ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

小島良喜 「Kojima」

2008年11月04日 | 名盤

 
 先月だったか、ジェイさんのブログで「小島良喜ソロ・アルバム・リリース」のニュースを知りました。発売予定日は10月22日。もちろん速攻でamazonに予約注文、今日か明日かとその日を待っておりました。
 小島さんは日本屈指のピアニスト、キーボーディストです。ブルーズやファンクなどの黒人音楽に根ざしたソウルフルなプレイが売り物です。米国滞在時は地元ミュージシャンからも厚い信頼を受けていたと言いますし、帰国後は浜田省吾さんや井上陽水さんらから重用されるプレーヤーとして、今や八面六臂の活躍ぶりです。


 ぼくが小島さんを知ったのは、もう何年前になるかなあ、ジャズ・ピアニストの佐山雅弘さんと組んだ「フォア・ハンズ」というユニットを聴きに行ったことに始まります。理知的ながら遊び心に富んだ佐山さんのピアノに一歩もひけを取らず、人間味が感じられるような温かさと激しさが感じられたような小島さんのピアノはかなり印象に残るものでした。


 その後、2003年だったでしょうか、あるジャズ雑誌に「コジカナツル」デビューの記事が載っておりました。メンバーにぼくの大好きなベーシスト、金澤英明が名を連ねていたので興味を持って記事を読んでいたら、ピアノがあの小島良喜だという。主にロック、ブルーズのフィールドで活躍していた小島さんは、ピアノ・トリオを組もう、という金澤さんの提案に「ぼくはジャズ・ピアニストじゃないから」と一度は断ったといいます。でも金澤さんは小島さんの幅広いユニークな音楽性に目をつけていたのでしょうね。結局ドラムスの鶴谷さんを加えてバンドはスタートすることになります。


 このトリオに興味を持ったぼくは、早速「コジカナツル」のデビュー・アルバムを手に入れました。音楽に魂を奪われたヤンチャなオトナ達が夜更けに集まってワイワイやっている、そんな雰囲気のする作品でしたね。ピアノ・トリオというフォーマットとはいえ、ジャズのそれを踏襲しながらも、自分の感性をまずあふれさせる小島さんのピアノはとてもソウルフルでした。ピアノ・トリオはピアノ・トリオであっても、ジャズの範疇に収まらない、一種型破りな彼らの存在は日本の音楽シーンの中でも稀有な存在だと思います。


 その小島さんがソロ・アルバムを出すのです。楽しみでないわけがありません。
 脇を固めるのが日本一のグルーヴ・マスターと言われる山木秀夫(Drs)、盟友金澤英明(b)、日本最高のロック・ギタリストChar(g)、ジャズ界の重鎮である峰厚介(ts)、そのほかTOKU(flh)、フライド・プライドの名ヴォーカルであるSHIHO(vo)、沖縄在住のデヴィッド・ラルストン(vo,g)らがゲストとして名を連ねています。





 1曲目の「片想い」は浜田省吾の名曲。これを小島さんは小粋で泣けるシックな4ビート・ジャズにアレンジしています。
 ハマショーの作品というと、「きみと歩いた道」にも取り組んでいますが、これはSHIHO嬢をヴォーカルに据えてエモーショナルに聴かせてくれます。
 「"A"Cat called"C"」は都会の片隅で鳴っているような、少々やさぐれた感じの4ビートです。ヴィブラフォンの音色が似合いそう。ブリッジで入るCharのギターがこれまたジミヘンも真っ青になるくらいの出来栄えです。
 「Truth」は「コジカナツル LIVE!!」にも収録されていた小島さん渾身の名バラード。エレピとオルガンの音色がとても温かいのです。
 「BASSAB」は盟友金澤さんのベースを大きくフィーチュアーしたアーシーなバラード。小島さんはこのアルバムのうち数曲でシンセサイザー・ベースを使ってますが、それ以外のベース・パートは安心して金澤さんに預け切ってますね。相当信頼関係が厚いのだと思います。


 小島さんの多面体な音楽性がよく分かるアルバムだと思います。そうはいってもテクニックを全面に出してピアノを弾きまくるという場面はあまりなく、彼の頭の中に鳴っているサウンドを具現化してみた、というほうが当たっているのではないでしょうか。つまりプレーヤーとしてより、サウンド・クリエーターとしての小島良喜を出しているのでしょうね。
 プレイそのものでは、ピアノはよく歌っているし、ダイナミクスを巧く生かして音楽を生きたものにしているし。オルガンを弾いてもツボをほんとによく心得ているというか、ここぞというところの背後でいつも温かく、優しく鳴っているんですね。さすがは小島さん、といったところです。
 しかし以前は「ジャズはよく分からない」みたいな発言をしていた小島さんが、比較的4ビートを多く取り入れてアルバムを作っているのも面白いと思います。そのへん、金澤さんの影響が大きかったりしてね。





 ぼくとしては、1曲は「コジカナツル3」に入っていた「マイ・バック・ペイジズ」のようなゴスペル・ロックをガンガンに弾いて欲しかったんですが、それはまた別の機会に期待することにしましょう。このアルバムに収められたもの以外に小島さんの引き出しはまだまだ数多くありそうです。






◆Kojima
  ■演奏・サウンドプロデュース
    小島良喜 (piano、keyboards)
  ■アルバム・リリース
    2008年10月22日
  ■録音エンジニア
    青野光政
  ■録音
    青葉台スタジオ、スタジオ・サウンド・ダリ、ワーナー・ミュージック・レコーディング・スタジオ
  ■収録曲
    ① KATAOMOI (小島良喜)
    ② "A" Cat called "C" (小島良喜)
    ③ Are You Happy (小島良喜)
    ④ "Co""J" (小島良喜)
    ⑤ Kimi To Aruita Michi (浜田省吾)
    ⑥ DRAGON FLY (小島良喜)
    ⑦ TRUTH (小島良喜)
    ⑧ BASSAB (小島良喜)
    ⑨ AWAWA (小島良喜)
    ⑩ BANG (小島良喜)
    ⑪ Stay out of my way (小島良喜)
    ⑫ NAP (小島良喜)
  ■録音メンバー
    小島良喜 (acoustic-piano①②③⑤⑥⑧、electric-piano⑦、organ⑦、keyboards④⑨⑪⑫、synthesizer②⑤⑧⑩⑪、synthesizer-bass②⑪)
    金澤英明 (acoustic-bass①②③⑤⑥⑦⑧⑨)
    山木秀夫 (drums①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑪)
    Char (electric-guitar②③⑤)
    峰厚介 (tenor-sax②③⑥)
    TOKU (flugel-horn②⑥⑨)
    Shiho (vocal⑤)
    David Ralston (vocal⑪、guitar⑪)
  ■レーベル
    ZAZZY

コメント (6)
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