キリン・ラガー・ビールのCMで流れている「タイムマシンにおねがい」という曲、ご存知ですよね。
この曲を世に送り出したバンドが、サディスティック・ミカ・バンドです。
新しいヴォーカリストに木村カエラ嬢を迎え、CMのために期間限定で「Sadistic Mica Band Revisited」として今年(2006年)再々結成されました。その他のメンバーは加藤和彦(g)、高中正義(g)、小原礼(b)、高橋幸宏(drs)です。
左から 小原礼、高橋幸宏、木村カエラ、加藤和彦、高中正義
「タイムマシンにおねがい」は、サディスティック・ミカ・バンドのセカンド・アルバム「黒船」に収録されています。コンセプト・アルバムの形をとっているこの「黒船」という作品は、日本のポピュラー音楽史上に燦然と輝く傑作である、とぼくは思っています。
1971年、元フォーク・クルセイダース(「帰ってきたヨッパライ」の大ヒットで有名ですね)の加藤和彦、加藤夫人のミカ、角田ひろ(現つのだ☆ひろ)の3人によって、サディスティック・ミカ・バンドの原形は出来上がりました。デビューは1972年。この「黒船」制作に参加したメンバーが揃ったのは1973年です。元フライド・エッグの高中正義、元ガロの小原礼・高橋幸宏らの錚々たる顔ぶれです。「スーパー・グループ」のひとつだとも言えるかもしれません。
バンド名は、あのジョン・レノンとオノ・ヨーコのバンド「プラスティック・オノ・バンド」をもじったものだと言われていますが、加藤夫人のミカの包丁さばきがあまりにも「サディスティック」だったから、という説もあるそうです。
このアルバムのプロデューサーはクリス・トーマスです。ロック通の方ならよくご存知の名前ですね。そう、ビートルズやピンク・フロイドなどのアルバム制作にも携わった敏腕プロデューサーです。しかも、トーマス氏の方から「プロデュースさせて頂戴ね」というオファーがあった、というんですから、それだけでもこのバンドの持つ実力が伺えるというものです。
エレクトリック・ピアノと、ギターのロング・トーンで始まる1曲目の「墨絵の国へ」。静かなオープニングですが、すでに何事かが起こりそうな予感をたたえています。
2曲目「何かが海をやってくる」では、ファンキーなベースとタイトなドラムが生み出す、うねるようなビートの上を、高中正義のギターが自在に歌っています。そして、そのままジャパニーズ・ロックの名曲「タイムマシンにおねがい」へと続いてゆくのです。
「タイムマシン~」はロックンロールと加藤和彦の持つポップな面がしっかりと結びついた、実にノリの良いハード・ロックですが、中間部の高中正義のギター・ソロは、ハード・ロックの枠からはみ出した、強烈なグルーヴに満ちてますね。ミカ嬢のヴォーカルも、とってもキュートです。
続く組曲風の「黒船」の構成はとてもドラマチック。LPレコードではB面だった7曲目以降は加藤和彦テイストが満開、といった感じです。
16ビートを積極的に取り入れた曲作りが目立ちますね。ファンキーでややフュージョン寄りな「サディスティックス」名義の曲と、独特のポップな感性に満ちた加藤和彦作の曲との対比も面白いと思います。
また、ロック、ポップス、プログレ、ファンク、フュージョンなどの洋楽の要素が、端々に見られる日本情緒とうまく結びついているような気がします。
日本のロックとしてのオリジナリティをしっかりと持っていることが、制作後30年以上を経ても古びない理由のひとつなのでしょうね。
時が経てばロック風歌謡曲にしか聴こえなくなってゆくものが多い「J-POP」ですが、だからこそ逆にこのバンドのクォリティの高さが見えてくるのでしょう。
のちに、サディスティック・ミカ・バンドは積極的にイギリスへ進出します。当時の日本には彼らの先進的なロックを受け入れる土壌がまだなかったから、というのが理由のひとつだと言われています。
ともかくもロンドンに渡った彼らは、ロキシー・ミュージックのオープニング・アクトとしてツアーに同行、ロキシー・ミュージックを食ってしまうほどの人気を得ました。しかしバンドは加藤夫妻の離婚を機に、1975年11月に解散します。
加藤夫妻以外の残った4人(当時のベースは後藤次利)はサディスティックスという名で活動を続けましたが、1978年頃に自然消滅したようです。
上段 左から加藤和彦、加藤ミカ、小原礼
下段 左から高橋幸宏、今井裕、高中正義
その後、高中正義はフュージョン・ギタリストとして大活躍。高橋幸宏はYMOに参加。小原礼は渡米。後藤次利はベーシストとしての活動のほか、作・編曲家としても活躍していました。
1985年には、国際青年年のイベントとして、一日だけ「サディスティック・ユーミン・バンド」が結成されました。この時のラインナップは、松任谷由実、坂本龍一らが加わった豪華なものでした。
1989年にはヴォーカリストに桐島かれんを迎え、サディスティック・ミカ・バンド(表記をMIKAからMICAに変えた)を再結成。そして今年再々結成された、というわけです。
メンバーそれぞれが日本のポピュラー・ミュージック・シーンを支え続けてきた素晴らしいグループです。加藤和彦はもう58歳になるそうですが、この勢いなら、まだまだ当分第一線で活躍してくれそうですね。
◆黒船
■歌・演奏
サディスティック・ミカ・バンド
■リリース
1974年11月5日
■プロデュース
加藤和彦(①②③⑤) クリス・トーマス/Chris Thomas(④⑥⑦⑧⑨⑩⑪)
■収録曲
[side A]
① 墨絵の国へ (詞:松山猛 曲:加藤和彦)
② 何かが海をやってくる(曲:サディスティックス)
③ タイムマシンにおねがい (詞:松山猛 曲:加藤和彦)
④ 黒船(嘉永六年六月二日)(曲:サディスティックス)
⑤ 黒船(嘉永六年六月三日)(曲:サディスティックス)
⑥ 黒船(嘉永六年六月四日)(曲:サディスティックス)
[side B]
⑦ よろしくどうぞ (曲:サディスティックス)
⑧ どんたく (詞:松山猛 曲:加藤和彦)
⑨ 四季頌歌 (詞:林立夫 曲:小原礼)
⑩ 塀までひとっとび (詞:松山猛 曲:加藤和彦)
⑪ 颱風歌 (詞:松山猛、加藤和彦 曲:小原礼)
⑫ さようなら (詞:松山猛 曲:加藤和彦)
■録音メンバー
加藤和彦 (vocals, guitars)
加藤ミカ (vocals)
高中正義 (guitars)
小原礼 (bass, percussion, vocal)
高橋幸宏 (drums, percussions)
今井裕 (keyboards, sax)
■チャート最高位
週間アルバム・チャート オリコン38位
MINAGIさん、お邪魔します。こちらでは初めまして!ですね。このCMも見た時は驚きました。最近、あの頃の良い音楽が沢山使われてきてますね。喜ばしい事です~。
ところでお願いがあります。こちらとリンクさせて頂きたいのですがご了承いただけますでしょうか?良いお返事お待ちしております。何卒宜しくお願いいたします。
>あの頃の良い音楽が沢山~
やっぱり良いものはずっと残るってことでしょうね。CM見てて、「おっ」と思うこと多いです。最近ではゾンビーズの「好きさ好きさ好きさ」が車のCMに使われてますね。
>リンク
こちらこそありがとうございます。 どうぞ遠慮なくリンクしてやって下さいませ。ついでにリンクでイナバウアーもお願いします(違)。
あ、ぼくの方も、ジェイさんのブログを「ブログ集」に入れさせて頂いてま~す。
こんばんわ。リンクの件、ご快諾いただき有難うございます。早速リンクさせていただきました。お暇な時にでもご確認下さいね。此方のも入れてくださったなんて。。恥ずかしいです。でも有難うございます。
>ついでにリンクでイナバウアーもお願いします。
すぐさま反応できなかった未熟な私。。これからはついて行ける様精進致します。
いえいえ、こちらこそ末永くよろしくです。昨日はぼくの方が過去ログいろいろ読ませていただきました。コジカナ記事、ほかにも見つけて思わずニッコリしましたよ
>精進
ととととんでもないです~(汗)、ご心配されませぬよう。 内心あきれられたらどうしよう、と心配しながらも送信を強行したアホな私ですから・・・