ここのところ、スティーヴィー・ワンダーのCDを棚から取り出すことが多いです。
改めてじっくりスティーヴィーの曲を聴いてみると、「なんて温かみに溢れているんだろう」と思わずにはいられません。
そしてその温かみは、彼の内面から自然ににじみ出てくる「愛」なのではないか、という気がします。
まさに、スティーヴィーによる「ソウル・ミュージック」です。
スティーヴィーと言えば、ぼくにとっては、あの「ウィ・アー・ザ・ワールド」の中での歌声が強く印象に残っています。とくに、ブルース・スプリングスティーンとの掛け合いは名唱だと思いました。聴いていると心地よい快感と感動が背筋を走りぬけてゆくんです。
ぼくがスティーヴィーの音楽に最初に触れたのは、ベック・ボガート&アピスのレコードで聴いた「迷信」だったはずです。
でもその時は、それ以上聴いてみようという気にはなれませんでした。当時のぼくは、ほぼロック一辺倒だったし、いわゆる「ソウル・ミュージック」の持つ濃い黒っぽさにはまだ馴染めなかったんだと思います。
でも、「ウィ・アー・ザ・ワールド」がきっかけとなって、ぼくはスティーヴィーにより親しみを覚えることになるのでした。
ステージでのレパートリーにスティーヴィーの作品を加えるヴォーカリストも多いようで、オリジナルを聴くより先に、渡された譜面によってスティーヴィーの曲を知ることもしばしばでした。
それは、裏を返すと、スティーヴィーの曲が広く愛されているということの証明にもなるのではないでしょうか。そういうところからも、ぼくはスティーヴィーの「偉大さ」を感じ取るようになったんです。
非常にグルーヴィーなリズム、彼自身が歌と化したようなソウルフルな歌声がとても気持ち良い。
ボーカルのほか、ピアノ、ハーモニカ、ドラムなどをこなすマルチ・プレーヤーとしても知られていますね。
メロディー・メイカーとして超一流なのも多くの人が認めているところでしょう。絶妙な転調の使用、独特の感覚に基づくコード・ワークやヴォイシングには、真似のできない素晴らしいセンスが感じられます。
とりわけ一番ぼくが心地よく感じるのは、スティーヴィーの曲の持つカラフルな感覚です。メロディーを聴いていると、次々にいろんな「色を体感」できる気がするのです。
「サンシャイン」
「マイ・シェリー・アモール」
「オーヴァージョイド」
「心の愛」
「愛するデューク」・・・
お気に入りの曲を書き始めると、これもちょっとキリがありません。
スティーヴィーは、先頃、愛娘を伴って来日しました。
その愛娘が誕生した時、スティーヴィーは「イズント・シー・ラヴリー」という曲を書いています。日本語タイトルは「可愛いアイシャ」。そのアイシャ・ワンダー、現在はシンガーとして活動しており、父のスティーヴィーとステージを共にすることもままあるそうです。
ワンダー親子には、これからもさらに「愛のこもった作品」を生み出して欲しいですね。