☆母親が暇そうだったので、一緒に観に行ったのだが、70歳近い母親なれど、かなり夢中で観ていました。
私も、「こりゃ、傑作だなあ^^」などと思いつつ、興味深く見た。
この作品の魅力は何なんだろう?
先ずは、ヨハネスブルグと言う、作り手の通(つう)な選択による都市上空に浮いている、巨大UFOのビジュアルイメージがいい。
古くは『幼年期の終わり』、最近では、『インディペンデンス・デイ』に登場したもののような、超巨大な未知の物体のイメージだ。
それも、工業的と言うか、貨物的なデザインであるのが斬新。
そして、その、浮くことは出来ているけれど移動が困難になったUFOの中から、人類によって地上に下ろされた数十万人の異星人の造型・・・、
地球人が見ると、生理的に受けつけないような「エビ」的な姿なのだが、物語がはじまってすぐに、惜しげもなく、その容姿が拝める。
しかも、その生態は、「宇宙難民」であり、やや野蛮でありつつも、地球人の貧民層と変わらない暇の持て余しかたなどをしている。
フラフラしていて、ゴミの山を漁って、食える物は食うし、着れる物は身につけるのである。
なんて言うか、その地球社会へスッポリとはまっている姿が、異形な者であるが故に、『ドラえもん』や『オバケのQ太郎』風の藤子不二雄のような世界を形成しているのだ。
物語の展開はドキュメントタッチで、ヨハネスブルグのスラムの風景をリアルに捉え、そこでの人権派の運動や、ギャングの暴力、軍や政府の横暴を淡々と描いていく。
日本人が想像しやすいイメージとしては、フィリピンのゴミの山を巡る人間模様のようだ。
その映像の背景には、エビ星人の異形があり、普通に歩いてたりして、やや荒んだ生活をいとなんでいるのである。
あまりにも、丁寧に世界が描かれているので、私は文芸ドラマでも見ているかのような退屈ささえ、途中で感じるほどだった。
◇
エビ星人の難民キャンプが、あまりにも周囲との軋轢を生むので、エビ星人170万人を、他の土地に移動させようとするのが、超国家機関MNUの立ち退き依頼責任者のヴィカスの仕事だ。
一個小隊の警護のもと、ヴィカスは、一軒一軒、エビ星人の小屋を回り、移住許諾の書類にサインを貰っていこうとする。
まあ、もうすぐ南アフリカもワールドカップだし、エビ星人は、オリンピックのときの、北京での物乞いの方々や、シドニーでのアボリジニのように立ち退きを迫られるわけだ^^;
そこでは、一軒ごとに、ひと悶着が起こり、エビ星人の、危険さと無邪気さと言う「人間臭さ」が描かれる。
・・・で、とある事件が起こり、人類の代表として活躍していたヴィカスが、人類の敵となってしまい、その逃避行で、更に、このエビ星人がいる世界の構造があからさまになっていくのである。
ヴィカスは終いには、エビ星人の一人とコンビを組む。
この2人での活躍など、バディムービーである。
また、そのエビ星人・クリストファー(だったっけ?)は、エビ星人の中でもインテリで、なんか妙に老成した優しさみたいのが感じられ、エビの外見でありながら、私など、妙に愛着を感じるのだった。
その息子との関係も温かい。
そして、後半は、徹底的なアクション映画である。
今年のアカデミー賞の有力候補であった『アバター』が作品賞を取れなかったのは、この作品と票が割れ、傾向の違う『ハートロッカー』に票が片寄ったからであろう。
さりとて、やや、エンターテイメント寄りの『第9地区』のアクションだが、そこには、『ハートロッカー』的なクールな視点も内包されており、リアリティが厳然とあるし、
エビ星人の兵器のギミックには、「トランスフォーマー」的な面白さもある。
何と言おうか、宇宙的なSF作品でありつつも、ヨハネスブルグと言う一都市を丹念に描いたが故に、そのテーマ的な懐の深さが非常に広がったと言う稀有な作品である。
例えば、クリストファーが操作する司令船のディスプレイの「科学の文法」一つ考えても、そこには異星人の文明が垣間見られるようではないか?
◇
また、『マッドマックス2』以来、久し振りに、キャットフードを食べる主人公を見れたのも嬉しかったし、
エビ星人の好物の「猫缶」を介した物々交換も面白いし、エビ星人相手に地球人の行なう「猫缶詐欺」と言うものがあるのも面白かった。
それがリアルに感じられる世界観の構築に感心した。
ただ、不思議と宗教性は薄かったね。
(2010/04/11)
私も、「こりゃ、傑作だなあ^^」などと思いつつ、興味深く見た。
この作品の魅力は何なんだろう?
先ずは、ヨハネスブルグと言う、作り手の通(つう)な選択による都市上空に浮いている、巨大UFOのビジュアルイメージがいい。
古くは『幼年期の終わり』、最近では、『インディペンデンス・デイ』に登場したもののような、超巨大な未知の物体のイメージだ。
それも、工業的と言うか、貨物的なデザインであるのが斬新。
そして、その、浮くことは出来ているけれど移動が困難になったUFOの中から、人類によって地上に下ろされた数十万人の異星人の造型・・・、
地球人が見ると、生理的に受けつけないような「エビ」的な姿なのだが、物語がはじまってすぐに、惜しげもなく、その容姿が拝める。
しかも、その生態は、「宇宙難民」であり、やや野蛮でありつつも、地球人の貧民層と変わらない暇の持て余しかたなどをしている。
フラフラしていて、ゴミの山を漁って、食える物は食うし、着れる物は身につけるのである。
なんて言うか、その地球社会へスッポリとはまっている姿が、異形な者であるが故に、『ドラえもん』や『オバケのQ太郎』風の藤子不二雄のような世界を形成しているのだ。
物語の展開はドキュメントタッチで、ヨハネスブルグのスラムの風景をリアルに捉え、そこでの人権派の運動や、ギャングの暴力、軍や政府の横暴を淡々と描いていく。
日本人が想像しやすいイメージとしては、フィリピンのゴミの山を巡る人間模様のようだ。
その映像の背景には、エビ星人の異形があり、普通に歩いてたりして、やや荒んだ生活をいとなんでいるのである。
あまりにも、丁寧に世界が描かれているので、私は文芸ドラマでも見ているかのような退屈ささえ、途中で感じるほどだった。
◇
エビ星人の難民キャンプが、あまりにも周囲との軋轢を生むので、エビ星人170万人を、他の土地に移動させようとするのが、超国家機関MNUの立ち退き依頼責任者のヴィカスの仕事だ。
一個小隊の警護のもと、ヴィカスは、一軒一軒、エビ星人の小屋を回り、移住許諾の書類にサインを貰っていこうとする。
まあ、もうすぐ南アフリカもワールドカップだし、エビ星人は、オリンピックのときの、北京での物乞いの方々や、シドニーでのアボリジニのように立ち退きを迫られるわけだ^^;
そこでは、一軒ごとに、ひと悶着が起こり、エビ星人の、危険さと無邪気さと言う「人間臭さ」が描かれる。
・・・で、とある事件が起こり、人類の代表として活躍していたヴィカスが、人類の敵となってしまい、その逃避行で、更に、このエビ星人がいる世界の構造があからさまになっていくのである。
ヴィカスは終いには、エビ星人の一人とコンビを組む。
この2人での活躍など、バディムービーである。
また、そのエビ星人・クリストファー(だったっけ?)は、エビ星人の中でもインテリで、なんか妙に老成した優しさみたいのが感じられ、エビの外見でありながら、私など、妙に愛着を感じるのだった。
その息子との関係も温かい。
そして、後半は、徹底的なアクション映画である。
今年のアカデミー賞の有力候補であった『アバター』が作品賞を取れなかったのは、この作品と票が割れ、傾向の違う『ハートロッカー』に票が片寄ったからであろう。
さりとて、やや、エンターテイメント寄りの『第9地区』のアクションだが、そこには、『ハートロッカー』的なクールな視点も内包されており、リアリティが厳然とあるし、
エビ星人の兵器のギミックには、「トランスフォーマー」的な面白さもある。
何と言おうか、宇宙的なSF作品でありつつも、ヨハネスブルグと言う一都市を丹念に描いたが故に、そのテーマ的な懐の深さが非常に広がったと言う稀有な作品である。
例えば、クリストファーが操作する司令船のディスプレイの「科学の文法」一つ考えても、そこには異星人の文明が垣間見られるようではないか?
◇
また、『マッドマックス2』以来、久し振りに、キャットフードを食べる主人公を見れたのも嬉しかったし、
エビ星人の好物の「猫缶」を介した物々交換も面白いし、エビ星人相手に地球人の行なう「猫缶詐欺」と言うものがあるのも面白かった。
それがリアルに感じられる世界観の構築に感心した。
ただ、不思議と宗教性は薄かったね。
(2010/04/11)