これは、ハービー・ハンコックの「ファンク宣言」とでも言うべきアルバムです。
マイルス・デイヴィスのバンドでエレクトリック・ピアノを弾くようになったハービーは、もともと「ウォーターメロン・マン」や「カンタロープ・アイランド」などの8ビート系の名曲を書くなどソウルやファンクのテイストも持っていました。しかし一説によると、ジャズ・マンとしてのプライドが邪魔をしていたので、なかなか自分の枠を打破する気になれなかったといいます。
そして、試行錯誤のすえ、ファンクやR&Bなどの要素を取り入れるようになったハービーの、ひとつの到達点が、この「ヘッド・ハンターズ」です。
シンプルなハーモニーではあるけれど、ファンキーな16ビートに乗って繰り広げられる各々のインプロヴィゼイションは手に汗握るような緊張感をたたえています。ジェームス・ブラウンやスライ&ザ・ファミリー・ストーンらのファンク・グルーヴを積極的に取り入れ、ジャズの要素を残しながらも電子楽器を最大限に活用したファンク・ミュージックを展開しています。さらに、バンド全体が一丸となってバシバシ繰り出すキメのフレーズがカッコいい。
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ドラマーのハーヴィー・メイスンはロサンゼルスのセッション・ドラマーでプロデューサーとしても名高いミュージシャンです。そのハーヴィーとポール・ジャクソンが織り成すファンキーなリズムに、パーカッションのビル・サマーズと、サックスのベニー・モウピンのクールなサウンドが絡んでゆきます。そしてハービーのクラヴィネットとエレクトリック・ピアノから生まれる絶妙なソロと的確なバッキングが、心地良い緊張感をもたらしているのです。
最高の聴きどころはやはり1曲目の「カメレオン」でしょうか。シンセサイザー・ベースによる、ファンキーでダンサブルなリズムが魅力です。なによりカッコいいし、耳馴染みもよい。そのシンセ・ベースのリフに、ドラムス、ベース、クラヴィネットが次々に重なってきます。曲半ばで展開されるキーボード・ソロもハンコック節満載です。
3曲目の「スライ」は、タイトル通り、スライ・ストーンにインスパイアされたものでしょう。バンド全員で作り出すリズムは、まさに生き物。アップ・テンポの中で展開されるベニーとハービーのソロには迫力があふれています。
それにしても、ハービーのアルバムを聴くたびに思うのですが、ハービーってピアニストである以前に、なんて優れたコンポーザーであり、アレンジャーなのでしょう。これはマイルスからコードに捉われない演奏スタイルを求められ、伝統的ジャズのスタイルに捉われない洗練された曲作りを学んだことが大きく影響しているのではないでしょうか。
それだからこそ、従来のジャズでは使われることのなかったシンセサイザーなどを思い切って前面に押し出して、アルバムを作ることができたのだと思います。そのあたり、ハービーの中で何かが吹っ切れたのでしょうね。
ハービー自身の言葉によると、自分の進むべき音楽の道について迷っていた時、自分の信仰する宗教の教祖(日蓮上人)が夢に現れ、「自分の思う通りに進みなさい」というお告げを下し、それがきっかけでエレクトリック・ファンクに取り組むことができたとか。
このアルバム、当時のジャズ・ファンからは「ハービーは堕落した」と、大きな非難を浴びたそうですが、ジャズ・ファン以外の人々に高く支持されて、なんとポップ・アルバム・チャート(ジャズ・チャートではなく)で13位にまで昇るヒットとなりました。売り上げ枚数は、ジャズとしては異例の150万枚を記録しています。
これ以降のハービーは、ひとつの型にとらわれることなく、多彩な活躍ぶりを見せてくれていて、今なお進化し続けています。
◆ヘッド・ハンターズ/Head Hunters
■演奏
ハービー・ハンコック/Herbie Hancock (keyboards)
■リリース
1973年10月26日
■録音
1973年9月、Wally Heider Studios, San Francisco, California
■レーベル
コロンビア
■プロデュース
ハービー・ハンコック、デヴィッド・ルービンソン/Herbie Hancock, David Rubinson
■収録曲
[side A]
① カメレオン/Chameleon (Herbie Hancock, Paul Jackson, Harvey Mason, Bennie Maupin)
② ウォーターメロン・マン/Watermelon Man (Herbie Hancock)
[side B]
③ スライ/Sly (Herbie Hancock)
④ ヴェイン・メルター/Vein Melter (Herbie Hancock)
■録音メンバー
ハービー・ハンコック/Herbie Hancock (electric-piano, Clavinet, synthesizer)
ベニー・モウピン/Bennie Maupin (tenor-sax, soprano-sax, saxello, bass-clarinet, alto-flute)
ポール・ジャクソン/Paul Jackson (electric-bass, marimbula)
ハーヴィー・メイソン/Harvey Mason (drums)
ビル・サマーズ/Bill Summers (congas, shekere, balafon, agogo, cabasa, hindewhu, tambourine, log-drum, surdo, beer-bottle, gankogui)
■チャート最高位
1973年週間アルバム・チャート アメリカ(ビルボード)13位、ビルボードR&Bチャート2位、ビルボード・ジャズ・チャート1位 日本(オリコン)86位
1974年年間アルバム・チャート アメリカ(ビルボード)21位
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でもレコード、どっかへ行っちまいました(泣)
カメレオンマン、シンプルで今聴いてもカッコイイっすね。
ジャケットのクワガタムシはどんな意味なのか・・・?
ハーヴィー・メイスンとポール・ジャクソンのリズム隊がすごく良いです(^^)
「カメレオン」って、ハービーのニックネームなのかな?そんなことを聞いたような覚えがあります。どんな音楽にも対応できるからカメレオンなんだとか。。。
ジャケットはですね、、、え~と・・・不明です(オチが思いつかなかった 笑)
とっても好きなのと、とっても苦手なのがある人です。
勿論、「処女航海」は好きですが、「マン・チャイルド」などは苦手です。
あれ? この話は前もしましったっけ(汗)
もうハービーったら、いろんなことに手を出しているので、聴く側からすると好きな部分とそうでない部分が別れてしまいますよね。
そういう意味ではチック・コリアも同じかもしれない、とふと思った今日の午後、でした。(^^)
以来、ハービーさんは宗教的発言がクドくなりましたねぇ…。
フムフム、そういうことだったのですか~
たしかに「夢のお告げ」というあたりがドラッグっぽく思えますよね。
そういえば宗教的発言もかなーり多いハービーさんです~
このカブトムシ、実はヘッド・ディマグネタイザ(消磁機)なんです。
要するにハンコック師の顔に覆いかぶさっているのは
「テープレコーダのヘッドについた残留磁気を素早く変化する磁気で取り除いてしまう機械」な訳で、
「テープレコーダとキーボード(或いはタンス)が当時のエレクトロの代名詞」だった為このようなジャケットデザインにしたと思われます。
おそらく師も「ん?これ顔みたいだな。丁度いい、ジャケットに使ってみよう」と考えたことでしょう。