昨日6月24日は、ジェフ・ベックの63回目の誕生日だったそうですね。いつ見ても若々しいジェフ、とても63歳になんて見えません。
ジェフに限らず、現役ミュージシャンって、みんな実年齢より若く見えます。これもひとえに、音楽というクリエイティヴな職に携わっているからでしょう。
ジェフも、彼のギターも、年齢とともにまだまだ進化を続けているようです。だからこそいつまでも若くいられるんじゃないでしょうか。
一時は「アルバムを2枚出したらバンドを解散させる」などと揶揄されたジェフが辿り着いたのが、「ギター・インストゥルメンタル・ミュージック」です。
それは、ジェフが「自分の感性をもっとも直接的に表現できる唯一のスタイルがギター・ミュージックである」ということを実感したすえに到達した見解だと思います。つまり、自身がもっとも進みたい道に進むことを決意した、とでも言ったらいいのでしょうか。その形の現れが、「ブロウ・バイ・ブロウ」でした。
「ブロウ・バイ・ブロウ」はジャズからの影響を強く感じさせるもので、リラックスして自由に弾くことを前提としたものでした。それに続く「ワイアード」は、「ブロウ・バイ・ブロウ」の流れを汲みながらも、よりハードにプレイしているようです。前作に比べ、よりフュージョン色を強めた、非常にテンションの高いサウンドが聴かれます。
この頃のジェフは、マハヴィシュヌ・オーケストラとツアーに出たり、スタンリー・クラーク(bass)のソロ・アルバム「ジャーニー・トゥ・ラヴ」に参加したりと、積極的にエレクトリック・ジャズに接近・傾倒して、多くのものを吸収していた時期だと言っていいでしょう。
前作「ブロウ・バイ・ブロウ」で成功したジェフは、さらにその路線を深く追求してゆこうとします。そのために集めたミュージシャンはジャズ・ロック界で活躍する腕利きばかり。ジェフが気持ちよくギターを弾くことができ、安心してバックを任せられる面々が集まっています。
1曲目の「レッド・ブーツ」からしてフュージョンとハードロックを融合させたような凄まじい演奏が展開されています。ギターももちろん素晴らしいのですが、シンセサイザーやドラムスとのせめぎ合いはまさに「バトル」です。同じようなハード・ドライヴィンな曲に「ヘッド・フォー・バックステージ・パス」「蒼き風」「ソフィー」などがあります。
ファンキーなのは「カム・ダンシング」と「プレイ・ウィズ・ミー」。グルーヴィーなリズムに乗せて、これまた黒っぽいウィルバー・バスコムのベースと、ジェフのギターが歯切れよく曲を引っ張ってゆきます。
「グッド・バイ・ポーク・パイ・ハット」は、ジャズ界の偉大なベーシスト、チャールス・ミンガスの作です。ジェフはこの曲を「哀しみの恋人たち」のようなスロー・バラードに仕立てています。
「ラヴ・イズ・グリーン」はアコースティックなナンバー。ピアノに加え、ジェフがアコースティック、エレクトリック双方のギターをオーヴァー・ダヴィングしています。このロマンティックな曲でアルバムに幕を下ろします。
目立つのが、ヤン・ハマーのシンセサイザーの存在ですね。時にはジェフのギターと対等に張り合ったり、存在感を主張したりと、白熱したインタープレイを繰り広げています。このふたりの共演は、新鮮なうえに適度の緊張感があり、良い意味でのライヴァル同士がセッションをした、という印象が強いです。
また、全8曲中4曲を提供したナラダ・マイケル・ウォルデンの存在も特筆されるべきでしよう。現在では偉大なプロデューサーとして活躍しているナラダ・マイケルですが、このアルバムでは作曲とドラムスで大きく貢献しています。
「ワイアード」は、スリリングなギター・アルバムです。と同時に、優れたジャズ・ロック(あるいはフュージョン)の作品でもあり、前作に勝るとも劣らないギター・インストゥルメンタル・アルバムの最高峰のひとつ、と言ってもいいでしょう。
まさに、聴き手を「金縛りにあわせる(wired)」作品だと思います。
◆ワイアード/Wired
■演奏
ジェフ・ベック/Jeff Beck
■リリース
1976年5月
■プロデュース
ジョージ・マーティン/George Martin①~④, ⑥~⑧
ヤン・ハマー/Jan Hammer⑤
■収録曲
[side A]
① レッド・ブーツ/Led Boots (Max Middleton)
② カム・ダンシング/Come Dancing (Narada Michael Walden)
③ グッドバイ・ポーク・パイ・ハット/Goodbye Pork Pie Hat (Charles Mingus)
④ ヘッド・フォー・バックステージ・パス/Head for Backstage Pass (Wilbur Bascomb, Andy Clark)
[side B]
⑤ 蒼き風/Blue Wind (Jan Hammer)
⑥ ソフィー/Sophie (Narada Michael Walden)
⑦ プレイ・ウィズ・ミー/Play with Me (Narada Michael Walden)
⑧ ラヴ・イズ・グリーン/Love Is Green (Narada Michael Walden)
■録音メンバー
ジェフ・ベック/Jeff Beck (guitars)
マックス・ミドルトン/Max Middleton (electric-piano, clavinet)
ヤン・ハマー/Jan Hammer (synthesizer, drums⑤)
ウィルバー・バスコム/Wilbur Bascomb (bass)
ナラダ・マイケル・ウォルデン/Narada Michael Walden(drums①②⑥⑦, piano⑧)
リチャード・ベイリー/Richard Bailey (drums③④)
エド・グリーン/Ed Greene (drums②)
■チャート最高位
1976年週間アルバム・チャート アメリカ(ビルボード)16位、イギリス38位、日本(オリコン)7位
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でもこの路線も大好きですし、特にこのアルバムは好きです。私は20歳の時(ええ、ついこの間ですが)武道館のコンサートに行きましたが、初来日の時よりもこの武道館の方が強く印象に残っていて、今でもあの時の鬼気迫る姿を思い出します。
全然老いないベックさん、これからも好き勝手にガンガンギター弾いて欲しいです。永遠の「好きな人」です。
でもお酒をたしなむようになってから、ほろ酔いで聞くとこれがハマるんですよ。特に彼のインストは。このままずっと聞いていたいと思わせる、美しいギターの音色です。
トラバさせていただきます。うまくできるといいのですが…。
ついこの間(笑)、武道館のジェフのライヴに行ったんですか~、文句なく羨ましいです(^^)。
ジェフって、体型も変わってないし、今でも昔通りの髪型だし、あんまり「年取った」感じがしないんですよね。まだまだ何かやってくれそうな人ですね。
>ほろ酔いで聞くとこれがハマる~
そう言われてみると、ジェフのインストは結構夜とお酒が似合うかもしれませんね。日本酒やビールよりは、強めのカクテルとか、ウィスキーのロックとかが合うかな。
ギターの音色はオンデンさんの仰る通りだと思います。美しいですよね~、聴いてて飽きない(^^)。
こちらからもTBさせて頂きました。
告白します。
ジェフ・ベックって聞いたことがない~!
いや、聞いたかも知れないですが、私は10代なのでよくわかっていないのかも知れません。 ホホホ
どっちかというと、派手派手ギタリストに縁のある私です。
ナヌー! あれだけ多岐にわたっていろいろ聴いてるNobさんが・・・。それはちょっと意外でした~
>私は10代なのでよくわかっていないのかも~
Nobさん、正気に返ってくださいぃぃぃ。
でも「ボ○」もそこまでくると逆にカワイラシイですね~ヨシヨシ♡
>派手派手ギタリスト
インギー様と王様ですね!(^^)
ジェフも、派手さでは王様に勝てないです。
インギー様の「俺様」ぶりにも勝てないだろうなぁ~
超ビックリしました(@_@)
エリッククラプトンとジミーペイジ(レッドツェッペリン)と並ぶ世界的ギタリストですヨ(笑) みんなヤードバーズにいたらしいッス(@_@)
だからインギー様と王様がいればいいのです~(ホント?)
でももしかしたら聴いてないようで聴いたことがあるかも。
そうそう、「三大ギタリスト」は全員ヤードバーズのメンバーだったんですよね。ジミー・ペイジは最初ベーシストとしてヤードバーズに入ったんですよね。