写真:山陽新幹線開業当時の制服でサービスしてくれた車内販売員さん方(掲載には御本人の了解を得ています)
←さようなら、夢の超特急~その2・ひかり340号徳山駅→三原駅~からの続き
10:32、三原駅出発。
続いて11:03に到着する岡山駅では僅か1分間の停車で、すぐに発車。
11:29、最後の停車駅となる姫路駅に到着。
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反対側のプラットホームには、見送り客が鈴なり。
11:34、姫路駅出発。
最後の上り新大阪駅行き0系新幹線「ひかり340」号は、いよいよ最終区間に入った。
冬の曇り空と家並みの向うに明石海峡大橋を見ながら、列車は終着駅新大阪を目指し進んで行く。
ラストスパートをかけて新神戸駅をかなりの速度で通過し、六甲トンネルを突き抜けた「ひかり340」号は、12:05に新大阪駅に到着した。
最後まで坦々と安全確実に、いかにも「新幹線らしい」見事な走りっぷりであった。
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下車前に、最後に自分が座っていた座席と車内に軽く一礼。
「今日まで長い間、本当にお疲れ様でした。ありがとう、0系新幹線」
出迎え客で混み合う新大阪駅の新幹線のりばを後に、在来線の東海道本線に乗り換えて大阪駅へ。さらに大阪環状線に乗り換え、弁天町駅で降りて向かった先は…
交通科学博物館。
展示されてる蒸気機関車の顔に、クリスマスリースが飾りつけられてるね。
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館内には、こんな懐かしいブルートレインのヘッドマークも。
この列車達の中で、今も存命なのは「はやぶさ」だけだもんなぁ。寂しいよ…
さて、今日この交通科学博物に来たのは、この展示を見る為。
さよなら0系新幹線展「夢の超特急の時代」
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僕が生まれたのは1976年、昭和51年。
既に新幹線は博多まで到達しており、新幹線が「夢の超特急」と持て囃された時代の記憶は無い。
それでも、展示された新幹線開業当時の品々を見ていると、当時の熱気が伝わって来る。
戦争で何もかもが焼けてしまった日本が、文字通り裸一貫で甦った時代。明るい明日への希望は生々しく、誰もがそれを実感できる活力に満ちた時代だったのだろう。
そして力強く登る日本の夜明けの太陽の向うから、時速210キロでビュワーンビュワーンとやってきたみんなの夢の超特急、それが0系新幹線だったのだ。
現在、最早太陽は中天を過ぎ、日本は「神々の黄昏」を迎えようとしている。
アジアで最初のオリンピックに沸き立ち、アポロの持ち帰った月の石に未来世界の夢に酔いしれたあの頃には、もう二度と戻れない。
そんな時代に、夢の超特急0系新幹線もまた走り去って行ってしまうのだ。
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館内には、東海道新幹線開業当初に営業運転していた0系の車輌が保存展示されている。
世界で初めての超高速鉄道として、奇跡と言われた戦後復興を成し遂げ名実共に先進国の一員として君臨せんとする日本を駆け抜けた栄光の車輌を見ていて、気が付いた。
九州新幹線の800系「つばめ」号と、とてもよく似ているのだ。
「そうか…今でも、すべての新幹線には0系の魂が引き継がれているんだよなあ…」
0系は去っていくが、新幹線の理念…何よりも速く、快適に、そして安全に走ると言う崇高な志は、0系の後を引き継ぐすべての新幹線車輌に確実に受け継がれている。
そしてそれは新幹線に留まらず、すべての日本の「ものづくり」の精神に受け継がれていると思うのだ。
そう信じたいのだ。
「そう考えると、寂しくなんかないよ。だって、0系の子供たちが今でもこれからも、みんなの夢を運ぶ超特急として僕のそばにいるんだもんね。」
さあ、そろそろ新大阪駅に行こうか…
最後に走る0系新幹線、「ひかり347(サヨナラ)」号の発車時間だ。
→さようなら、夢の超特急~その4・0系は駆け抜けた~に続く