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10月25日、ジャック・ブルースが亡くなりました。71歳だそうです。
少しでもあんな風に弾けたら、と思っていた偉大なベーシストでした。
1950年代にロックンロールが生まれて約60年。不摂生や事故などでの急な逝去をのぞき、ロック・ミュージシャンという先の保証のない職業で寿命を終える人が、21世紀に入るとチラホラ現われるようになりました。
ロッカーというのは、時流に乗った存在というか、一生続くとは思えない「仕事」だというイメージがあったんですが、かつて自分がそう感じていたことを思い出すと、なにやら感慨深いものがあります。
ロックに染まっていたぼくの10代の頃は、大多数のロッカーはまだ20~30代。60歳以上のロッカーって、想像もできませんでした。
ところが、ポール・マッカートニーやローリング・ストーンズの連中など、70を超えてからもロックし続けるカッコイイ不良老人が、今やザラにいます。
ジャック・ブルースも、70を超えても現役として活動していたひとりでした。
子供の頃のぼくは、「オトナ」に対して、良く言えば落ち着きがあるけれど、若さやしゃれっ気や面白みはないというか、「着るものは、昼はスーツ、夜はステテコ。地味な日常を送っている」という、勝手な印象を持っていました。
でも、ぼくより一周り上くらいの世代の先輩たちは、いくつになっても家に引っ込んだりせず、やりたいことをやり続けていました。その若さが「おとな」に対して持っていたイメージを変えてくれたんだと思っています。
その先輩方の姿は、ロック・ミュージシャンが年齢を重ねてもロックすることをやめないで、アグレッシブに生き続けている姿からも影響を受けていたような気がします。
閑話休題。
ぼくがジャック・ブルースというベーシストを知ったのは、偉大なスリー・ピース・バンド「クリーム」によってです。
ブルースとジャズを大胆に消化した曲を多く生み出していましたが、いままでのブルースに比べるとポップ指向だったので、まだポップなロックばかり聴いていたぼくにもなじみやすかったです。少し背伸びをしてクリームなんぞ聴いていると、ちょっと「オトナの音楽がわかった」気になったものでした。
その中でジャック・ブルースの数々の豪快なスーパー・プレイには心底驚かされました。とくに「クロスロード」「アイム・ソー・グラッド」など、ライブ録音で聴かれる白熱のベースには心躍ったものです。
ジャックは、ロックばかりでなく、王立アカデミーでチェロや作曲を学んだ経歴を持っていたり、ブルース系のアレクシス・コーナー、R&B系のグレアム・ボンド、ジャズ系のトニー・ウィリアムスなど、さまざまなジャンルの各ユニットに加わるなど、豊富なキャリアと幅広い音楽性を持っていました。
自由なベース・ラインを繰り出す彼のスタイルから、ぼくは間違いなく大きな影響を受けました。
臨機応変なジャックのベースは、白熱したアドリブ・パートではエリック・クラプトンのギターと密接に絡み合って緊迫したインタープレイを繰り広げます。ボーカルをサポートしている時のオーソドックスなプレイも安定したものでした。
よく歌うベース・ラインの組み立てはとても新鮮でしたし、クラプトンのギターに負けず劣らずの早弾きにも衝撃を受けました。また、クリームの音楽の特徴のひとつとも言える粒立ちのクッキリした独特な音色も、唯一無比だったと思います。
ベースという立ち位置ながら、どうにか目立とうと目論んでいた当時のぼく(汗)は、やはりロック・ベースではまだ珍しかったジャックの早弾きに魅力を感じました。でもそれは、早く弾くだけではなく、結局そこにオリジナルな歌や感性があるから惹かれたんだと思います。
ちなみに、10代の頃に好きだったベーシストは、ティム・ボガート、ピート・セテラ(シカゴ)、メル・サッチャー(グランド・ファンク・レイルロード)などなど。いずれも一騎当千の個性派ベーシストで、濃くてフレキシブルなプレイが特徴です。
いま思えば、当時のぼくは目立ちたい気持ちが強かっただけですが、弾きまくればそれでいいという演奏はすぐつまらなくなってしまいました。自分なりに共演者の音に反応した、自分の感覚に忠実な演奏がどんどん面白くなっていったのは、もともと自分の中にその感覚があったのだとも思いますが、ジャック・ブルースのベースからの影響もとても大きかったと思います。
早弾きが得意なスーパー・ベーシストは、早く弾くことが素晴らしいのではなく、そこにそれぞれのベーシスト特有の歌心があふれているから素晴らしいんじゃないのかなあ、と思います。
そういう意味での、エレクトリック・ベースの革新的演奏者のひとりがジャック・ブルースだと言えるのではないでしょうか。
☆ジャック・ブルース(John Symon Asher Bruce) 1943年5月14日生~2014年10月25日没 71歳没
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