ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

オール・バイ・マイセルフ (All By Myself)

2006年01月27日 | 名曲


 映画「ブリジット・ジョーンズの日記」(2001年)の冒頭で、主人公のブリジット・ジョーンズ(レネー・ゼルウィガー)が歌手になりきったように陶酔して、夜中にひとりで曲に合わせて絶唱するシーンがありましたね。その曲を歌っているのはジェイミー・オニール、曲のタイトルは「オール・バイ・マイセルフ」です。
 失恋の後悔や、ひとりぼっちになってしまった自分の心の葛藤を描いた曲ですが、それが、30歳を過ぎても彼氏もいない自分の身の上を嘆いているブリジット・ジョーンズの心境にピッタリなんですね。


 「オール・バイ・マイセルフ」は、もともとはエリック・カルメンが1975年に発表したバラードです。この曲は、「20世紀に残したい歌・ベスト100」にも選ばれたことがあるほどの名曲として知られています。
 ジェイミー・オニールのほか、セリーヌ・ディオン、シェリル・クロウ、ジュエル、シャーリー・バッシー、カーメン・マクレエ、日本では中村あゆみなど、多くのアーティストに取り上げられている曲です。
 最近では、1995年の映画「誘う女」(ニコール・キッドマン主演)や、自動車メーカーのCM(ダイハツCopen)に使われていましたね。





 「オール・バイ・マイセルフ」は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番第2楽章をモチーフにしています。エリックはこのほかにも、「Never Gonna Fall In Love Again(恋にノー・タッチ)」でラフマニノフ(交響曲第2番ホ短調第3楽章)を、「Love Is All That Matters」ではチャイコフスキー(交響曲第5番第2楽章)をモチーフにして曲を書いています。
 エリックは高校の時に、テレビで見たビートルズやザ・フーに衝撃を受けてロック・ミュージックにどっぷり浸ることになるのですが、それまでは少年時代からずっとクラシック・ピアノを専門的に学んでいて、将来を嘱望されてもいたようです。そのクラシックの素養が、エリックの作る音楽にさまざまに影響を及ぼしているのでしょう。


 重厚な雰囲気に包まれた、ほの暗くてとても美しい曲です。
 イントロの静かなピアノの上に、抑えたヴォーカルがそっと入ってきます。
 サビでの歌声はとても伸びやか。エリックの声には必要以上の悲愴感はありません。メロディアスで、どこか寂しげなスライド・ギターのソロ。中間部のピアノ・ソロがとてもクラシカルできれいです。



エリック・カルメン『サンライズ』


 自分のことしか見えず、気がついた時には大切なものを失くしていたということ、誰しも経験があるのではないでしょうか。(もちろん、ぼくにも何度もあります)この曲には、それに気づいた時の苦くてせつない想いがこもっているのですね。だからこそ、ぼくはこの曲に共感を覚えるのでしょうね。


 エリック・カルメンは、1970年代前半には「ラズベリーズ」というグループに在籍して多くのヒット曲を残したのち、1975年にソロとなります。「オール・バイ・マイセルフ」は、エリックのソロ・デビュー作でもあります。
 一時はニュースの途絶えていたエリックですが、1999年には「リンゴ・スター・オール・スターズ」の全米ツアーに参加。2004年11月には31年ぶりに再結成された「ラズベリーズ」に参加するなど、精力的に活動しているようです。





[歌 詞]
[大 意]
若かった頃 ぼくは誰のことも必要としてはいなかった
恋をするなんて ほんの遊びにすぎなかった
日々は過ぎ ひとり寂しくすべての友のことを想うが
電話をしても 誰もこたえてくれない

ぼくはひとり 
そうはなりたくない 
ひとりで生きていくのはつらい

確信を持てず 時には不安になる
愛は遠くに去り おぼろになりながら
心の救いとして残っている

 
 
 
◆オール・バイ・マイセルフ/All By Myself
  ■歌・演奏
    エリック・カルメン/Eric Carmen
  ■シングル・リリース
    1975年12月1日
  ■収録アルバム
    サンライズ(原題『Eric Carmen』 1975年11月発表)   
  ■作詞・作曲
    エリック・カルメン/Eric Carmen
  ■プロデュース
    ジミー・レナー/Jimmy Lenner
  ■チャート最高位
    1976年週間チャート アメリカ(ビルボード)2位、イギリス12位
    1976年年間チャート アメリカ(ビルボード)40位


コメント (6)
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