【Live Information】
「今」という時代をさまざまな領域で牽引したり発信する人。
「リーダー」とか「アイコン」、いまは「インフルエンサー」などとと呼ばれています。
彼ら彼女らは、テレビやラジオばかりではなく、SNSなどネットを使って大きな影響力を得ていますね。
ぼくが中学~高校のころはラジオの深夜放送の全盛期で、番組のパーソナリティがある意味テレビタレント以上の影響力を持っていました。パーソナリティを務めていたのは放送タレントだけでなく、ミュージシャン、それもフォーク系のミュージシャンが多かったですね。イルカ、中島みゆき、吉田拓郎、そして南こうせつ。
どれだけの人たちがリクエスト曲だけでなく、青春の悩みをハガキに綴ったことでしょう。そしてパーソナリティーたちはそれを番組で読み、共感し、時には一緒に怒り、時には親身に相談に乗ってくれた。だからリスナーにとって、ラジオ・パーソナリティーたちはいわば心の兄貴や姉貴、つまり身近な存在だったんじゃないでしょうか。
中学生くらいになると、ギターを弾き始めるやつらもチラホラ出てきます。
ぼくの住んでいた倉敷市というところは。、地方都市の中でも多くの人口を抱えていたところでしたが、それでもフォークギターを(コードだけであっても)ガシャガシャかき鳴らすことができるのは、学年でほんの数人でした。そしてそんな程度の腕前でもみんなから「スゲー!」と言われ、それがうらやましくも、まぶしくもありました。自分より先にオトナの世界に足を踏み入れているようにも見えましたね。
時代は、ちょうどカセットテープ全盛期。
学校に(もちろん隠れて)ラジカセ(ラジオにカセットテープのデッキが付いているもの)を持ってくる同級生なんかもいました。
もちろん音楽を聴きたいんじゃない。規則を破ってワルぶるのがスリルがあって面白かったんでしょう。(でしょう、なんてひとごとみたいに言ってるぼくだって似たようなものでした)
彼が学校に持ち込んだラジカセでよくかけていたのが、「かぐや姫LIVE」。
当時はレコードだけでなく、カセット・テープでも発売されていたんですね。
「神田川」「赤ちょうちん」が大ヒットし、そして「かぐや姫」の南こうせつがラジオ・パーソナリティーとして支持されていたころでした。
いま聴いてみると、ステージと客席の心的距離がとても近く感じられます。
「手の届かない大スターを憧れの目で見つめる」というよりも、「身近なアーティストが」「自分の存在を受け入れてくれそう」という安心感や、彼らの歌への共感でいっぱいなのではないでしょうか。
しゃべりのうまさがまた聴衆の気持ちをオープンにさせるんですね。トーク力は、持って生まれたものもあるでしょうけれど、ラジオで鍛えられた部分もあるかもしれないですね。
身近に感じる、と言えば、演奏を聴いていると、ところどころで「自分もギターを弾いてみよう」と思わせられるんですよね。
「加茂の流れに」の、箏のようなイントロ。
「神田川」のイントロは、シングル・レコードではバイオリンが奏でているのですが、このライブ・アルバムではマンドリンのトレモロ奏法のようにフォーク・ギターで弾いています。これがまた真似したくなるんです。
それから、「あの人の手紙」のストロークとか。
「あの人の手紙」なんか、いまでは驚くようなテンポではないですが、当時はあの速い(と思っていた)テンポで16分音符を刻んでいるのがカッコよくて。でも、至難の技だとも思っていたんです。
このアルバムでギターを弾いているのは、名手・石川鷹彦さん。
実に表情豊かで、情感あふれる演奏です。「加茂の流れに」など、和服姿の女性が川べりを散歩しているイメージがすぐに頭に浮かんできます。
ピアノの栗林稔さんは、当時「最高の」とも言われたスタジオミュージシャン。
そしてドラムには、なんと村上"ポンタ"秀一さんです。なんともツボを心得たドラミングです。
このサポート・バンドは単なるフォーク・ロックだけではなくて、時にはロック・テイストだったり、時にはリリカルだったりと、曲をどうにでも形作れるんですね。音楽性豊かな、いいバンドですね。
南こうせつのよく通る高い声は、いつもほんのり温かみを帯びています。それは優しさや、明るさや、生きている喜びとなって聴いているぼくらを元気にしてくれます。
しかしいったん悲しい歌を歌うとなると、その声からは悲しみがほとばしり、時には感情を露わにした声は強く大きくなります。そして聴く人の心の痛みを分かち合ってくれるのです。
当時もかぐや姫の歌詞の内容で涙した人は多かっただろうと思うけれど、いま聞くと、自分の過去と重なることもあったりして、新たな感慨が生まれるんです。
そしてやっぱり涙がこぼれそうになる。
その涙には、悩み多き青春時代を思い出して懐かしむ涙も含まれているんですね。
◆かぐや姫LIVE
■リリース
1974年9月15日
■歌・演奏
かぐや姫
■プロデュース
佐藤継雄
■録音メンバー
<かぐや姫>
南こうせつ(guitars, vocals)
伊勢正三(guitars, vocals)
山田つぐと(contrabass, vocals)
<サポート・ミュージシャン>
石川鷹彦(acoustic-guitar, electric-guitar, banjo, flat-mandolin)
栗林稔(acoustic-piano, electric-piano, organ)
大原茂人(organ, mellotron)
武部秀明(electric-bass)
村上秀一(drums)
■録音
1974年7月21日、7月23日 京都会館、大阪厚生年金会館
■収録曲
SIDE-A
① うちのお父さん(作詞作曲 南こうせつ)
② 僕の胸でおやすみ(作詞作曲 山田つぐと)
③ ペテン師(作詞 喜多条忠、作曲 伊勢正三)
④ 加茂の流れに(作詞作曲 南こうせつ)
⑤ 君がよければ(作詞作曲 山田つぐと)
⑥ カリブの花(作詞 山田つぐと、作曲 南こうせつ)
⑦ 22才の別れ(作詞作曲 伊勢正三)
SIDE-B
⑧ 妹(作詞 喜多条忠、作曲 南こうせつ)~海(作詞 水谷みゆき、作曲 神山純)
⑨ 星降る夜(作詞作曲 南こうせつ)
⑩ 置手紙(作詞作曲 伊勢正三)
⑪ 眼をとじて(作詞作曲 山田つぐと)
⑫ あの人の手紙(作詞 伊勢正三、作曲 南こうせつ)
⑬ 神田川(作詞 喜多条忠、作曲 南こうせつ)
■チャート最高位
1974年 週間アルバム・チャート オリコン1位
1975年度年間アルバム・チャート オリコン5位
1976年度年間アルバム・チャート オリコン33位
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方は多いと思います。当時はFを押さえられると
「凄い」と言われたような。脱線いたしました。
私もこのアルバムが大好きで、テープに録音し、
擦り切れるほど聞きました。ポンタさんがドラムで
入るところを間違えるのは御愛嬌です。かぐや姫の
代表曲が収録されているのも魅力です。
いま聴いてみると、バックバンドの演奏の素晴らしさに改めて気づかされます。
一瞬で青春時代に戻ることのできる、懐かしいアルバムです