緑陰茶話   - みどりさんのシニアライフ -

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母の刺繍

2015年12月06日 | 思い出
いつもコメントをくださる晴れ後曇り・・さんが、家の写真の背景の刺繍の衝立が気になるみたいなので、全面的に公開します。


刺繍は母が刺したものですが、表装というのか、衝立に仕立てたのは専門のお店です。木は桜材だと聞いています。

母は一時期、刺繍に凝っていて、座布団カバーから鏡台カバー、掛け軸やら着物の帯まで刺繍で作っていました。

掛け軸も帯も仕立てる時は専門のお店に頼んでました。

ずいぶん昔のことなので、残っているものは少ないです。
母が亡くなった時、母の友人・知人に差し上げてしまったものもあります。

これは下駄箱の上に敷くもの。今はニャンコが汚すのでしまっています。
近づいて見るとこんなです。



フランス刺繍の多彩なテクニックが使われています。

絵柄自体は母が考えたものではないです。先生の指示で作っていました。
そこが母の限界だったみたいです。

刺繍を見ると、母は何をするにもとても丁寧で、緻密な、家庭的・女性的な人のように思われるかもしれませんが、実際はそうではありませんでした。

どんな人だったかというと、まな板に茸を生やした人です。
まな板でも何でも、ちゃんと洗わないし、汚れたまま放置しているから腐ってそうなるのです。
私がそのまな板を捨てるように何度言っても母はそのまな板を使い続けていました。(茸を生やしたまま!)

私の母に関しては、一事が万事それで、ザツと言おうか、いい加減と言おうか、手抜きできるだけ手抜きする人で、聞けば「うっそーっ!」と言ってのけ反られるエピソードが山ほどあります。

今となったら笑い話ですが、一緒に暮らしていた頃はストレスで、私は休日で家にいると過敏性腸症候群で激しい腹痛から下痢になったくらいです。(茸のせいで下痢になったのではないです!)
心療内科の医師には、過敏性腸症候群の人は学校とか会社とか、家の外でそうなるのに、あなたは休日で家にいるとそうなる、とても珍しいといわれました。

皮肉なことに、ある日、母が倒れて目が見えなくなり、大腿骨骨折で動くのも不自由になると、私の過敏性腸症候群もピタリと治りました。
家の中のことはすべて私が仕切るようになったからです。

介護は10年近く続きましたが、できる限りのことはしたので、私としては後悔はありません。

母の性格をある程度知っていた母の友人・知人の方々は、形見に母が刺繍したものを差し上げた時、とても驚いていました。
刺繍は、母の思いもよらない一面だったのです。