(4)では、実際の介護サービスについて書きます。
母の入院中から担当になったケアマネージャーのNさんは精力的に動いてくれました。
自宅で介護する以上、入院中に家のバリアフリーを済ませておかなければならなかったし、レンタルの介護用ベッドを置く為に部屋の模様替えも手早くやってしまいました。
その他、介護用品の選定購入と、ほぼケアマネさんの指示で行いました。
実際に行う介護サービスの説明は、ヘルパーさんも来られて受けました。
我が家の場合、家族がいるので、朝と夕の食事は家族が作って食べさせてくださいということでした。
関係がないので質問はしませんでしたが、一人暮らしの高齢者の場合は、介護度が同じであっても当然違うのでしょうか。
強調されたのは、ヘルパーさんが行う介護サービスは、我が家の場合なら母に関することだけということでした。
つまり、それ以外の家事は一切しないということです。
で、私がおそるおそる質問。
「うちのスズちゃんにも昼ごはんをやってほしいのですけど・・・」
スズちゃんは我が家の猫です。お昼にも餌をやっていたのです。というか、人がいれば必ず餌を欲しがるのです。
ケアマネのNさんの答えは「ダメ」でした。ペットの面倒は介護サービスに含まれないのです。
そこで私も言いました。
「じゃあ私が帰ってからやります。でも、スズちゃんに餌をやらなかったらヘルパーさんは仕事にならないと思います。ニャーニャーとまとわりついて」
Nさんはちょっと考え込んで「仕方ないですね。スズちゃんの餌やりも含みます」と言いました。
そのやりとりを固唾を飲んで聞いていたヘルパーさんもホッとした様子でした。
ヘルパーさん、餌をやりたかったみたいなのです。
その後、スズちゃんはヘルパーさん達に〝お話し猫ちゃん〟として、とても可愛がられました。
スズちゃんは話しかけると必ず「ヴギー」と返事をするからです。
後に聞いたところ、派遣されるヘルパーさんは、猫のいる家は猫が好きかもしくは猫が平気な人、犬の場合も同様とのことでした。
ただ、説明を受けて思ったことは、ケースによっては介護サービスを利用しても介護離職せざるをえないだろうなということ。
たとえば、母親と成人した子供の二人暮らしで、母親が家事をして子供が正社員で、残業ありのフルタイムで働いていた場合に、母親が倒れて介護が必要になった時など。
よくあることですが、同居家族である子供は朝の7時に家を出て、夜の9時30分に帰ってくるとします。
介護サービスでしてくれるのは母親の昼間のケア(食事・身体介護)だけです。朝と夜は子供が介護をしなければなりません。
その他一切の家事も家族である子供がすることになります。
今どきの仕事はとてもハードで、帰宅したらクタクタなんて珍しくありません。帰ってからの介護は体力的に辛すぎます。それでなくても、今まで家事一切を親に任せていた子供が、親が倒れたからといって、朝と夕の親の食事の用意から家事一切を空いた時間にできるでしょうか。
これは介護の問題というより一部は企業のワーク・ライフ・バランス(※)の問題ですが、よほど体力強健な人でないと続かないでしょう。
(※ワーク・ライフ・バランスの意味は、Wikによれば「仕事と生活の調和」と訳され、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を持ちながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる」ことを指します。)
介護保険では、専業主婦など、ずっと家にいる家族の介護負担を減らすために、デイサービスやショートステイで、家以外の場所が高齢者を引き受けて家族を休ませることができるのですが、働いている家族は休みなしになってしまいます。
つまり介護保険では、結果的に一つの家族・家庭から介護が必要な高齢者のみ切り取って、その人だけ助けることになっていて、ペットを含め、実質的に家族単位で状況を考えていないのではと思えるのです。
たとえば、猫と暮らす一人暮らしの老人が倒れて介護が必要になった時、老人は介護サービスを受けられますが、そのサービスの中には猫の世話は含まれていないのです。では猫はどうするのでしょう。
我が家のように、それでもやっていける家族は良いのですが、やっていけない家族は必ずいます。
同居している家族に余裕がなければ、介護が必要な高齢者は、いっそ一人暮らしで介護サービスを受ける方が、きちんとした介護を受けられることもあるかもしれません。
もちろん、介護サービスを介護を必要とする人のみにしないとヘルパーさんはお手伝いさんになってしまうので、そこの線引きは難しいと思います。
でも、結局スズちゃんの餌やりが認められたように、実際には、ある程度の融通は利かせてくれます。
たとえば、実際にはやってはいけないことですし、たまにのことだったですが、ヘルパーさんが台所や廊下の拭き掃除をしてくれたり、お昼にご飯が無くなると炊飯器を仕掛けてくれたり、夕ご飯に家族も食べられるようにおかずを多い目に作ってくれたり、です。
後で知ったのですが、契約した事業所によっては、私が実際に体験した以上にやってくれるみたいだったのです。
母はというと、自宅での介護生活が始まるとヘルパーさんとおしゃべりしたりで結構楽しそうでした。
一時は目が見えないために完全に昼夜逆転になりましたが、7月末には眼底出血した血液が吸収されて視力が戻り始め、ヘルパーさんに付いてもらって近くの病院ならば半分は歩いていけるほどになったのです。(後の半分は車椅子)
介護で最も恐れられていることは身体介護ではないかと思うのですが、当初は訪問看護師さんにも来てもらい、リハビリや入浴介助をしてもらっていましたので、家族が身体介助でしんどい思いをするということもありませんでした。
私も、当時のヘルパーさん達と交わしていた連絡帳を読み返すと、母のことだけでなくスズちゃんや我が家の庭の草花の話など、楽しそうに書いていて、深刻なことは何もありませんでした。
母の入院中から担当になったケアマネージャーのNさんは精力的に動いてくれました。
自宅で介護する以上、入院中に家のバリアフリーを済ませておかなければならなかったし、レンタルの介護用ベッドを置く為に部屋の模様替えも手早くやってしまいました。
その他、介護用品の選定購入と、ほぼケアマネさんの指示で行いました。
実際に行う介護サービスの説明は、ヘルパーさんも来られて受けました。
我が家の場合、家族がいるので、朝と夕の食事は家族が作って食べさせてくださいということでした。
関係がないので質問はしませんでしたが、一人暮らしの高齢者の場合は、介護度が同じであっても当然違うのでしょうか。
強調されたのは、ヘルパーさんが行う介護サービスは、我が家の場合なら母に関することだけということでした。
つまり、それ以外の家事は一切しないということです。
で、私がおそるおそる質問。
「うちのスズちゃんにも昼ごはんをやってほしいのですけど・・・」
スズちゃんは我が家の猫です。お昼にも餌をやっていたのです。というか、人がいれば必ず餌を欲しがるのです。
ケアマネのNさんの答えは「ダメ」でした。ペットの面倒は介護サービスに含まれないのです。
そこで私も言いました。
「じゃあ私が帰ってからやります。でも、スズちゃんに餌をやらなかったらヘルパーさんは仕事にならないと思います。ニャーニャーとまとわりついて」
Nさんはちょっと考え込んで「仕方ないですね。スズちゃんの餌やりも含みます」と言いました。
そのやりとりを固唾を飲んで聞いていたヘルパーさんもホッとした様子でした。
ヘルパーさん、餌をやりたかったみたいなのです。
その後、スズちゃんはヘルパーさん達に〝お話し猫ちゃん〟として、とても可愛がられました。
スズちゃんは話しかけると必ず「ヴギー」と返事をするからです。
後に聞いたところ、派遣されるヘルパーさんは、猫のいる家は猫が好きかもしくは猫が平気な人、犬の場合も同様とのことでした。
ただ、説明を受けて思ったことは、ケースによっては介護サービスを利用しても介護離職せざるをえないだろうなということ。
たとえば、母親と成人した子供の二人暮らしで、母親が家事をして子供が正社員で、残業ありのフルタイムで働いていた場合に、母親が倒れて介護が必要になった時など。
よくあることですが、同居家族である子供は朝の7時に家を出て、夜の9時30分に帰ってくるとします。
介護サービスでしてくれるのは母親の昼間のケア(食事・身体介護)だけです。朝と夜は子供が介護をしなければなりません。
その他一切の家事も家族である子供がすることになります。
今どきの仕事はとてもハードで、帰宅したらクタクタなんて珍しくありません。帰ってからの介護は体力的に辛すぎます。それでなくても、今まで家事一切を親に任せていた子供が、親が倒れたからといって、朝と夕の親の食事の用意から家事一切を空いた時間にできるでしょうか。
これは介護の問題というより一部は企業のワーク・ライフ・バランス(※)の問題ですが、よほど体力強健な人でないと続かないでしょう。
(※ワーク・ライフ・バランスの意味は、Wikによれば「仕事と生活の調和」と訳され、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を持ちながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる」ことを指します。)
介護保険では、専業主婦など、ずっと家にいる家族の介護負担を減らすために、デイサービスやショートステイで、家以外の場所が高齢者を引き受けて家族を休ませることができるのですが、働いている家族は休みなしになってしまいます。
つまり介護保険では、結果的に一つの家族・家庭から介護が必要な高齢者のみ切り取って、その人だけ助けることになっていて、ペットを含め、実質的に家族単位で状況を考えていないのではと思えるのです。
たとえば、猫と暮らす一人暮らしの老人が倒れて介護が必要になった時、老人は介護サービスを受けられますが、そのサービスの中には猫の世話は含まれていないのです。では猫はどうするのでしょう。
我が家のように、それでもやっていける家族は良いのですが、やっていけない家族は必ずいます。
同居している家族に余裕がなければ、介護が必要な高齢者は、いっそ一人暮らしで介護サービスを受ける方が、きちんとした介護を受けられることもあるかもしれません。
もちろん、介護サービスを介護を必要とする人のみにしないとヘルパーさんはお手伝いさんになってしまうので、そこの線引きは難しいと思います。
でも、結局スズちゃんの餌やりが認められたように、実際には、ある程度の融通は利かせてくれます。
たとえば、実際にはやってはいけないことですし、たまにのことだったですが、ヘルパーさんが台所や廊下の拭き掃除をしてくれたり、お昼にご飯が無くなると炊飯器を仕掛けてくれたり、夕ご飯に家族も食べられるようにおかずを多い目に作ってくれたり、です。
後で知ったのですが、契約した事業所によっては、私が実際に体験した以上にやってくれるみたいだったのです。
母はというと、自宅での介護生活が始まるとヘルパーさんとおしゃべりしたりで結構楽しそうでした。
一時は目が見えないために完全に昼夜逆転になりましたが、7月末には眼底出血した血液が吸収されて視力が戻り始め、ヘルパーさんに付いてもらって近くの病院ならば半分は歩いていけるほどになったのです。(後の半分は車椅子)
介護で最も恐れられていることは身体介護ではないかと思うのですが、当初は訪問看護師さんにも来てもらい、リハビリや入浴介助をしてもらっていましたので、家族が身体介助でしんどい思いをするということもありませんでした。
私も、当時のヘルパーさん達と交わしていた連絡帳を読み返すと、母のことだけでなくスズちゃんや我が家の庭の草花の話など、楽しそうに書いていて、深刻なことは何もありませんでした。