「フュージョン」というジャンルが現れたのは1970年代の後半だと記憶しています。
その当時は「クロスオーヴァー」という言葉が使われていました。おもにジャズとロックが、文字通り交差(クロスオーヴァー)したり、融合(フュージョン)してできたものです。
この動きの先駆けとなったミュージシャンにはマイルス・デイヴィスをはじめ、カルロス・サンタナやジョン・マクラフリン、ハービー・ハンコックらがいましたが、ジェフ・ベックのこの「ブロウ・バイ・ブロウ」こそジャズとロックの垣根を越えた、まさにボーダーレスなアルバムのうちの1枚ではないか、と思っています。
天気の良い日曜の午後や、寝る前のひとときなど、部屋でくつろいでいる時のBGMにピッタリだなぁ、などと思ったりしていますが、じっくり聴いても非常に聴きごたえを感じさせられる1枚です。
クールで研ぎ澄まされたジェフのギターですが、だからといってテクニック至上の無味乾燥な音楽ではありません。感情豊かに、自由自在にギターを語らせているのが心地よい。
そう、ジェフはギターを「弾く」のではなく、「語らせ(歌わせ)る」ミュージシャンなのです。
ジェフの音楽の出発点はブルーズで、その後はブラック・ミュージックへの接近を図っているようですが、このアルバムのヴォイシングを聴くと、だいぶジャズに近づいているようです。しかし、単にジャズとの融合を図ろうとしたというよりは、この時点でジェフが表現したかったことが結果的にクロスオーヴァー・サウンドとなって表れた、ということではないでしょうか。
納得のゆく自分のバンドを作ることにたいへん苦労していたジェフですが、ここらあたりからバンド・サウンドよりも、自分のギターで作り上げるサウンドの追求に専念しているようにも思えます。
バックの面々のサポートも実に素晴らしいですね。
マックス・ミドルトンは、ジェフ・ベック・グループでも起用された、気心の知れたキーボード・プレイヤー。
ベースのフィリップ・チェンは、このアルバムでの好演が買われ、のちロッド・スチュワートのバンドに加入しました。
ドラムスのリチャード・ベイリーは、この時点でなんと弱冠18歳! うーん、見事。
このアルバムには、ジェフの看板曲のひとつでもある「スキャッターブレイン」をはじめ、計9曲が収められています。
その中には、レノン=マッカートニーが作ったR&R「シーズ・ア・ウーマン」や、BB&A時代にトラブルがあったと言われているスティーヴィー・ワンダーの曲が2曲入っています。
スティーヴィーの曲は「哀しみの恋人達」と「セロニアス」。とくに「哀しみの恋人達」は今でもライブでよく演奏しているほか、多くのギタリストに取り上げられています。
ひとつの新しい流れを作ったという意味でもたいへん重要なアルバムです。
しかし、単なる音楽ファンとして心地よいギター・サウンドに浸りたい時にも、ちゃんとその欲求に応えてくれる素敵なアルバムだと思います。
◆ブロウ・バイ・ブロウ/Blow by Blow
■演奏
ジェフ・ベック/Jeff Beck
■リリース
1975年3月29日
■プロデュース
ジョージ・マーティン/George Martin
■収録曲
[side-A]
① 分かってくれるかい/You Know What I Mean (Jeff Beck, Max Middleton)
② シーズ・ア・ウーマン/She's a Woman (John Lennon, Paul McCartney)
③ コンスティペイテッド・ダック/Constipated Duck (Jeff Beck)
④ エアー・ブロワー/Air Blower (Richard Bailey, Jeff Beck, Phil Chen, Max Middleton)
⑤ スキャッターブレイン/Scatterbrain (Jeff Beck, Max Middleton)
[side-B]
⑥ 哀しみの恋人達/Cause We've Ended as Lovers (Stevie Wonder)
⑦ セロニアス/Thelonius (Stevie Wonder)
⑧ フリーウェイ・ジャム/Freeway Jam (Max Middleton)
⑨ ダイヤモンド・ダスト/Diamond Dust (Bernie Holland)
■録音メンバー
ジェフ・ベック/Jeff Beck (guitar)
マックス・ミドルトン/Max Middleton (keyboards)
フィル・チェン/Phil Chen (bass)
リチャード・ベイリー/Richard Bailey (drums, percussions)
スティーヴィー・ワンダー/Stevie Wonder (clavinet ⑦ guest : uncredited)
■チャート最高位
1975年週間アルバムチャート アメリカ(ビルボード)4位、日本(オリコン)27位
1975年年間アルバムチャート アメリカ(ビルボード)76位
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たしかに、フレーズを繋げる、というよりも、自分のソロ・スペースをトータルに意識して弾いてる感じがします。ギターの息遣いまでが聴こえてきそうですね。
ですよね、これはちょっとマネできませんよね~ 「孤高の」という表現が似合うギタリストのひとりですね。
ぼくらが学生の頃って、ミュージシャンの動く姿を見られるのはとても貴重な時間だったんですが、今はありがたい時代になりましたね~
こうした(おそらくは)ラフな打ち合わせのみの演奏の面白さはナマで見るに限りますよね。
「クロスオーバーイレブン」、いっときよく聴いてました~ 懐かしいぞなもし~♪
ギターでの感情表現がすごい。
音の先の先まで意識して弾いている。
そんな感じを受けてしまいます。
絶対マネできないよな~。
でも、今聴くと、3人とも個性的だし、すご腕だったんですね。
この演奏も格好いい!っていうか、格好良すぎ!!(←ナウい?^^)ようつべに感謝です。
キーボードもドラムも弾けてるし、お互いの呼吸を感じながら自分の音を聴かせるパフォーマンスは、まさにジャズ。生で聴きたいぞなもし~♪
「フュージョン」も「クロスオーバー」も懐かしい響きです。そういえば「クロスオーバーイレブン」なんて番組もありましたね。
そういえばジェフズ・ブギーをupしてましたよね(^^)。次はスキャッターブレインをぜひ!(^^)
未だにアイドルですよ。ウクレレでジェフベックを目指してます!
そういえば、出す音もへんに老成してなくてまだまだトンガッてますよね。
あ、動画Thanxです。ベースがタル・ウィルケンフェルドのステージですね。彼女、まだ21才?22才?でしたっけ。たいしたもんですな~(・∀・)
そして本当にきれいな音を出す人です。
昨年は、若い女性のベーシストを伴ってクロスロード・ギター・フェスに出ましたね。
やりますな。
http://jp.youtube.com/watch?v=2gO7FI_ogvA
インギー君とはタイプは違いますが、ジェフ君もなかなかのもんざんしょ?(^^)
そうですね~、ジェフ先生の場合は自分の腕を磨くことだけに集中されているみたいで、あまりほかのことには気を向けていないのかも。。。
そういえばステージで大暴れするジェフ先生の姿、見たことないような気がする・・・。ちょっと狂った姿も見てみたい気がします(汗)。
Nobさんはとにかく派手なギタリストが好きですもんね。ぼくも歯で弾くベーシストを目指します!(・∀・)
テーマ→アドリブ→テーマという構成も、サウンド自体もほとんどジャズですもんね。
確かにロック好きならBB&Aの方が好みでしょうね。というか、BB&Aのロック、好きです~(^^)
衣装(?)もちょっと地味ですわ。
もっと、自己主張して上手さをアピールすれば良いのに♪
ギターを燃やすとか、歯で弾くとか・・・
私は、そういうタイプの方が好きかな(汗)
たしかに素晴らしいのですが、ジャズに聴こえてしまい BB&Aのほうがよかったとお思いました(~_~;)
こりずに、またジェフ・ベック聴いてみます。
そうですよね、上手い人って必ず楽器持つ姿がサマになってるんですよね~
大丈夫、Anneさんもそのうちカッコよく持てるようになりますよ。
それより腎炎、早く良くなりますように(祈)。
ギターをもつ格好が素敵ですよね~
かっこよくギターを持ちたいけどほど遠い私(笑)