もし、好きなビートルズの曲を10曲選べ、と言われたら、ぼくなら絶対に入れたい曲、それが「オー! ダーリン」です。アルバム『アビイ・ロード』の4曲目に収録されています。日本でのみシングル・カットされました。
メロディー・ラインといい、ストレートな歌詞といい、ロッカ・バラードの見本のような曲です。御大ジェームス・ブラウンが歌っても似合うかな。
最初にこの曲のセッションをしたのが1969年1月、ベーシック・トラックを録音したのが同年4月、正式にアビイ・ロード・スタジオで録音を始めたのが同年7月です。
アビイ・ロード・スタジオの近所に住んでいたポールは、他のメンバーよりも早くスタジオ入りし、まずこの曲のヴォーカルを録音していました。まだ完全に目のさめていない、寝起きのような状態で声を出したかったのだそうです。
『アビイ・ロード』
そして、この7月の一週間ほどは、ポールは一日に一回だけしか歌わなかったということです。「何度も歌うと慣れてしまうから」というのがその理由です。
「オー! ダーリン」のヴォーカル・トラックが録音された7月18日も、ポールは早くからスタジオに入り、声をつぶすために歌い込んで、レコーディングに臨みました。
ジョンもこの曲を歌いたがったそうで、ジョンとポールのハーモニーがつけられていたヴァージョンも録音されましたが、結果的にはおクラ入りとなりました。ポールが自分のヴォーカルにこだわりを見せて、何度もリテイクを重ねてできたものが、現在アルバムに収録されているヴァージョン、というわけです。
イントロのピアノの音色がシブいですね。コードで言うとEaug7(Eオーギュメントセヴン)です。ポロ~ンと弾いているだけですが、一気に緊張感が高まります。
8分の12拍子で、いわゆる3連系の緩やかなロッカ・バラードです。ドラムスとベースのコンビネーションが良く、とても気持ちよくグルーヴしています。その上に被さるのが、アフター・ビートで入るギターのカッティングと、力強いピアノの3連ブロック・コードです。そしてオールディーズっぽいコーラスと、重量感のあるソウルフルなベースも曲にアクセントをつけています。
サビで聴かれるポールの情熱的なシャウトがとっても魅力的。普段は甘い声が売り物のポールですが、この曲では凄みを効かせたヴォーカルを聴かせてくれます。
しかし、ジョンは「俺がヴォーカルをとっていたら、もっといい出来になっていたのに・・・、ポールにセンスがあれば俺に歌わせていたと思うよ」「ポールの歌は良くない。俺の方がもっとうまく歌えたのに」などと発言しています。
確かに、もしジョンが歌っていたとしたら、もっとトンガったロックンロールになったとは思います。でもですよ、この曲のポールの歌が良くないとはどう考えても思えないんです。むしろ、ポールはバラードだけでなく、R&Rも見事に歌えるということを再認識させることができたんじゃないでしょうか。そういう意味では、「オー! ダーリン」のヴォーカルは、ビートルズ初期にポールが歌った「ロング・トール・サリー」や「シーズ・ア・ウーマン」などを思い起こさせますよね。
[歌 詞]
[大 意]
オー ダーリン どうか信じてくれ 君を傷つけたりはしない
信じてほしい この言葉 決して君を傷つけはしない
オー ダーリン 君に捨てられたら 僕ひとりではやっていけない
信じてほしい この言葉 僕をひとりにしないでくれ
僕なんかもうお払い箱と君が言った時 僕は泣き崩れてしまいそうだった
僕なんかにもう用はないと君が言った時 僕は悲しみのあまり死にたくなった
オー ダーリン 君に捨てられたら 僕ひとりではやっていけない
信じてほしい この言葉 決して君を傷つけたりはしない
信じてくれ ダーリン
オー ダーリン どうか信じてくれ 決して君を悲しませたりはしない
どうか信じてくれ この言葉 決して君を傷つけたりはしない
◆オー! ダーリン/Oh! Darling
■発表
1969年9月26日
■シングル・リリース(日本のみ)
1970年6月5日
■収録アルバム
アビイ・ロード/Abbey Road(1969年)
■作詞・作曲
ポール・マッカートニー/Paul McCartney(クレジットはレノン=マッカートニー)
■プロデュース
ジョージ・マーティン/George Martin
■録音メンバー
ビートルズ (Beatles)
ポール・マッカートニー/Paul McCartney(lead-vocal, backing-vocal, bass)
ジョン・レノン/John Lennon(backing-vocal, piano)
ジョージ・ハリスン/George Harrison(backing-vocal, guitar)
リンゴ・スター/Ringo Starr(drums)
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当時この「アビイ・ロード」のジャケットに凄く憧れました。いや、今でもこれは憧れです。良く行くCDショップにこの大、大拡大版が壁一杯に貼ってあるんですが、それを見るたびあの頃の気持ちを思い出します。一時期煙草を消しちゃった。。という話題がありましたが、アレはイカンです。アレは。
それはさておき、「オー・ダーリン」をポールの傑作にあげるジェイさんのお友達、中学生のわりになかなか鋭いセンスの持ち主と見ました(^^)。
ポールの傑作といえば大抵が「イエスタデイ」「ヘイ・ジュード」あたりをあげるでしょうにね。
>「アビイ・ロード」のジャケット
筋金入りのビートル・マニアは、いまだにイギリス旅行の際にはアビイ・ロードの横断歩道で記念写真撮ってますね。
煙草を消した、って写真でポールが持ってる写真を加工して消したってこと? ジャケットもアートなんだから(アートでなくても、ですけど)、第三者が勝手に著作物に手を加えちゃダメですよね。しかも「嫌煙」が絡んでるんでしょうから、それはもう嫌煙派のファッショですよね。
(ちなみに私のカラオケのレパートリーには「ロックンロール・ウィドー」ほか山口百恵いっぱい入ってます子供ながらにカッコエエ!と痺れたものです。
ビートルズの曲のコード進行って、いつ聴いても不思議です。独特です。あの不思議な音はEaug7だったのですね。
ポールは最近また新曲出したのですね。稀代の天才がふたりぶつかり合ったのは幸運だったのか、不幸だったのか・・・リスナーにとっては幸運ですよね
こんなおもしろいエピソードを聞かされるとこんど聴く時にはまた違った耳になってますね。為になりました。(^^)v
百恵さんの歌ってカッコいいですよね。とくに阿木-宇崎夫妻の曲が印象に残ってます。
ビートルズの曲、とくにポールの曲はアメリカのスタンダード曲の作りを踏襲したものが結構あって、しかも革新的な部分ももっているんですね。だから当時のポップス(今も)の中にあって斬新に聴こえるんだと思います。
>稀代の天才がふたり
そうですね、聴き手のわれわれにしてみれば幸運以外のなのものでもないですよね~ でもあんな名コンビ、もう生まれないかもね。(^^)
だからエピソードなんかを調べて、文章中に散りばめてみたりしてるんですけど。。。
こんな記事でもためになると言ってくださると、ほんと、嬉しくなっちゃいますよ(^^)。
なぜ?
ということで、私もシングルを持っているのですが、どういうわけかジャケットがいなくなっているんです。
なぜ?
ジョージファンの私としては、B面もかなり好きです♪
ヒア・カムズ・ザ・サン、ギター弾き始めた頃にマスターした曲です。これまた良い曲なんですよね~。どっちがA面になってもおかしくないと思います。
ジャケットのないシングル盤、うちにもあります。おまけにジャケットと中味の違うLPまであります。なぜ?(;´Д`)
私も「オー!ダーリン」のベースが好きです。とても真似はできませんでしたが…。(あっ、私も若いとき一応ベーシストだったんです)
ジョンのバージョン(←つっこんでね^^)も聞きたかったけど、やっぱりこのポールのシャウトがないと別の曲になってしまうでしょうね。
「オー!ダーリン」のベース、昔コピーしてみまましたよ。結構動くベースでしたから、その当時コピーするのがたいへんでした。
そうでした、オンデンさんベーシストだったんですね。その前がAmなシンガー・ソング・ライターでしたよね(^^)。
そうそう、ジョンのバージョン(ジョンのバー"ジョン"ですか~ _/\○_⇒____○_ヘナヘナヘナ)、一度は聞いてみたいですね~。ふたりとも歌いたがってた、ということは、ポールもジョンもこの曲がとても好きだったのかなあ。想像してみても、やっぱりポールのつぶれた声のド迫力ボーカルの方が好きです♡