このアルバムを手にした時のぼくはまだ高校生でした。
当然といえば当然ですが、このアルバムついての知識はほとんどなかったので、音楽性についての予想などできもしませんでした。
「すでに解散している短命のスーパー・グループ」程度は知っていましたから、火の出るような4人のインタープレイや、ブルースを基調としたよりヘヴィーで過激なサウンドなどを期待していたものです。だっていわばクリームとトラフィックが合体したわけですからね。
だから、初めて聴いた時は、なんだか肩透かしを食わされたようで、ちょっとガッカリしました。
でも、聴けば聴き込むほど、「そう悪いアルバムでもないな」と思うようになっていきました。
クリームが白熱のインプロヴィゼーションを展開するといっても、それは主にライヴ・ステージでのことで、スタジオ録音されたものは大衆性を取り込んだポップな面を持つものだったし、トラフィックもどちらかというとスタジオで作り込んだ音を持っていたので、そう考えるとブラインド・フェイスが作ったこのアルバムの音も自然なものに感じることができたんです。それ以前に「ブラインド・フェイス」は「クリーム」でも「トラフィック」でもない、と思うようになっていました。
曲もいわゆる「佳曲」が多いと思います。とくにエリック・クラプトン作の「プレゼンス・オブ・ザ・ロード」は、のちのちまで残る彼の名作と言えるのではないでしょうか。
またリック・グレッチのヴァイオリン・ソロをフィーチュアした「歓喜の海」の自然な響き、ヘヴィなリフを持つ「泣きたい気持ち」、バディ・ホリーのR&Rをカヴァーした「ウェル・オール・ライト」、各自がソロを回す「君の好きなように」など、ヴァリエーションに富んだラインナップが組まれています。
全曲のリード・ヴォーカルをスティーヴィー・ウィンウッドが取っているため、ウィンウッド色の強いアルバムとも言うことができるでしょうけれど、むしろそう思えるのが自然なことなのではないでしょうか。
メンバーそれぞれが強引に自己の特長を出すのではなく、素材としての曲に合ったアプローチを繰り広げ、みんなで協力して曲を組み立てているように聴こえるのです。
いわゆる「スーパー・グループ」というものは、我の強いミュージシャンが集まっているため、我のぶつかりあいですぐに崩壊してしまいがちなものですが、ブラインド・フェイスはどうだったのでしょうか。
聞くところによると、メンバーそれぞれの目指す道がやはり微妙にずれていたため、ブラインド・フェイスも短命に終わったようです。しかしぼくは、このグループのありようは、ジャム・セッションの延長上にあったとも思えるのです。この4人が集まればどんな新しいことが出きるのか、そういう実験性も秘めていたのではないでしょうか。ひとつのユニットとしてできることの輪郭がはっきりと見えてきたから、このグループはわずか半年足らずで解散したのだと思います。
このアルバムに対しては、「予想外だった」とか「期待外れ」だったとかいう論評をけっこう読んだり聞いたりしますが、ぼくとしては「これがブラインド・フェイスの音楽なんだ」と、わりと肯定的に受け止めています。時々棚から引っ張り出して聴いている一枚です。
◆スーパー・ジャイアンツ/Blind Faith
■歌・演奏
ブラインド・フェイス/Blind Faith
■リリース
1969年8月
■プロデュース
ジミー・ミラー/Jimmy Miller
■録音メンバー
【ブラインド・フェイス/Blind Faith】
スティーヴ・ウィンウッド/(vocals, keyboards, guitars, bass④, autoharp⑤)
エリック・クラプトン/(guitars, vocals⑥)
リック・グレッチ/(bass, violin⑤, vocal⑥)
ジンジャー・ベイカー/(drums, percussion, vocal⑥)
■収録曲
A① 泣きたい気持/Had to Cry Today (Winwood)
② マイ・ウェイ・ホーム/Can't Find My Way Home (Winwood)
③ オール・ライト/Well All Right (Buddy Holly, Jerry Allison, Joe B. Mauldin)
④ プレゼンス・オブ・ザ・ロード/Presence of the Lord (Clapton)
B⑤ 歓喜の海/Sea of Joy (Winwood)
⑥ 君の好きなように/Do What You Like (Baker)
■チャート最高位
1969年週間チャート アメリカ(ビルボード)1位、イギリス1位
1969年年間チャート アメリカ(ビルボード)78位、イギリス35位
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懐かしいですねぇ。私もこのアルバム結構好きですよ。当時はウィンウッド様が大好きだったんです。
MINAGIさんって本当に守備範囲が広くって、時々ビックリします。凄いわぁ~。
僕は、このアルバム、中学生の頃、レコード店で飾ってあるのをチラチラ見て、裸の少女ににドキドキしていた記憶があるんですね。
エリッククラプトンの素晴らしさを、まだ知らない頃で、単にジャケットが印象的だった記憶があります。
ちゃんと聴いたのは高校に上がってから。
当然、脳裏にこびりつくアルバムになりました。
激しいインタープレイを期待するとガッカリしますが、当時はちょっとオトナのロックを聴いた気分になりましたよ。全編ウィンウッドのボーカルは、ウィンウッド好きにはたまらなかったでしょうね。
>本当に守備範囲が広くって
いえいえ・・・(汗)、いろいろなブログを巡ってみると、ぼくなんぞ足元にも及ばない方がいっぱいおられます~(^^;)
このジャケット、当時のアメリカでは「過激すぎ」という理由で別な写真に差し替えられたそうですね。
スコーピオンズの「ヴァージン・キラー」とジミヘンの「エレクトリック・レディランド」とこれは、レジに女性店員しかいない時は買うのを躊躇したもんです。(^^;)
買った当初こそそのサウンドにちょっと戸惑いましたが、今ではこのアルバム、傑作の部類に入ると思ってます~
内容は全然知らなかったけど、ジャケットは鮮明に記憶に残ってます・・・
何せ純情な少女時代、近寄ってはいけないアルバムでした。
それにしても、若い頃のエリック・クラプトンって・・・地味ですね(汗)
そうです、こんな豪華メンバーだったのです。チャートも全米1位に輝いたしね。
この程度のジャケットに驚いてちゃーいけません。60年代の日本ジャズのオムニバス盤なんか、ジャケットかヌードポスターか分からないものがたくさんありますからね~
若かりし頃のクラプトン・・・うーむ確かに地味っぽい。いやいやこの場合シブい、ということでいかがでしょう。(^^)
リアルタイムでないから冷静に聞けたのでしょうか?初めて聴いたときからのお気に入りです(^^)。
TBさせていただきました。
よろしくお願いします。
ぼくも今ではなかなかまとまった好アルバムだと思っています~
しかしこのバンド、生で聴くとどうなのか興味ありますね。例えば「Do What You Like」みたいな、もろジャズの曲もあったりして、曲によると結構大暴れしてそうな気がするんですよ。。。(^^)