キッチン・トランスレーターつれづれ日記

つれづれなるままに日々のよしなしごとを綴ります。本、風景や花や料理、愛犬の写真などをご紹介。

静嘉堂文庫美術館

2013-03-11 07:48:40 | アート
             

           例年よりかなり遅れて梅が満開になりました。ここは二子玉川に近い世田谷の住

           宅街にある静嘉堂文庫美術館の庭園。都心なのに、広大な緑が広がっています。

             

           三菱財閥を作った岩崎弥太郎の弟弥之助とその子小弥太作ったが美術館で

           す。世界に3点しかない(それが全部日本にある)曜変天目というお茶碗のう

           ちの1点が所蔵されていて、国宝です。曜変というのは黒い釉薬の上に星の

           ような斑点がたくさんあって、その周囲を瑠璃色や虹色の光彩がとりまき、

           宇宙をイメージさせる美しさがありますが、人によっては、アメーバみたい

           なんて言う不埒な輩もいます。でもまあ、そう見えなくもないんですよね。

             

             美術館の横の文庫館。イギリスの田舎の住宅様式だそうです。

             

             近くには藁葺き屋根の民家園もあります。

             

             道端にはオオイヌノフグリが可愛い青い花を咲かせ、

             

            水のぬるみ始めた小川も流れています。風光明媚というのではないけ

            れど何だかほっとする日本の風景です。
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すばらしいリヒテンシュタイン侯爵家のコレクション

2012-10-11 10:11:22 | アート
          

          リヒテンシュタインという国を知っていますか?スイスとオーストリア

          の間にある小さな小さな国です。小豆島くらいの大きさですって。リヒ

          テンシュタイン侯爵が17世紀から代々治めてきた国で、英邁な君主が

          多かったのでしょうね、数多の戦乱をくぐり抜け現在に至るまで存続

          しています。ヨーロッパにもバチカンを初め、ルクセンブルク、モナコ

          やサンマリノなど小さな国がありますが、そのどれにも負けない小ささ

          です。だけど君主はお金持ち。国外にいっぱい領地を持っています。

          ウィーンにも2つ宮殿があって、そこに絵画や工芸品のすばらしいコレ

          クションが収蔵されていたとか。第2次世界大戦の時もうまく隠し通し

          て、今この日本で私たちが鑑賞できるというわけです。ポスターになっ

          ている愛娘の肖像をはじめ、ルーベンスの傑作が数多くありました。

          その他バロック時代の絵画や装飾品、工芸品など見応えがあります。

          歴代の侯爵、よく集めましたねえ。

          

          会場の六本木駅近くのミッドタウンにある国立新美術館は、まさに

          新しい近代的な建物です。曲線が美しい。展示がゆったりしていて、

          人もさほど多くなく、久しぶりに楽しい絵画鑑賞でした。

          

          玄関前の庭が黄金の秋色に色づいていました。mellow yellowというのは

          こんな色を言うんでしょうね。
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ベネチアン・グラス・ビーズ

2012-08-27 11:07:28 | アート
          

          箱根ガラスの森美術館。ベネチアン・ビーズ展をやっているというので

          行きました。夏休み最後の日曜日。道が混むのは分かっているので、

          朝6時に出発。東名の大和トンネル辺りは車が多いものの、さすがに

          渋滞とまではいかず、2時間あまりで箱根に到着。早朝出発正解!

          

          この美術館は何度か来ていますが、きれいなところです。小さな楕円形

          のガラスビーズを無数にぶら下げてカーテン状にしたアーチがすてき。

          透明のガラスビーズが日の光を受けると、プリズムのように、七色にキ

          ラキラ輝きます。

              

          

              

          ベネチアのものを中心に古代ローマ、アフリカのビーズのネックレスや

          装飾品、フランスやアメリカのビーズ刺繍のバッグ、洋服などたくさん

          展示されていました。

          

              

           ビーズ展なので、壺や皿やランプなどの数は少なめでしたが、

           ミルフィオリの壷やランプ、レース・ガラスのお皿などがと

           ても美しく、目の保養をしてきました。

              

          ガラスの葡萄型ランプ。ガラスってほんときれいなものです。ショップ

          では、ベネチアン・ガラスのグラスやコップやお皿、それにアクセサリー

          類が数も種類もふんだんに売られていましたが、やっぱり値段が高い!

          ベネチアの5、6倍はするように感じました。

              

          外に出ると、門のところにピンクの百日紅と黄色い真夏の薔薇が青い

          空に映えて、なんと美しい!時を経ても美しさを失わないガラスもす

          てきですが、夏のこのひとときの自然の輝きは何者にも代えがたい

          美しさです。
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三菱一号館美術館

2012-08-18 18:09:19 | アート
          

         東京駅のすぐ近く、丸の内ブリックスクエアにある三菱一号館美術館の前

         庭です。暑い真昼、木々で覆われた柱からウォーターミストのシャワーが。

         涼しい!このミスト・シャワー、初めて出会ったのは十数年前カリフォルニ

         アのディズニーランドでした。今じゃ日本中どこでもありますね。

          

         この美術館は、明治中期に英国人建築家ジョサイア・コンドルが設計した

         三菱銀行の事務所だったビルを、かなり忠実に再建したものだそうです。

         いわばフィレンツェのウフィッツィ美術館の小型版、現代版といったところ

         でしょうか。中も当時の雰囲気そのままですが、さり気なくハイテクです。

              

         私の好きな英国ラファエル前派のエドワード・バーン・ジョーンズの展覧会

         が開かれているというので、行って来ました。中は以前の事務所の造りの

         まま再現されているので、小さい部屋を3階からへ1階くねくねと巡り歩いて、

         作品を見ていきます。他の美術館とはちょっと違う新鮮な感覚。たくさんの

         バーン・ジョーンズの作品が、テーマごとに分けてうまく展示されています。

         彼の絵は一見イタリア・ルネッサンス期の絵のように見えるものもありま

         すが、装飾性が強く、より幻想的かつ神秘的です。同時代のフランス印象

         派とは、かなり趣が違います。好みの分かれるところでしょう。

          

         建物のあるブリックスクエアは、ごく最近造られた人工的な空間ですが、

         とても上手に植物を使って、爽やかな憩いの場所になっていて、ベンチ

         でランチするサラリーマンやオフィスレディーがおおぜいいました。

          

         帰りはまたこの東京駅からJRで川崎へ。たまにしか行きませんが、毎回

         この近辺の垢ぬけさ具合に、完全にお上りさん状態になる私です。遠い

         ところから初めて来たように、ポカンと口を開けて建物や人々を見てし

         まいます。自分が住む下町で感じる日本のイメージとはかなり違うので。
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九谷焼美術館

2012-02-18 16:06:00 | アート
          

          2月10日、石川県加賀市にある九谷焼美術館へ行きました。

          

          この日も雪、美術館の庭も雪景色です。

          

          九谷焼というのは、べっとりとした黄色や緑の彩色で、どぎつい

          という先入観があったのですが、ここで展示されている品々を

          見ていると、それが思い込みであるような気がしてきました。

          軽やかな色彩もあれば、深い味わいの紫や緑もあり、絵柄も古

          風だったり、モダンだったり、思わず見とれる名品が多くありま

          した。あっさりした白磁や青磁もいいけれど、華やかな彩色の

          陶器も、またいいものです。

          

          二階の喫茶室で、いかにも加賀らしいきれいな和菓子と抹茶を

          いただいて、和みました。まさに「和」ですね。

               白き皿に絵の具を溶けば春浅し       夏目漱石

          まだまだ寒い今日この頃ですが、こんな句を思い出しました。漱石の

          溶いた絵の具は、九谷焼のような鮮やかな緑だったかもしれません。
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ヴァン・ゴッホ・カフェ

2011-11-21 10:15:20 | アート
ヴァン・ゴッホ・カフェ
ささめや ゆき,Cynthia Rylant,中村 妙子
偕成社
The Van Gogh Cafe
Cynthia Rylant
Sandpiper

         カンザス州フラワーズにあるカフェ。ヴァン・ゴッホ・カフェ。かつて劇場

         だった場所にあるためか、このカフェでは魔法が起こります。次々とささ

         やかな魔法が。人々の心を驚かせ、困惑させ、温める魔法が一つ起こっ

         ては消え、また一つ起こっては消えていきます。カフェの若い主人マルク

         と彼の娘クララはわくわくしながら、でも過剰に騒ぎ立てたりせずに魔法

         を見守ります。もしかしたら、この心豊かな二人が魔法を引き起こしてい

         るのかとも思えます。あるとき海から遠く離れたこの内陸の町にカモメが

         一羽やってきて、カフェの屋根に住み着きました。町の黒猫がカモメに恋

         をしてスカーフや帽子やたくさんのアパレルの贈り物をどどけます。この

         ロマンチックな成り行きにマスコミが殺到して、カフェの周りは大騒ぎ。

         やがてカモメの仲間がどんどん増えて、騒ぎはますます大きくなりますが、

         ある日カモメたちはカリフォルニアへ向かうトラックに乗って去っていきま

         した。その代わりのようにやって来たのが、作品が認められず書くのを止

         めようとしている貧しい作家。でも彼もこのカフェの魔法にかかったのか、

         すてきなお話が書けそうな気がしてきます。そして、このカフェの魔法を、

         つまりこのお話を書いて、魔法の環が閉じられることになります。

         

         『ヴァン・ゴッホ・カフェ』は児童小説の多いシンシア・ライラントらしい

         おだやかでささやかな、ちょっとユーモアの効いたすてきなオムニバ

         スのショート・ストーリーです。くつろげるカフェで飲む、心を温めて

         くれる一杯のハーブティーのような。

             
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Les Feuilles mortes -枯葉

2011-11-14 22:18:14 | アート
            

          「...突然気づいた。今日は私の大好きな風の強い、ひんやりした秋の

          日だということに。少女のころ林檎をかじったり、枯葉を蹴って歩いた

          りしたくなった、あんな一日だということに」

        「真珠の耳飾りの少女」で知られる英国の作家トレーシー・シュヴァリエの

        「天使が堕ちるとき」の一節です。生きる希望を失って鬱々としているヒロ

        イン、キティーは、秋のひんやりした空気に突然目覚め、自分の周りの世界

        に気づきます。私の大好きな場面です。秋のピリッとした冷たい空気には、

        人を覚醒させる作用があるような気がします。それと同時に、美しく色づい

        ても、はかなく散りゆく落ち葉は物悲しくもあります。

            

        イブ・モンタンの「枯葉」を聴いていると、泣きたいほど切なくなります。

          「...かき集められる落ち葉は、僕の思い出の苦さに似ているよ」kei訳

        フランス語の歌詞はすばらしく美しい詩です。(英語のもかなりいいけど)

            

        でも苔むした樹の幹の上に散る紅葉や銀杏の葉などは、なんとなく和の

        イメージかも。

          奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿の声聞くときぞ秋はかなしき  猿丸大夫
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アヴェ・マリア

2011-10-31 16:27:30 | アート
Sacred Arias
Charles Gounod,Cesar Franck,Franz Schubert,George Frideric Handel,Gioachino Rossini,Giulio Caccini,Giuseppe Verdi,Myung-Whun Chung,Orchestra Accademia di Santa Cecilia,Andrea Bocelli
Philips
アヴェ・マリア~セイクリッド・ソングス
ラミレス,フランク,マリオッティ(ミケーレ),ヴェロ(パオロ),ボローニャ歌劇場管弦楽団,メッツィーニ(ニコレッタ),ペレグリーノ(ジャンルカ),アヤラ(カルロス),ブレッデルマン(ウルリヒ・シュテファン)
ユニバーサル ミュージック クラシック
         
         毎年12月が近づいてくると、無性にクリスマスソングや聖歌が聴き

         たくなります。そこで毎年その関係のCDをたいてい1枚は買うので、

         三大テノールからBoyzⅡMenから子どものクリスマス・ソングから、ジャ

         ンルに関係なく色々たまっています。去年はアンドレア・ボチエッリ

         のSacred Ariasというのを、今年はこの間、噂のイケメンテノール、

         ファン・ディエゴ・フローレスのSanto-Sacred Songsを手に入れました。

         フローレスはめちゃくちゃハンサム。ミーハーですねえ、わたしも。

         

         どちらにもシューベルトのアヴェ・マリアが入っているので、聴き比

         べて楽しんでいます。フローレスの声は、これはもう艶やかで、若く

         美しい。耳に心地よい魅惑の歌声。その後で聴くと、ボチェッリはち

         ょっと平凡に聞こえます。声がボッテリしているというか。歳もだい

         ぶ上ですからね。好みにもよるでしょう。ボチェッリのたっぷりした

         感じが好きという人もいるかもしれません。けれど面白いものですね、

         同じテノールで同じ歌を歌ってもこんなに印象が違うのは。でもボチ

         ッリのCDには、白百合に象徴される聖母マリアさまを讃えるアヴェ・

         マリアが色々入っています。私の今の一番のお気に入りはカッチー

         ニのアヴェ・マリアです。
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笑いのこころ

2011-10-25 10:03:35 | アート
             

            有楽町の帝国劇場の隣のビル9階の出光美術館から下を眺めると、

            皇居の外苑に入る馬場先門が見えます。この間は麹町の方から半

            蔵門を見下ろしましたが、こちらから見ても、お掘り越しに眺める

            豊かな秋の皇居は落ち着いた美しさです。これが都心の、さらに

            そのど真ん中にあるのは不思議なような、でもとても良い感じ。

                

            出光美術館へ「笑いのこころ」展を観にいきました。大雅、蕪村、

            玉堂、仙涯の四人のユーモアにあふれた絵を集めた、肩の凝ら

            ないしゃれた日本画の美術展で、最終日でもあり、なかなかの

            にぎわいでした。

            これは池大雅の「山邨千馬図」。よく見ると全体が馬で埋めつく

            されています。よくもこれだけ描けたと思わずにいられないもの

            すごい数の馬、馬、馬。馬の表情もそれぞれ違っていたりして、

            感嘆しながらも思わず笑ってしまいます。大雅の絵はどれも風

            格のある見事な山水画でしたが、そのおおらかな雰囲気が心

            を和ませてくれました。どの絵にも、あちこちで楽しそうに遊ん

            だり、笑い転げたりしている唐子がいて、とてもかわいらしく、

            四人の巨匠のうちでは、私には一番しっくりきたかな。

             

            仙涯に至ると、もうこれは、笑わせようとして描いているとしか思

            えません。花見の図なんか、呑んでいる人、踊っている人、寒が

            っている人、ゲロを吐いている人、中には書き損じなんて注がつ

            ついて、黒く塗りつぶされた人もいて、だれも花なんか見てやし

            ない。禅宗の名僧だったそうですね。だから絵は余技だったのでし

            ょうが、あまりに皆から描いてと頼まれるので、とうとう「絶筆の

            碑」という絵を描いたけれど、その後もやっぱり頼まれれば描い

            てあげたそうです。一見おそろしく適当な、今の漫画に通じるよ

            うな、ちょっと西原理恵子の「毎日かあさん」なんかを連想させ

            る絵です。これは六人の老人の絵。仙涯には長寿を言祝ぐのや

            茶化すのや、老人を描いた絵がたくさんありました。百人の老

            人を描いた絵など、もう何が何やら訳のわからない滑稽さです。

            病気がちになり、耳も遠くなり、耄碌し、それでもなお生きてい

            ることを喜ぶ。老いを肯定するその朗らかさに勇気をもらって帰

            ってきました。
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Nachsommer-晩夏

2011-10-23 21:34:41 | アート
晩夏 下 (ちくま文庫)
アーダルベルト・シュティフター,藤村 宏
筑摩書房
晩夏 上 (ちくま文庫)
アーダルベルト・シュティフター,藤村 宏,Adalbert Stifter
筑摩書房
      アーダルベルト・シュティフターの「晩夏」が今も日本で文庫本になっているということは、

      いまだに読む人がいるということでしょうね。ある人物の成長を描くいわゆるドイツの教

      養小説に入る大長編小説です。しかしゲーテの「ヴィルヘルム・マイスター」のように

      悪戦苦闘するわけでもなく、挫折を味わうわけでもなく、主人公はきわめて順調に成長

      して、自然科学者として大成します。時代の嵐に揉まれることも、劇的な出来事が起こ

      ることもありません。この本は日本でも何故生き残っているのでしょう?同時代の劇作
 
      家ヘッベルは「これを読み通したらポーランドの王冠を進呈しよう」と言ったそうです。

      ほんとに何も起こらなくて退屈なんです。でもねニーチェはこれは歴史に残る大傑作だと

      思ったらしい。主人公のお父さんは言います。「人間はまず人間社会のためにあるので

      はなくて、自分自身のためにあるのだ」と。こんなことを言ってくれるお父さんが世の中

      に何人いるでしょうね!裕福な主人公は心の赴くままに様々な研究をして、自然科学者に

     なります。そして薔薇が家全体を覆っている田舎家に魅せられ、そこで運命的な出会いを

     します。そのような細々とした出来事が、あくまでも落ち着いた静かな筆致で描かれています。

     KINOKUNIYA書評空間の津田さんはこの本をジェーン・オースティンよりさらに「偉大な退

     屈読本」と評しています。読んでいるときはとても退屈だったのに、いつもいつも思い出す

     小説だと。今まだ30ページ目、さて私は最後まで読み切れるでしょうか?

            
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