その瞬間、一つめの誤算
原題:BEFORE THE DEVIL KNOWS YOU’RE DEAD
12月15日、京都シネマにて鑑賞。原題も長いし、邦題も長いです。「カポーティ」のフィリップ・シーモア・ホフマン、そしてイーサン・ホークが巨匠シドニー・ルメット監督と組んだ作品です。
凄いです。最後の最後まで・・・・。ここまで親子関係の歪みがあるのか?多分息子の企てがなければ、こんなことにはならなかったのだろうけど。そしてそれを企てた息子自身もこんな結末を迎えるとはまさか?!思わなかったに違いない。しかし親子の確執はこの事件がきっかけで、さらに追い討ちをかける顛末に。わあ~~!何処までも落ちていくようなそんな気分になってしまう。
原題を直訳すると、“死んだのが悪魔に知られる前に”だそうで・・・・。原題のほうが複雑な感じですね。今回は邦題の方が分かりやすいかも。
さてさて冒頭から、凄いです。フィリップ・シーモア・ホフマン演じるアンディとマリサ・トメイ演じる妻ジーナのベッドシーンなんです。かなりリアルなもんで・・・・ちょっとドキッって感じ。だけどあまり綺麗なシーンではありません。彼って小太りですし、そんなにいい男じゃないものね。ビュジュアル的には良くないよ!
STORY
ニューヨーク郊外の小さな宝石店に男が押し入った。
銃を突きつけ店員の女性を脅かしながら、次々と宝石を袋に詰めていく。
隙を見つけた店員が男に発砲。男は撃ち返す。倒れる二人ーーー。
店の外で待っていた共犯者は、強盗が失敗に終わったことを知り、あわてて車を走らせながら叫んだ。
「なんてバカなんだ!」
強盗3日前。ハンク(イーサン・ホーク)は週末を娘と過ごしていた。
離婚した妻(エイミー・ライアン)からは養育費の支払いが遅れているのを責められる。
そんな彼に、兄アンディが強盗計画を持ちかけた。
悩んだ末ようやく決心したハンクに、アンディは狙っている店を告げる。
それは両親が経営する宝石店だったーーーー。
怖気づくハンクにアンディは「お互いに金が要る。そう大した犯罪じゃない」と前金をちらつかせ説得する。
強盗4日前、会計士のアンディは美しい妻ジーナとマッハッタンのアパートメントに住み、一見だれもがうらやむような暮らしを送っていた。だが実際は、薬に溺れ、会社の金を横領していたのだった。
そんな時、国税局の調査が入ること知り、帳簿をごまかしたことが明るみにでることを恐れ焦る。
アンディは呟く。
「俺の人生はパーツがバラバラでつながらない。出てくる結果が合計にならないんだ」とーーーー。
アンディとハンクは強盗の失敗に終わっただけでなく、撃たれたのが自分たちの母親(ローズマリー・ハリス)だと知って愕然とする。
父親チャールズ(アルバート・フィニー)は愛する妻が被害にあったことに大きなショックを受ける。
一命は取りとめたものの、重体の妻を見たチャールズは悲しみに打ちひしがれる。
ハンクは兄から一人で強盗に入れと指示されるが、勇気がないため、ボビー( ブライアン・F・オバーン)に頼む。
銃を使わないという約束で、強盗を依頼したにも関わらず、ボビーは銃を発砲してしまう。
思わぬ方向へと展開したことにハンクは動揺兄アンディに連絡を入れるも・・・・。
その後、ボビーの家族から恐喝されることに。一方アンディも会社から帳簿の穴を問われる。二人は急速に追い詰められていく・・・・。
一方父親チャールズの気持ちは癒えることはなかった。妻の葬儀の日、息子アンディにきつくあたったことを詫びる。
父親は若い頃、長男アンディには厳しく、次男ハンクに対しては溺愛していた。いつまでも、「赤ん坊」のように甘やかし、兄のことは冷めた目で見ているのである。そんなアンディは自分が嫌われていると思うのは当たり前だ。表面的には立派な人間になって欲しいから厳しく育てたなんて、言っているがどうも建て前にすぎないように思える。多分父親の好き嫌いという分け隔て的な養育だった?のではないかと感じた。
アンディ曰く、「父が死んだらよかった」というのも何か分かる。愛情を注がれていない、自分を受け入れてもらえないという息子の心情がヒシヒシと表れているように思った。
親子の確執はそれだけで済まず、この事件は思わぬ方向へと進んでいく。
死体の男が、遠く離れたブルックリン出身だということにチャールズは不審を抱く。わざわざマッハンタンを通り越して郊外の町ウェストチェスターの小さな宝石店を襲ったのは何故?どこでこの店の存在を知ったのか?
調べ始めるチャールズ。
ベテラン宝石商のチャールズはカンをいかして盗品を扱う店の主人を訪ねる。何でもマッハンタンW47丁目はダイヤモンドストリートというくらい、アメリカ中のダイヤモンドがいかがわしい店が軒べたところで取引きされているらしい。主人に問い詰めるチャールズは驚くべき人物の名を記した名刺を見る。
事件の全容を知ることになるチャールズ。彼はどんな思いだったのか?
ハンクがボビーの妻の弟から恐喝されていることを何とか助けるため、現金を用意することに。その手口は凄まじいこと。アンディは、薬のディーラーまで襲い、強盗することになる。追い詰められた様子が緊迫して感じる。ハンクは言われるままに従うだけ・・・・・。こうしてボビーの義理の弟と交渉するのだが、銃撃され、重傷を負う。
間一髪助かったアンディ、だがその直後想像を絶するような展開がここでまた起こるのである。
続きはぜひシアターでご覧下さい。
アンディの妻ジーナは何とハンクと出来ていました。そしてアンディの会社での不正が発覚すると。いやあ~酷いもんです。
監督:シドニー・ルメット
何と84歳にしてこの作品、凄いですよね。
※監督は フィリップ・シーモア・ホフマンを「現在のアメリカで最高の俳優の一人」と絶賛している。そんな彼に事件の首謀者である兄を演じさせ、今や俳優・監督として活躍するイーサン・ホークに気弱な弟役をあてたところに配役の妙がある。