今日は、先日見た映画の感想を。
『シークレット・オブ・モンスター』。
ジャン=ポール・サルトルの短編『一指導者の幼年時代』を基に、ナチスを連想させる架空の独裁者の子供時代を描いた作品。
天使のように美しい子供が、後に、独裁者へと成長する。
何が少年を狂気に導いたのか・・・というストーリー。
■映画『シークレット・オブ・モンスター』予告編
第一次世界大戦が終わった直後・・・。
ヴェルサイユ条約締結前の1918年。
あるアメリカ政府高官が、その家族と共に、パリにやってきます。
彼には、深い教養と信仰心を持った妻と、女の子のように美しい幼い息子が居ました。
しかし、その、美しい息子は、教会に訪れた人に向かって石を投げるなど、奇行を繰り返し、周りを困惑させ、振り回すようになっていきます。
そんな息子に対し、厳しく躾けようとする両親ですが、息子の心は頑なで、叱れば叱るほど、反抗的になっていき、やがて。。。。
というのがあらすじ。
予告編からは、サイコパスっぽい美少年が、とても怖いことをしそうな、サスペンスやミステリーをイメージしてしまうのですが。
実は、人間ドラマです。
別段、何か大きな事件とか、怖い現象とか、残虐な出来事があるわけではありません。
ただ、パリを舞台に、淡々とアメリカ政府高官の家族の日々が描かれています。
ですが!!
別段、何か怖いことがある訳でもないのに、ずーっと怖かったです。
不安感を煽る独特なオーケストラの効果も勿論ですが、ずっと、何かとてつもないことが起こりそうな、一触即発な危険を孕んだ空気が凄く怖かった・・・!
そして、最後の最後まで見た時・・・。
あっ!と驚く衝撃があり、なるほど、予告でいってた「パズル」というのはこのことか~と感動。
評価は色々別れているみたいですが、私は、凄く面白かったと思います。
ストーリーは、序章、第一章、第二章、第三章・・・という構成で、本当に何事もなく淡々と進んでいきます。
けれども、その中で、「第一の癇癪」とか「第二の癇癪」とす、少しずつ、主人公の少年の反抗具合が高まっていくのが描かれて行くのですよね。
第一次大戦終戦直後という時代。
アメリカ政府高官の父親。
教養深い母親。
優しくて美しい家庭教師。
天使のように美しい容姿。
あの暗い時代、他の一般的な子供達に比べると、一見、ずっと恵まれた環境にいるように思える主人公の少年ですが。
彼は、いつも何かに対して不満そうで、とても不機嫌。
不気味な音楽や映像効果も相まって、「いつか何かしでかしそう」という危険を孕んでいるように見えました。
でもでも。
映画を見ていくと、幼い彼が、なぜそんなに不服そうにしているのか・・・それはよく分かります。
まずは、幼い子供にとって、慣れしたんだ母国を離れ、異国で暮らすということは、とてもストレスだと思います。
ましてや、フランス語を学ぶことを強制され、なかなか思うように上達しない。
そして、仕事人間で、子供に関しては母親に丸投げな父親。
母親は、教養がある分、息子にも勉強を無理強いし、また、深過ぎる信仰心をも息子に押し付けている。
憧れの存在であった、若くて美しく優しい家庭教師は、父親と不道徳な関係にありそう。そしてそれを母親も感づいていそうな危い雰囲気。
自分がワガママを言って罰を受けても、唯一、味方してくれた年配のメイドは、母親の機嫌を損ね、クビにされる。
物語が進むにつれ、彼が、日々の生活の中でどんどんストレスをため込んでいってモンスター化していくのが分かりました。
その過程が、何がある訳でもないのに、じわりじわりと恐怖感を煽っていくのです。
映画冒頭、クリスマス劇の練習シーンで、主人公は天使の格好をしています。
真っ白な衣装に、背中には大きな羽。
愛らしい容姿も相まって、本当に天使のようなのですが・・・。
けれども、そんな彼は、教会に来た人々に、石を投げつけるといういたずらをします。
そして、母親と一緒に謝罪に行く時の、真っ黒な服。
この白と黒が、とても対照的に感じました。
最初の天使の姿から、もしかしたら、彼も、初めはちょっと現在の環境に慣れず不機嫌になってるただのイタズラっ子だっただけかもしれない。その後の周りの人間の対応次第では、ごく普通の子供に成長していたのではないかなぁと思えてなりませんでした。
けれども、その後。
母親の命令で、教会に訪れた人、ひとりひとり全員に、「石を投げてごめんなさい」と謝り続け、まるで晒し者のようになっていた彼。
もちろん、悪いことは悪いし、悪いことをしたらきちんと謝らないといけないというのも正しいです。
でも、あの母親は、何が悪かったのかなど、きちんと子供に説明することなく、ただ頭ごなしに叱り、そして罰を与える。
自分の子供が、不満そうに不機嫌にしているのに、向き合おうともせず、躾と称して罰だけを与え続けていく。
そして。
ある出来事が原因で、彼の唯一の味方だったメイドも、クビにする。
それも、「辞めさせないで!」と、どんなに懇願しても、「私を怒られたからクビよ」と聞く耳すら持たない。
・・・考えてみたら、この母親の行動って、とても独裁者みたいなのですよね。
まだ、幼くて、家庭の中では、何の力も持たない少年にとって、母親は、物凄い独裁者に見えたのではないでしょうか?
そして、そんな母親から与えられ続けた理不尽なストレスが、将来、彼を独裁者にしてしまったのではないかなぁと思いました。
終盤のシーンで、「祈りなんて信じない!」って叫び続ける少年の姿は、狂気というより、とても痛々しかったです。
ストーリー全体を通して、少年を中心とした、少し歪んだ家族関係が描かれ続けるのですが、最終章では、唐突に、ナチスを彷彿とさせる国家と大人になり独裁者として君臨する主人公が描かれてます。
それは、本当に唐突感があるのですが。
このラストシーンで、これまでずっと「???」っと思ってきた、あの家族の歪みの謎が明らかになって。
一番ビックリしたシーンでもありました。
予告編で「このパズルが解けるか?」と言っていた意味が分かったというか。
以下、ネタバレですが。。。。
そう。
この映画のポスターにもなっている家族写真のようなキービジュアル。
主人公に、両親に、そして、両親の友人であるチャールズ。職業は作家でしたっけ??
なぜ、家族の中に、他人が混じっているのか?
そして、終章のタイトルに出て来た「私生児・プレスコット」という表記。
なぜ、主人公の少年が、私生児なの?
って、「???」
だったのですが。
大人になった主人公を演じていたのは、両親の友人・チャールズを演じていたロバート・パティンソン!!
つまり、主人公は、夫妻の子供では無くて、母親が不倫をして授かった子だったのですね・・・。
それが分かると、これまで謎に想ってきた数々の演出が、「ああ、なるほど!」って納得がいき。
そして、怖かったです。
幼い彼はどこまで知っていたのでしょう?
あの、ストレスにまみれた日々の中で、いつ、真実を知ったのか?
その事実が、より彼を歪め、独裁者への道を進ませたのではないかな?と。
ラストで真実が分かった時は、ゾッとしましたです。
決して、何か派手なエピソードがある訳では無いですし、ラストシーンへの展開はあまりにも唐突ですが、でも、だからこその怖さがあって、面白かったと思います。
私は、かなりツボった作品です。
『シークレット・オブ・モンスター』。
ジャン=ポール・サルトルの短編『一指導者の幼年時代』を基に、ナチスを連想させる架空の独裁者の子供時代を描いた作品。
天使のように美しい子供が、後に、独裁者へと成長する。
何が少年を狂気に導いたのか・・・というストーリー。
■映画『シークレット・オブ・モンスター』予告編
第一次世界大戦が終わった直後・・・。
ヴェルサイユ条約締結前の1918年。
あるアメリカ政府高官が、その家族と共に、パリにやってきます。
彼には、深い教養と信仰心を持った妻と、女の子のように美しい幼い息子が居ました。
しかし、その、美しい息子は、教会に訪れた人に向かって石を投げるなど、奇行を繰り返し、周りを困惑させ、振り回すようになっていきます。
そんな息子に対し、厳しく躾けようとする両親ですが、息子の心は頑なで、叱れば叱るほど、反抗的になっていき、やがて。。。。
というのがあらすじ。
予告編からは、サイコパスっぽい美少年が、とても怖いことをしそうな、サスペンスやミステリーをイメージしてしまうのですが。
実は、人間ドラマです。
別段、何か大きな事件とか、怖い現象とか、残虐な出来事があるわけではありません。
ただ、パリを舞台に、淡々とアメリカ政府高官の家族の日々が描かれています。
ですが!!
別段、何か怖いことがある訳でもないのに、ずーっと怖かったです。
不安感を煽る独特なオーケストラの効果も勿論ですが、ずっと、何かとてつもないことが起こりそうな、一触即発な危険を孕んだ空気が凄く怖かった・・・!
そして、最後の最後まで見た時・・・。
あっ!と驚く衝撃があり、なるほど、予告でいってた「パズル」というのはこのことか~と感動。
評価は色々別れているみたいですが、私は、凄く面白かったと思います。
ストーリーは、序章、第一章、第二章、第三章・・・という構成で、本当に何事もなく淡々と進んでいきます。
けれども、その中で、「第一の癇癪」とか「第二の癇癪」とす、少しずつ、主人公の少年の反抗具合が高まっていくのが描かれて行くのですよね。
第一次大戦終戦直後という時代。
アメリカ政府高官の父親。
教養深い母親。
優しくて美しい家庭教師。
天使のように美しい容姿。
あの暗い時代、他の一般的な子供達に比べると、一見、ずっと恵まれた環境にいるように思える主人公の少年ですが。
彼は、いつも何かに対して不満そうで、とても不機嫌。
不気味な音楽や映像効果も相まって、「いつか何かしでかしそう」という危険を孕んでいるように見えました。
でもでも。
映画を見ていくと、幼い彼が、なぜそんなに不服そうにしているのか・・・それはよく分かります。
まずは、幼い子供にとって、慣れしたんだ母国を離れ、異国で暮らすということは、とてもストレスだと思います。
ましてや、フランス語を学ぶことを強制され、なかなか思うように上達しない。
そして、仕事人間で、子供に関しては母親に丸投げな父親。
母親は、教養がある分、息子にも勉強を無理強いし、また、深過ぎる信仰心をも息子に押し付けている。
憧れの存在であった、若くて美しく優しい家庭教師は、父親と不道徳な関係にありそう。そしてそれを母親も感づいていそうな危い雰囲気。
自分がワガママを言って罰を受けても、唯一、味方してくれた年配のメイドは、母親の機嫌を損ね、クビにされる。
物語が進むにつれ、彼が、日々の生活の中でどんどんストレスをため込んでいってモンスター化していくのが分かりました。
その過程が、何がある訳でもないのに、じわりじわりと恐怖感を煽っていくのです。
映画冒頭、クリスマス劇の練習シーンで、主人公は天使の格好をしています。
真っ白な衣装に、背中には大きな羽。
愛らしい容姿も相まって、本当に天使のようなのですが・・・。
けれども、そんな彼は、教会に来た人々に、石を投げつけるといういたずらをします。
そして、母親と一緒に謝罪に行く時の、真っ黒な服。
この白と黒が、とても対照的に感じました。
最初の天使の姿から、もしかしたら、彼も、初めはちょっと現在の環境に慣れず不機嫌になってるただのイタズラっ子だっただけかもしれない。その後の周りの人間の対応次第では、ごく普通の子供に成長していたのではないかなぁと思えてなりませんでした。
けれども、その後。
母親の命令で、教会に訪れた人、ひとりひとり全員に、「石を投げてごめんなさい」と謝り続け、まるで晒し者のようになっていた彼。
もちろん、悪いことは悪いし、悪いことをしたらきちんと謝らないといけないというのも正しいです。
でも、あの母親は、何が悪かったのかなど、きちんと子供に説明することなく、ただ頭ごなしに叱り、そして罰を与える。
自分の子供が、不満そうに不機嫌にしているのに、向き合おうともせず、躾と称して罰だけを与え続けていく。
そして。
ある出来事が原因で、彼の唯一の味方だったメイドも、クビにする。
それも、「辞めさせないで!」と、どんなに懇願しても、「私を怒られたからクビよ」と聞く耳すら持たない。
・・・考えてみたら、この母親の行動って、とても独裁者みたいなのですよね。
まだ、幼くて、家庭の中では、何の力も持たない少年にとって、母親は、物凄い独裁者に見えたのではないでしょうか?
そして、そんな母親から与えられ続けた理不尽なストレスが、将来、彼を独裁者にしてしまったのではないかなぁと思いました。
終盤のシーンで、「祈りなんて信じない!」って叫び続ける少年の姿は、狂気というより、とても痛々しかったです。
ストーリー全体を通して、少年を中心とした、少し歪んだ家族関係が描かれ続けるのですが、最終章では、唐突に、ナチスを彷彿とさせる国家と大人になり独裁者として君臨する主人公が描かれてます。
それは、本当に唐突感があるのですが。
このラストシーンで、これまでずっと「???」っと思ってきた、あの家族の歪みの謎が明らかになって。
一番ビックリしたシーンでもありました。
予告編で「このパズルが解けるか?」と言っていた意味が分かったというか。
以下、ネタバレですが。。。。
そう。
この映画のポスターにもなっている家族写真のようなキービジュアル。
主人公に、両親に、そして、両親の友人であるチャールズ。職業は作家でしたっけ??
なぜ、家族の中に、他人が混じっているのか?
そして、終章のタイトルに出て来た「私生児・プレスコット」という表記。
なぜ、主人公の少年が、私生児なの?
って、「???」
だったのですが。
大人になった主人公を演じていたのは、両親の友人・チャールズを演じていたロバート・パティンソン!!
つまり、主人公は、夫妻の子供では無くて、母親が不倫をして授かった子だったのですね・・・。
それが分かると、これまで謎に想ってきた数々の演出が、「ああ、なるほど!」って納得がいき。
そして、怖かったです。
幼い彼はどこまで知っていたのでしょう?
あの、ストレスにまみれた日々の中で、いつ、真実を知ったのか?
その事実が、より彼を歪め、独裁者への道を進ませたのではないかな?と。
ラストで真実が分かった時は、ゾッとしましたです。
決して、何か派手なエピソードがある訳では無いですし、ラストシーンへの展開はあまりにも唐突ですが、でも、だからこその怖さがあって、面白かったと思います。
私は、かなりツボった作品です。