ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

宇宙の騎士/TOTO (TOTO)

2007年08月07日 | 名盤

 
 TOTOはボズ・スキャッグスの「シルク・ディグリーズ」レコーディングに集まったジェフ・ポーカロ、デヴィッド・ペイチ、デヴィッド・ハンゲイトを中心として、1978年にロサンゼルスで結成されました。
 超A級と言ってもいいほどの、西海岸の腕利きスタジオ・ミュージシャンが集まったバンドであるというほかに、メンバー同士がハイスクール時代からつながりがあったり、ペイチの父とポーカロの父がいずれもミュージシャンで親友だという関係があったりして、お互いの強い結びつきが感じられるバンドでした。
 
 
     
 
 
 TOTOのデビュー・シングル「ホールド・ザ・ライン」がラジオでオンエアされるや、ぼくはたちまち気に入って、すぐにシングル・レコードを買いに行きました。(LPがすぐ買えるほど小遣いは潤沢ではありませんでした)
 「プロフェショナル集団」の呼び名がぴったりくるTOTOはとてもグレードの高いグループで、曲作り、アレンジ、テクニックとも申し分のないものでした。
 ロックやポップスにソウル、フュージョン、プログレッシヴ・ロックなどのエッセンスを抽入した、スケールの大きなサウンドが作られていたんです。
 当時のロック・シーンは、TOTOのような近未来的な雰囲気とスペーシーな感覚を持ったバンドが、次第にいくつも頭角を現し始めたころだったと記憶しています。
 
 
 全員アメリカ人なのに、アメリカン・ロック特有の土臭さを感じさせないサウンドにまず耳を奪われます。カンサスとかボストンに通じるものがあるでしょうか。デヴィッド・ペイチによると、「子供の頃からイギリスのプログレッシヴ・ロックに影響を受け、キング・クリムゾンやピンク・フロイドなどを好んで聴いていたからだ」ということだそうです。
 プログレ風でもあり、AOR的な雰囲気もあり、また土着のアメリカ音楽の要素がほぼ表面に出てこないTOTOのサウンドは、ボーダーレスで現代的なロックだと言えるでしょう。


     
     スティーヴ・ルカサー


 アルバム1曲目のファンファーレ風の劇的なインストゥルメンタル、「子供の凱歌」で度肝を抜かれます。デビュー・アルバムの1曲目にインストゥルメンタルを持ってくるということは、TOTOの面々がどれほど演奏技術、音楽性に自信を持っていたかの証明になるのではないでしょうか。
 続く「愛する君に」はボビー・キンボールのヴォーカルが冴え渡る明るいナンバーです。「ジョージー・ポーギー」ではスティーヴ・ルカサーがリード・ヴォーカルを取っています。ソウルフルで、渋く柔らかくまとめられています。
 「ガール・グッドバイ」はTOTO流ハード・ロックの極めつけ。ルカサーのギターが縦横無尽に活躍しています。ジェフ・ポーカロのドラムがこれまた切れ味鋭く、ハード・ドライヴィンなグルーヴを叩き出しています。
 9曲目、デビュー・シングル「ホールド・ザ・ライン」のギター・リフとテクニカルなソロは、ロック好きのツボを突くこと必至です。分厚いコーラスもきれいです。


     


 強力なグルーヴを出しているジェフ・ポーカロのドラムス、構成をしっかり把握してメリハリの利いたプレイを繰り広げるスティーヴ・ルカサーのギター、サウンドの味付けやカラーリングを担当するキーボード群などがTOTOサウンドの要でしょう。
 腕利きぞろいなのに決してテクニックには溺れず、歌心あふれるプレイを繰り広げているあたり、彼らが数々のスタジオ・ワークで自らの音楽性や個性を育んできたことが窺われます。
 全体的に、耳ざわりのよいサウンドと親しみやすいメロディーを持つポップな曲が多いですね。音作りが実に緻密で、高度で安定したテクニックを駆使したハイ・クォリティの音楽を繰り広げていて、今聴いても、とても新人のデビュー作とは思えない快作だと思います。


     
     ジェフ・ポーカロ


 そういえば8月5日はジェフ・ポーカロが急逝してから15年目に当たるんですね。月日の経つのは早いものです・・・。



◆宇宙の騎士~TOTO/TOTO
  ■リリース
    1978年10月15日
  ■歌・演奏
    TOTO
  ■プロデュース
    TOTO
  ■収録曲
    A① 子供の凱歌/Child's Anthem (D. Paich)
     ② 愛する君に/I'll Supply the Love (D. Paich) ☆
     ③ ジョージー・ポーギー/Georgy Porgy (D. Paich) ☆
     ④ マヌエラ・ラン/Manuela Run (D. Paich)
     ⑤ ユー・アー・ザ・フラワー/You Are The Flower (B. Kimball)
    B⑥ ガール・グッドバイ/Girl Goodbye (D. Paich)
     ⑦ ふりだしの恋/Takin' It Back (S. Porcaro)
     ⑧ ロックメイカー/Rockmaker (D. Paich)
     ⑨ ホールド・ザ・ライン/Hold The Line (D. Paich) ☆
     ⑩ アンジェラ/Angela (D. Paich)
     ※ ☆=アメリカでのシングル・カット
  ■録音メンバー
   【TOTO】
    ボビー・キンボール/Bobby Kimball (vocal)
    スティーヴ・ルカサー/Steve Lukather (guitar, vocal)
    デヴィッド・ハンゲイト/David Hungate (bass)
    デヴィッド・ペイチ/David Paich (keyboard, vocal)
    スティーヴ・ポーカロ/Steve Porcaro (keyboard, vocal)
    ジェフ・ポーカロ/Jeff Porcaro (drums, percussion)
   【guests】
    シェリル・リン/Cheryl Lynn (vocal ③)
    ロジャー・リン/Roger Linn (synthesizer)
    レニー・カストロ/Lenny Castro (percussion)
    ジム・ホーン/Jim Horn (sax)
    チャック・フィンドリー/Chuck Findley (horn)
  ■チャート最高位
    1978年週間チャート アメリカ(ビルボード)9位、イギリス37位、日本39位
    1979年年間チャート アメリカ(ビルボード)19位



コメント (12)
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