏感に感じ取ることができたと言うことですね。
なるほど。
別に、養子でなくても病気であると言うことが大事な要因かななどとも思ったのですが、そこんとこはどうなんでしょうね。
とにもかくにもラウラの想いがぐぐっと迫ってきました。
近年にない怖さを味わいました。
それと同時に感動で涙も溢れ、母の深い愛に心が震えました。
私はラストをハッピーエンドと感じましたね。