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映画『ミッシング』

2024年06月08日 | 映画鑑賞記
今日は、一昨日鑑賞した映画『ミッシング』の感想を。


とても重く、苦しく、生々しい作品でした。

行方不明になった子ども、その家族の慟哭、それを視聴率やネタとして扱おうとする報道、好き勝手に臆測・誹謗中傷するネット世界、簡単に風化していく世間の関心。
観ている側の心も、最後まで出口のない真っ暗なトンネルの中を歩き続けているかのような救いの無さを感じました。
どんな小さな情報、どんな小さな力にでも頼りたいのに、心無い悪戯に翻弄されたり、事実無根のことをネットに書かれて叩かれたり。
もう地獄の日々です。

しかし、そんな何の救いもない真っ暗な中、時間の経過とともに、僅かに光も差し込んできます。

母親である沙織里が通学の見守りボランティアを始めたこと、断絶していた弟と和解の兆しが見えてきたこと、また、2年という年月を経ても協力者や理解者の輪が広がっていること。
そして、他の子どもが行方不明になってしまった事件において、その子どもが無事に保護されたニュースを見て、心から喜び涙を流せるようになったことも、彼女の大きな変化に感じました。
映画の冒頭の頃の彼女だったら、「なぜ他所の子は無事に保護されて、ウチの子は帰ってこないの!?」ってヒステリー起こしててもおかしくない精神状態だったと思います。
また、彼女達家族を誹謗中傷した相手に対して訴訟を起こせたことも、大きな一歩となったのではないでしょうか?
これらの変化を光と呼んで良いのかは分かりませんが、彼女達の時間は、確かに少しずつ動き出していました。
けれども娘の美羽が帰ってこない事実は変わらず、そこだけは永遠に時間が止まったままというのが、とにかく見ていて辛かったです。 
石原さとみさんの演技、圧巻でした。

そして、この事件を追う地方テレビ局も興味深い存在であります。
私自身、地方のテレビ局で働いていた経験があるので、テレビ局のシーン、取材や報道の仕方、言葉の選び方などなどについても考えさせられました。
報道するのに「欲しい画(え)」があるのも事実であり。
報道の仕方、切り込み方もある。
必ずしも自分の一存で番組を作れる訳ではないのですよね。。。そのあたりに関して、中村倫也さん演じる記者の誠実さや葛藤、とても共感出来ました。

映画というより、ドキュメンタリーを見ているようで、全ての役者さんの演技が鬼気迫ってて圧倒されます。
ミステリーではないので、行方不明事件に解決は見られません。
何の進展もないまま、物語は結末を迎えます。
それが余計にモヤモヤとさせるのですが、でも、実際に、現実でもこういう事件や事故は起こっている訳で…なんとも言えない後味の映画でした。


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