僕の自宅からクルマで小一時間ほど「球磨川」沿いの道を遡ると「球泉洞」という鍾乳洞がある。
九州で最大級の鍾乳洞だそうだ。
付近には観光川下り船の船着場もあり、観光スポットとして知られている。
で、そんな風光明媚な川沿いの森の中に何故か「エジソンの殿堂」があるのだ。
「球泉洞森林館エジソンミュージアム」
森林館の名の通り、地元熊本県球磨村の森林組合が運営する施設である。
元々は森林に関する資料をメインに展示していたらしいのだが、その後「日本エジソン財団」からエジソンに関する資料を借り受け展示するようになったそうだ。
「何故、熊本県の山の中にエジソンの殿堂が?」と以前から気になっていたのだが、何しろ山奥にあるので中々行き出せないままになっていた。
しかし、今年暮れに東欧旅行に出かけてベオグラードで「ニコラ・テスラ博物館」を訪ねる事になったので、それまでには何としても行っておかねば、と思い立ちとうとう行って来た。
遥かセルビアまでテスラの功績を訪ねて行く癖に、地元にあるテスラの永遠のライバル・エジソンの博物館を観ないままにしておく訳にはいかないもんね。
気持ちよく晴れた日曜日の朝、八代市で国道3号線から分岐する国道219号線を人吉方面に向かって、球磨川沿いの快適なドライブを楽しんで辿り着いた球泉洞森林館。
ドームの集合体の、モスクのような奇抜なデザインの建物が目を引く。
館内はこんな感じ。
国内でも第一級のエジソン関連のコレクションが並ぶ。質量共にかなり充実していて、見応えがある。
何かテスラに関連した展示はないかとじっくり観て回っていたら、森林組合の制服を着た男性が何か言いたそうに近づいて来られた。
「あの~よかったら説明しましょうか?」
せっかくなのでお願いする。
「では、蓄音機を実際に鳴らしてみましょうね」
何ですと!?展示品なのに聴かせて貰えるんですか?
「うちは実際に体験して頂けるのが特徴なんですよ。」
そう言うと森林組合の男性は慣れた手つきでハンドルを廻し、円筒形のレコード?に針を落とした。
館内に、少し軋んだ厚みのある音楽が鳴り響く。
これは…!蓄音機の音楽って初めて聴くけどいい音が出ますねえ。
「この蓄音機はスピーカーに仕掛けがあるんです。観音開きの戸がついていて音質とボリュームが調整できるんですよ。」
成程。
「この前、NASAの関係者の方が来られましたけどこの観音開きには感心されてました。宇宙船の設計にも似たようなものがあるそうです。」
NASA!?宇宙船の設計!?
「日本中からエジソンが好きな方が来られますよ。熱心な方はそれこそ半日位展示品にかじりついてね。」
そうでしょうねえ。。。何しろベオグラードまで行くような香具師もいるんですからw
蓄音機コーナーのあるフロアを降りると、白熱電球の並んだ魅惑的な部屋があった。
こういう無機質で硬質なオブジェ、好きだなあ。
展示方法が上手い。小部屋の壁の陳列棚にズラリと並べられた電球や真空管は現代アートの作品のようだ。
電球達に見入っていると、また先程の森林組合の職員さんから声を掛けられた。
「この博物館を通じて、人々に元気になって頂きたいんです。」とのこと。
エジソンの不屈のパワーを皆に感じてもらいたいってことなのかな。
ところで、何でこんな山奥(失礼!)にエジソン博物館なんですか?
「ええまあ、そこは、メンローパークも人里離れた場所でしたから。」
おお、いきなりエジソンの研究所の立地で切り返された!この人只者ではないかも。ひょっとしてエジソンに一家言ある学芸員さんですか?
「いえ、学芸員ではなくて森林組合の職員です。エジソンの事はちょっと調べただけです。」
いやいや、そんな事言いながらかなり勉強されているご様子。仕事熱心な人だな~
「特に、子供たちにはここの展示を見て元気に生きてもらいたいですね。」とのことでした。
結局、テスラに関する展示資料は見当たらなかったけれど、非常に充実した内容と職員さんの情熱で見せてくれる楽しめる博物館だった。
森の中にひっそり佇むエジソンの殿堂「球泉洞森林館エジソンミュージアム」、おススメです。