この前、朝の番組の「めざまし8」を、途中からだけど見ていたらアニメの「ハイキュウ」と著作権法についての話題だった。
要は「ハイキュウ」というバレーボールを扱ったスポーツアニメがあり、それが国内外で大人気なのです。
それで漫画の舞台とされる軽米町に注目が集まり、「ハイキュウ」の聖地として国内外からファンが訪れているらしい。
軽米町の方も地域おこしの起爆剤として活用しようとしていたのですが、漫画を出版する集英社やアニメの映画を配給する東宝などから「著作権侵害の恐れがある」と指摘されたとのこと。
この話で見てて良く分からなかったのは集英社や東宝がどの程度、軽米町での「ハイキュウ」の活用を嫌がっていたかということでした。そもそも全く嫌がっていなかった可能性もあります。
というのも、国内外のファンが盛り上がって聖地巡礼までしてくれるのは集英社や東宝にとってもありがたい筈で、ファンに対しても軽米町には行くなとは言えないからです。
本当に嫌なら軽米町での積極的な活用をはっきりと断るか、あるいは町にロイヤリティーを支払ってもらえば良いのです。
わたしがこの話を取り上げたのは「ハイキュウ」のファンだからではなく、同じような話を最近たて続けに聞いているからです。
最初に意識したのは日本の女性ダンスグループのアバンギャルディがアメリカの人気オーディション番組「アメリカズ・ゴッド・タレント」の決勝で、当初予定されていた曲が著作権の関係で踊れず、決勝の日の4、5日前くらいに別の曲で踊らなければならなくなったことです。
そのことが影響したのかどうかは分かりませんが、アバンギャルディは決勝戦では敗退しました。
私はその時の動画のコメント欄で、アメリカ人らしい人が書いていたことが気になったのです。
その人は、アバンギャルディが当初予定していた曲で踊れなかったことで日本の著作権法について書いていたのですが、その人自身の経験として、とにかく日本の著作権は無茶苦茶厳しく、たとえお金を支払うといっても自分が使いたい曲を使用することができなかったと書いていたのでした。
知っている人は知っているのですが、アバンギャルディは予選では岩崎宏美の「シンデレラ・ハネムーン」で踊り、物凄く話題になりました。
話題になったのは彼女達のダンスだけでなく、原曲の1.14倍のスピードで使った「シンデレラ・ハネムーン」も話題となりました。
結果、ビクター・エンタテインメントはスピードアップバージョンとして「シンデレラ・ハネムーン」を配信リリースしています。
つまり「アメリカズ・ゴッド・タレント」でのダンスの楽曲として使われたことによって、曲や歌手の知名度も国際的に上がり、ビクター・エンタテインメントは新たに売り出して儲けているのです。
アバンギャルディのその実績を考えれば、当初予定した楽曲の著作権者がそこで楽曲を使ってほしくないというのはちょっと不思議なのです。
もちろん、よほど金銭的に吹っ掛けたか、アーティストとしてのこだわりからアバンギャルディに使ってほしくなかった可能性もあります・・。
冒頭の「めざまし8」でも、番組内で語られていたのは日本の著作権法の他国に比べても異様なまでの厳しさでした。
たとえばの話、私がトトロのキャラ弁を作ってこのブログでアップしたら、違法なんだそうです。
つまりスタジオジブリから訴えられる可能性があるということです。(現実には考えられませんが・・・)
もちろん私がキャラ弁をこのブログでアップしても私の収益にはなりません。
でも、使用者が営利目的ではないことは関係ないみたいです。
許可なくジブリのキャラクターを不特定多数の人が観られる環境で使ったということが問題にされるみたいです。(何がダメなのか分かるようで分かりませんが)
だから、仮に私がどれだけトトロが好きで、キャラ弁作って、それ見せてイイネもらって、トトロ好きな人達と一緒に盛り上がりたくても、それはできないわけです。
日本以外の諸外国の場合、私は厳しいと思っていたのですがそうでもなく、むしろビジネスチャンスを作り出せるよう緩やかなのだそうです。
技術革新が著しい中、規制ばかりを強くすると、現実に諸外国との競争に負けてしまうからです。
最近も、アメリカだったか忘れましたがフィギュアスケートで楽曲を使ったとして訴訟があったとのことですが、和解し、同時に訴訟などが起こらないように制度的にも使いやすくしたらしいです。
ちなみにフィギュアスケートに関しては、元フィギュアスケーターで、氷上の哲学者と言われていた町田樹さんが、著作権について、とてもよく纏められた研究をされてます。
私はなぜ町田樹さんが氷上の哲学者と呼ばれていたのか、彼が現役時代には分からなかったのですが、研究者として活動を始めた彼を見るとよく分かりました。
話を戻すと、実は私が一番ショックを受けたのは「ハイキュウ」でもなければアバンギャルディでもなく、男子新体操の応援サイトであるOuenMRGさんが今までYouTube上で上げていた男子新体操の演技動画をすべて削除してしまったことでした。
理由は、演技で使用されている楽曲の著作権上の問題があることが分かったからだそうです。
OuenMRGさんはもちろん、演技している学校やら個人の許可を得て配信していました。
問題はそこで使われている楽曲の著作権のようでした。(ですから楽曲を使っていない動画は残している)
通常、男子新体操は高校や大学のクラブ活動なので、演技する楽曲の許可は学校が得ていて、それは問題はないみたいです。
ところが演技動画の配信はYouTube上では問題はないそうですが、楽曲の著作権法上で違法になってしまうみたいなのです。
男子新体操の動画を配信しているサイトは他にも幾つかあるのですが、OuenMRGさんがダメなら他もすべてダメなんじゃないかと思います。
OKなのは国士舘大学がやっているように男子新体操部自体が動画の配信を行うことです。
X(旧Twitter)で読む限り、今後はそうしていくしかないみたいな話しぶりです。
でもこれ、高校や大学の部がやるにはあまりに負担が大きいものです。
そしてそれは今後の問題なのですが、過去の、OuenMRGさんのサイトが提供していた演技動画が見られなくなったことも大問題なのです。
というのも、男子新体操のファンというのは国内外にいるのですが、OuenMRGさんのようなサイトで男子新体操を観てそのスポーツを知り、ファンになった人も多くいるからです。
私もそうなのですが、YouTubeのお勧めで男子新体操の演技を観てファンになった人達がたくさんいます。
YouTubeから動画が消えれば、当然、新たなファンも生まれにくくなります。
そういう人達にとっては過去に感銘を受けた演技動画が見られなくなったのです。
それは他人事ではなく、私にとっても、青森大学のあの演技、名取高校のあの演技、井原高校の・・と、幾つもの演技がもう二度と見られなくなったのです。
そして町田さんの考えでは、それはファンだけでなく競技者にとっても深刻な事態のようです。
というのも、振付を考える人も含めて競技者もまた過去の演技から学んで自分の演技を組み立てるからです。
町田さんはそれを「巨人の肩の上に乗る」という学問に使われる言葉を使って、研究だけでなく演技を作るような他の創造的営為も同じと語っています。以下、引用。
研究者にとって「巨人の肩の上に乗る」という言葉は金科玉条なのですが、先人たちが積み重ねてきたものを全部踏まえてその上に自分の新たな知見を積み重ねる、先人たちの知識をたどり、だからこそ新しいものが見えてくる、という考えです。
まだやられていない何かをオリジナリティとして少し加える。本能だけで創る人は別ですけど、基本的にアーティストはいろんな音楽を聴いて、従来の作品の内容や傾向などを総合的に理解した上で、どのようなことがオリジナリティにつながるのかを考えながら、音楽市場に対して作品を投入していくのではないでしょうか。その営みは、まさに研究者的なところがあって、そこはバチッと同じだと感じます。私は振付家でもありますが、振付家と研究者は全く別のアイデンティティなのかというと、そうではなく、むしろ全く同じことやっていると思っています。
誰もが過去の作品にアクセスできるアーカイブ、あるいは過去の作品をきちんと(適切かつ現実的な許諾料で)著作権処理し二次利用できる環境が、次世代のより良い作品を生み出すためのインフラになる、と私は考えています。
町田さんが語っているのは主にフィギュアスケートの場合なのですが、男子新体操の場合はさらに深刻になります。
というのも、フィギュアスケートの場合ならば、その演技はNHKなり民放なりで一度は放映され、視聴者はそれを観ることができ、映像も残っています。
ですが、男子新体操の場合はテレビ局が撮影することはまず無いのです。
撮影は競技会を主催した体操協会か、競技会に参加した各学校の男子新体操部か、OuenMRGのようなサイトだけです。
つまり過去の演技を知るには大半がYouTube頼みだったのです。
YouTubeでアップしてはいけないというのなら、どうやって第三者が過去のそうした大会の演技を観ることができるのでしょうか。
YouTubeで見られないのなら、今から男子新体操に取り組む若い人達は、過去の演技を知るという「巨人の肩の上に乗る」こともできないのです。
さらにここでも「ハイキュウ」やアバンギャルディの時と同じことが言えるのです。
というのも、YouTubeの動画に付いたコメントを読んでいると、男子新体操を観て、使われている楽曲に興味を持ち、曲の名前を聞く人達がたくさんいるのです。
とりわけ国外の人達が曲について知りたがっています。
曲の購入の方法を聞いている人もいて、購入されれば当然、著作権者の利益につながっているのです。
楽曲だけではないのです。
男子新体操はゲーム音楽やアニメで使われた曲を使用することも多く、当然、元のゲームやアニメに興味を持ち購買者となる人もいます。(動画のコメント欄でそのように書かれていることもあります)
なにより日本の楽曲は外国で知られていないものが多く、彼らにとっては斬新で美しいものと映るようなのです。
いってみればYouTubeの動画は、日本の文化を国外に広げ、売り込むチャンスを作っているのです。
そうしたことを考えると、単純に配信を規制して、国内外の人達の視聴を妨げることが著作権者の利益になるとは思えないのです。
そして、この点についても、先の町田樹さんがフィギュアスケートの場合のこととして“ジャンル間転送”という新しい言葉を作って説明しています。
以下、引用です。
「ジャンル間転送」ですが、分かりやすく言うと、フィギュアスケートの観客がスケーターの演技を見たことをきっかけに、その演技に関連する諸芸術作品(例えば、その演技で用いられている音楽や、その演技が題材としている舞踊作品)へと副次的にアクセスしていくという消費者行動の現象を指します。
各市場から著作者への対価還元はもちろんのこと、CDが売れるといった経済的な還元だけではなくて、転送された消費者が音楽や芸術の魅力を知り、継続的に関与し続ける、そこまで行動を変容させる力がフィギュアスケートにはあるのではないかと私は考えています。
もちろん国内外の視聴者の行動を変容させる力は、町田さんが語るフィギュアスケートだけでなく、男子新体操にも、アニメにも、その他の楽曲を使うダンスのようなパフォーマンスにも現実にあります。
そして今のところ、その足を引っ張っているのが日本の異様に厳しい著作権法みたいなのです。
(もちろんそれだけではないでしょうけど)
「めざまし8」でも、日本の著作権法が厳しすぎるので変えてほしいという声が上がっていると出演していたコメンテーターが語っていました。
関係者は今一度、現実を見直して、どのようにすれば著作権者の真の利益になるか、また著作権者以外の多くの人々や日本という国のためになるか、考え、制度を変えていってほしいものです。
要は「ハイキュウ」というバレーボールを扱ったスポーツアニメがあり、それが国内外で大人気なのです。
それで漫画の舞台とされる軽米町に注目が集まり、「ハイキュウ」の聖地として国内外からファンが訪れているらしい。
軽米町の方も地域おこしの起爆剤として活用しようとしていたのですが、漫画を出版する集英社やアニメの映画を配給する東宝などから「著作権侵害の恐れがある」と指摘されたとのこと。
この話で見てて良く分からなかったのは集英社や東宝がどの程度、軽米町での「ハイキュウ」の活用を嫌がっていたかということでした。そもそも全く嫌がっていなかった可能性もあります。
というのも、国内外のファンが盛り上がって聖地巡礼までしてくれるのは集英社や東宝にとってもありがたい筈で、ファンに対しても軽米町には行くなとは言えないからです。
本当に嫌なら軽米町での積極的な活用をはっきりと断るか、あるいは町にロイヤリティーを支払ってもらえば良いのです。
わたしがこの話を取り上げたのは「ハイキュウ」のファンだからではなく、同じような話を最近たて続けに聞いているからです。
最初に意識したのは日本の女性ダンスグループのアバンギャルディがアメリカの人気オーディション番組「アメリカズ・ゴッド・タレント」の決勝で、当初予定されていた曲が著作権の関係で踊れず、決勝の日の4、5日前くらいに別の曲で踊らなければならなくなったことです。
そのことが影響したのかどうかは分かりませんが、アバンギャルディは決勝戦では敗退しました。
私はその時の動画のコメント欄で、アメリカ人らしい人が書いていたことが気になったのです。
その人は、アバンギャルディが当初予定していた曲で踊れなかったことで日本の著作権法について書いていたのですが、その人自身の経験として、とにかく日本の著作権は無茶苦茶厳しく、たとえお金を支払うといっても自分が使いたい曲を使用することができなかったと書いていたのでした。
知っている人は知っているのですが、アバンギャルディは予選では岩崎宏美の「シンデレラ・ハネムーン」で踊り、物凄く話題になりました。
話題になったのは彼女達のダンスだけでなく、原曲の1.14倍のスピードで使った「シンデレラ・ハネムーン」も話題となりました。
結果、ビクター・エンタテインメントはスピードアップバージョンとして「シンデレラ・ハネムーン」を配信リリースしています。
つまり「アメリカズ・ゴッド・タレント」でのダンスの楽曲として使われたことによって、曲や歌手の知名度も国際的に上がり、ビクター・エンタテインメントは新たに売り出して儲けているのです。
アバンギャルディのその実績を考えれば、当初予定した楽曲の著作権者がそこで楽曲を使ってほしくないというのはちょっと不思議なのです。
もちろん、よほど金銭的に吹っ掛けたか、アーティストとしてのこだわりからアバンギャルディに使ってほしくなかった可能性もあります・・。
冒頭の「めざまし8」でも、番組内で語られていたのは日本の著作権法の他国に比べても異様なまでの厳しさでした。
たとえばの話、私がトトロのキャラ弁を作ってこのブログでアップしたら、違法なんだそうです。
つまりスタジオジブリから訴えられる可能性があるということです。(現実には考えられませんが・・・)
もちろん私がキャラ弁をこのブログでアップしても私の収益にはなりません。
でも、使用者が営利目的ではないことは関係ないみたいです。
許可なくジブリのキャラクターを不特定多数の人が観られる環境で使ったということが問題にされるみたいです。(何がダメなのか分かるようで分かりませんが)
だから、仮に私がどれだけトトロが好きで、キャラ弁作って、それ見せてイイネもらって、トトロ好きな人達と一緒に盛り上がりたくても、それはできないわけです。
日本以外の諸外国の場合、私は厳しいと思っていたのですがそうでもなく、むしろビジネスチャンスを作り出せるよう緩やかなのだそうです。
技術革新が著しい中、規制ばかりを強くすると、現実に諸外国との競争に負けてしまうからです。
最近も、アメリカだったか忘れましたがフィギュアスケートで楽曲を使ったとして訴訟があったとのことですが、和解し、同時に訴訟などが起こらないように制度的にも使いやすくしたらしいです。
ちなみにフィギュアスケートに関しては、元フィギュアスケーターで、氷上の哲学者と言われていた町田樹さんが、著作権について、とてもよく纏められた研究をされてます。
私はなぜ町田樹さんが氷上の哲学者と呼ばれていたのか、彼が現役時代には分からなかったのですが、研究者として活動を始めた彼を見るとよく分かりました。
話を戻すと、実は私が一番ショックを受けたのは「ハイキュウ」でもなければアバンギャルディでもなく、男子新体操の応援サイトであるOuenMRGさんが今までYouTube上で上げていた男子新体操の演技動画をすべて削除してしまったことでした。
理由は、演技で使用されている楽曲の著作権上の問題があることが分かったからだそうです。
OuenMRGさんはもちろん、演技している学校やら個人の許可を得て配信していました。
問題はそこで使われている楽曲の著作権のようでした。(ですから楽曲を使っていない動画は残している)
通常、男子新体操は高校や大学のクラブ活動なので、演技する楽曲の許可は学校が得ていて、それは問題はないみたいです。
ところが演技動画の配信はYouTube上では問題はないそうですが、楽曲の著作権法上で違法になってしまうみたいなのです。
男子新体操の動画を配信しているサイトは他にも幾つかあるのですが、OuenMRGさんがダメなら他もすべてダメなんじゃないかと思います。
OKなのは国士舘大学がやっているように男子新体操部自体が動画の配信を行うことです。
X(旧Twitter)で読む限り、今後はそうしていくしかないみたいな話しぶりです。
でもこれ、高校や大学の部がやるにはあまりに負担が大きいものです。
そしてそれは今後の問題なのですが、過去の、OuenMRGさんのサイトが提供していた演技動画が見られなくなったことも大問題なのです。
というのも、男子新体操のファンというのは国内外にいるのですが、OuenMRGさんのようなサイトで男子新体操を観てそのスポーツを知り、ファンになった人も多くいるからです。
私もそうなのですが、YouTubeのお勧めで男子新体操の演技を観てファンになった人達がたくさんいます。
YouTubeから動画が消えれば、当然、新たなファンも生まれにくくなります。
そういう人達にとっては過去に感銘を受けた演技動画が見られなくなったのです。
それは他人事ではなく、私にとっても、青森大学のあの演技、名取高校のあの演技、井原高校の・・と、幾つもの演技がもう二度と見られなくなったのです。
そして町田さんの考えでは、それはファンだけでなく競技者にとっても深刻な事態のようです。
というのも、振付を考える人も含めて競技者もまた過去の演技から学んで自分の演技を組み立てるからです。
町田さんはそれを「巨人の肩の上に乗る」という学問に使われる言葉を使って、研究だけでなく演技を作るような他の創造的営為も同じと語っています。以下、引用。
研究者にとって「巨人の肩の上に乗る」という言葉は金科玉条なのですが、先人たちが積み重ねてきたものを全部踏まえてその上に自分の新たな知見を積み重ねる、先人たちの知識をたどり、だからこそ新しいものが見えてくる、という考えです。
まだやられていない何かをオリジナリティとして少し加える。本能だけで創る人は別ですけど、基本的にアーティストはいろんな音楽を聴いて、従来の作品の内容や傾向などを総合的に理解した上で、どのようなことがオリジナリティにつながるのかを考えながら、音楽市場に対して作品を投入していくのではないでしょうか。その営みは、まさに研究者的なところがあって、そこはバチッと同じだと感じます。私は振付家でもありますが、振付家と研究者は全く別のアイデンティティなのかというと、そうではなく、むしろ全く同じことやっていると思っています。
誰もが過去の作品にアクセスできるアーカイブ、あるいは過去の作品をきちんと(適切かつ現実的な許諾料で)著作権処理し二次利用できる環境が、次世代のより良い作品を生み出すためのインフラになる、と私は考えています。
町田さんが語っているのは主にフィギュアスケートの場合なのですが、男子新体操の場合はさらに深刻になります。
というのも、フィギュアスケートの場合ならば、その演技はNHKなり民放なりで一度は放映され、視聴者はそれを観ることができ、映像も残っています。
ですが、男子新体操の場合はテレビ局が撮影することはまず無いのです。
撮影は競技会を主催した体操協会か、競技会に参加した各学校の男子新体操部か、OuenMRGのようなサイトだけです。
つまり過去の演技を知るには大半がYouTube頼みだったのです。
YouTubeでアップしてはいけないというのなら、どうやって第三者が過去のそうした大会の演技を観ることができるのでしょうか。
YouTubeで見られないのなら、今から男子新体操に取り組む若い人達は、過去の演技を知るという「巨人の肩の上に乗る」こともできないのです。
さらにここでも「ハイキュウ」やアバンギャルディの時と同じことが言えるのです。
というのも、YouTubeの動画に付いたコメントを読んでいると、男子新体操を観て、使われている楽曲に興味を持ち、曲の名前を聞く人達がたくさんいるのです。
とりわけ国外の人達が曲について知りたがっています。
曲の購入の方法を聞いている人もいて、購入されれば当然、著作権者の利益につながっているのです。
楽曲だけではないのです。
男子新体操はゲーム音楽やアニメで使われた曲を使用することも多く、当然、元のゲームやアニメに興味を持ち購買者となる人もいます。(動画のコメント欄でそのように書かれていることもあります)
なにより日本の楽曲は外国で知られていないものが多く、彼らにとっては斬新で美しいものと映るようなのです。
いってみればYouTubeの動画は、日本の文化を国外に広げ、売り込むチャンスを作っているのです。
そうしたことを考えると、単純に配信を規制して、国内外の人達の視聴を妨げることが著作権者の利益になるとは思えないのです。
そして、この点についても、先の町田樹さんがフィギュアスケートの場合のこととして“ジャンル間転送”という新しい言葉を作って説明しています。
以下、引用です。
「ジャンル間転送」ですが、分かりやすく言うと、フィギュアスケートの観客がスケーターの演技を見たことをきっかけに、その演技に関連する諸芸術作品(例えば、その演技で用いられている音楽や、その演技が題材としている舞踊作品)へと副次的にアクセスしていくという消費者行動の現象を指します。
各市場から著作者への対価還元はもちろんのこと、CDが売れるといった経済的な還元だけではなくて、転送された消費者が音楽や芸術の魅力を知り、継続的に関与し続ける、そこまで行動を変容させる力がフィギュアスケートにはあるのではないかと私は考えています。
もちろん国内外の視聴者の行動を変容させる力は、町田さんが語るフィギュアスケートだけでなく、男子新体操にも、アニメにも、その他の楽曲を使うダンスのようなパフォーマンスにも現実にあります。
そして今のところ、その足を引っ張っているのが日本の異様に厳しい著作権法みたいなのです。
(もちろんそれだけではないでしょうけど)
「めざまし8」でも、日本の著作権法が厳しすぎるので変えてほしいという声が上がっていると出演していたコメンテーターが語っていました。
関係者は今一度、現実を見直して、どのようにすれば著作権者の真の利益になるか、また著作権者以外の多くの人々や日本という国のためになるか、考え、制度を変えていってほしいものです。