緑陰茶話   - みどりさんのシニアライフ -

エッセイとフォト

日々の発見と思いのあれこれなど

転職は悪い事なのか

2018年04月17日 | 仕事
これは書かないでおことも思っていたのだけれど、最近、ちょっと悪い意味で驚いたことがありました。
ある人から突然「みどりさん、随分仕事を変わられたんですね」と言われたことです。

その言い方が『あなたがそんな人だとは思わなかった、ショックです』というような、悪い意味で驚きと失望を込めた、ネガティブな言い方だったのです。
しかもその時の話の本筋からまったく関係なく、唐突にそう言われたものだから、文字通りのけぞる程驚かされました。

私はその人に若い頃の仕事の話はしたことがありません。
たぶん、無関係な話から断片的に拾い集めた知識を繋ぎ合わせてそう言ったのだと思います。
(半年くらい前から、その人が、他人の経歴や家族関係等の情報集めに異様に熱心だと気づいて、その人相手には注意はしていました。)

だから私は「えっ? 転職はしたけれど」とだけ答えました。
実は私が転職を何度か繰り返していたのは40年以上前の20代の頃の話で、30代以降は一つの会社で、その会社が破産するまで四半世紀近く働いていました。
60歳を過ぎてリタイアしている今、その人に20代の頃に転職の話を、言い訳めいて説明するのもおかしな話ですので黙っていましたが。

同じような言い方をされた事が、30年以上前にも一度だけありました。
たまたま私の履歴書を見た、私より5、6才若い女性から、「なんや、何回も転職しているやない」と呆れたような、軽蔑するような言い方で言われたことがあったのです。
その時も『えっ?』っていうような感じでした。

私は石油ショックの直後に短大を卒業し、世の中に出ています。
就職先はゼロでした。もちろん学校も1件も紹介してくれません。
それでも、とにかく稼がなくてはいけないので、長期バイトの募集の面接に行くと、古いビルの一室の小さな会社のドアの前から、共用の廊下に50人くらいの応募者が並んで面接待ちしている、そういう状況でした。
(今、思い出して驚くのは、たとえバイトでも、当時の会社は一人一人丁寧に面接してくれた!ということです!)

そんな状況で働き始めたので、当初は、通勤費も自前で、生活できないほど給料が安かったり、加入できる資格があっても社会保険に加入していなかったり、そんな勤め先がほとんどでした。

当時の私はとてもビンボーでしたが、そのことはあまり気にしてませんでした。
ただ、いかに生活を成り立たせながら、自分が何をしたいのか、何ができるのか、社会と擦り合わせしつつ、当たり前に努力していただけでした。そして30代に入った頃には目的も見つけ、生活も、仕事も安定していました。

石油ショックの悪影響は、日本では長く続かなかったですし、いわゆる新卒のカードは当時の女性にとってあまり意味もありませんでした。要するに、今とは異なり、普通の努力で何とかなったのです。

それでも、何度か転職したことを、まるで悪い事でもしたみたいに言われると、自分の若い日の努力を全否定されたみたいで、傷つかずにはいられません。
30年以上前に、私に転職について非難がましい事を言った女性は、石油ショックの何年か後に大学を卒業して就職していて石油ショックの頃の世の中のことなど、まるで理解できなかったのだと思います。
でも、30年以上たった今でも同じことを言われるとは、私も想像だにできませんでした。

もちろん、私だって、日本では何があっても一つの職場で頑張り続けることが美徳だと思われていて、職を転々とすることが良く思われないことくらい知っています。
たぶん、会社を辞める=忍耐力がないor人間関係をうまくやっていけないとか思われ、そういうことを繰り返す=人間性に問題のある、ダメな人というように考えられているのだと思います。

ただ、日本でそういう「常識」が生まれたのは高度経済成長期の頃だったでしょうが、時代や社会は目まぐるしく変化しています。
当然、そういう「常識」が通じる時代や人ばかりではないのです。
バブルがはじけて以降、女子大生は就職氷河期や超氷河期に見舞われています。
さらにリーマンショック以降はもっと過酷な時代になっています。
ある意味、就職先が一部上場企業であってもブラック企業である確率はとても高いのです。
それでも無条件に転職を否定的に捉えることは働く人にとって相当に酷なことです。

電通に勤めていた高橋まつりさんが、あのような働かせ方をする会社で、転職するという選択肢を持たず、そのまま働き続けるか自殺するかの二者択一の状態に陥ったのはなぜか、人は考えるべきです。
彼女自身は多分、過酷な生活の中で正常な判断能力を無くしていたと思います。
ただ、家族は、周囲は気が付かないのでしょうか。
子供や夫を過労死で亡くす人達を見ていると、私はいつもそう思います。

会社を辞めて生活はどうするのか、転職なんて上手くいかなかったらどうするのか、言われなくったって、本人はよーく分かっています。
それでも、辞めて不安定な派遣で働くようになっても、自分を壊すよりマシなのです。
本人に後々までしつこく「大会社に勤めていたのに、辞めるもんだから」なんて、決して言わないでください。
いつまでも、悪い時代は続かないのです。チャンスは必ずあると思ってください。
そのチャンスに、言葉や行動で手を貸してあげてください。

実は悪い時代を続けさせているのは、我慢して働く人自身だったりもするのです。
高橋まつりさんのようなケースにおいては、転職は逃避ではありませんでした。
最も真面目な方法は、労基に駆け込んで会社と徹底的に闘うことだったろうと思います。
ただそれは、過労自殺寸前の人間にできることではありません。
セカンドベストが転職だったのです。

本来有能な人間が皆辞めて行く、それだけでも会社にダメージを与えられるのです。
そうすることで、悪い会社を淘汰することができるのです。

人出不足で、売り手市場の今は千載一遇のチャンスの時代です。
家族が転職の話をしたら、頭ごなしに反対しないで、ちゃんと話を聞いてください。
くれぐれもカビの生えた「常識」にとらわれないように。




30年間、変わってない ハローワーク(怒)

2015年07月18日 | 仕事
先日、テレビを観ていたら、同じ日に二つの気になる番組がありました。

一つはクローズアップ現代で、ブラックバイトが横行し、バイトの学生さん達が学業も立ち行かなくなっている現状。

もう一つはニュースで、あるNPOだったかが、ハローワークで紹介されて就職したものの、実際の条件がまったく違っていた場合、その企業の募集を、今後ハローワークで取り扱うことをやめて欲しいという訴え。

二つ目のニュースを見ていて、30年間、まるで手つかずで、変わっていないんだとつくづく思いました。

というのも30年前。私が30歳の頃の話です。職業訓練校で資格を取れるだけ取って就職活動をしていた時のこと。
ある会社に採用され働き始めましたが、週休二日制についても、給料についても、ハローワーク(当時は公共職業安定所と言われていた)で見た求人票の記述とまるで違っていたのでした。

私がそのことを経営者に言うと何やかやと誤魔化してしまいます。
『これはいかんわ』と思い、私はそこを1か月ほどで辞めました。

そして、もう一度ハローワークに行って、事情を話して手続きしようとしたのですが、その時、ハローワークの職員(女性)が、プリプリした態度と共に言った言葉が今でも忘れられない。

曰く「みどりさんには、そこでずっと働いていて欲しかったですね」

ちょっと待って欲しい。私はハローワークの求人票を見て、それを信じて就職したんです。
なのに違っていたから、もう一度就職活動をする破目になったのです。
私を採用した側が、ハローワークに出していた求人票と全く異なる労働条件を私に押し付けてきたことに、ハローワークは何の責任もないのですか? 
せめて虚偽ではない求人票を書く指導くらいできないのですか?
それどころか私に、文句を言わずに黙って働けというのですか?


というのが、その時、私の脳裏に電撃のように去来した思いでした。
でも、そこで、ハローワークの職員と言い争っても、無駄なエネルギーを使うだけだから黙っていました。

当時、職業訓練校の教師から聞いていた話があって、職業安定所の上からの評価は就職率だそうで、とにかく、どんな会社でも良い、失業者を就職させて就職率を上げる、それがその安定所や担当者の評価になるんだ、ということでした。
私が受けた対応もそれが原因だなって、その時は思いました。

それで、求人票に偽りのない、別の会社にさっさと就職しました。30年前の話です。

ところが今、ちょっと調べてみると、ハローワークには現在、求人票の条件と実際が全く違っていたという苦情が殺到しているらしいです。
そして厚生労働省が、苦情の件数を集計し始めたのが平成24年度から (遅い・・)とか。

ハローワークは国の出先機関です。そこにある求人票に、高い確率(4割!)で虚偽があるなんて、それを経験した人でなければ分からないし、信じてももらえません。

法に照らし合わせても、求人票に虚偽を記載したり、虚偽の条件で仕事先を斡旋したりすることは犯罪になるらしい。
でも、その犯罪に、ハローワークは見過ごすどころか長年加担していたわけです。
その結果、ハローワークがブラック企業を生み出す温床になってしまったのです。

というのも、失業している人間が、一度就職が決まって、すぐ辞めるということは、人手不足の時代でも、実はとても難しいことなのです。

やっと仕事が決まったという家族の期待もあります。家族だけでなく、心配してくれていた周囲の人達にも、すぐ辞めたとはとても言い出しにくいのです。
だから我慢して働き続けるのです。
そういう足元を見てブラック企業は成り立っています。

今では、ハローワークも、やっと求人票と実際が違っていた場合、届けでてほしいと言っていますが、届け出てどうなるんでしょうか。

やはり、虚偽の記載を行う企業は、労働市場そのものからご退出願いたいものです。