←その13:紅の高速列車Italo(イタロ)からの続き
快適そのものだった高速列車Italo (イタロ)から降り立ったフィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ駅で、乗り継いでピサまで向かうローカル列車のきっぷを買うのに一苦労、
いや物凄い大苦労!!
何と、コンコースにたくさん設置されている乗車券の自販機が全てシステムエラーを起こしていてきっぷを買うことが出来ないのです。
こういう時は、確か近距離の列車のきっぷは駅構内のタバコ屋(キオスク)でも売ってる筈だと思いタバコ屋に並ぶと「きっぷは売り切れだよ!」とつれない言葉。
仕方なく駅の窓口に並ぼうとすると、我々と同じようにきっぷを求めて窓口に押し寄せた乗客たちが折り重なって大混雑…
しかも日本人と違って基本的に「順番通り並ぶ」ということが大の苦手のラテン系ヨーロッパ人の皆さんなので、いったいどこが行列の最後尾なのかも分からず、そもそも行列にもなっていないので収拾不能のパニック状態に…
「…あかん、こりゃ窓口に到達するまで何時間かかるか分からんな。この有り様だと今日中にきっぷが手に入るとは思えん。どうしたものか…」
その時ふと、
「そうだ、サンタ・マリア・ノヴェッラみたいに大きな駅だとタバコ屋は駅構内だけではなく、駅の外にも何軒かある筈だ。そこにはきっぷの在庫が残ってるかも知れないぞ!」と閃いて、同行のLeonaさんとアマフミさんに
「ちょっと駅の外にきっぷを探しに行ってみるので、このままここで僕の荷物を見張って待ってて下さいね。」と言い残して駅の出口へ。
出口のすぐ脇に見つかったタバコ屋に飛び込んで
「ボンジョルノ!ピサまで行きたいんだけど、きっぷはあるかな?」と聞いてみると…
果たして、タバコ屋の兄ちゃんは「はいよ、旦那」とすぐに近距離きっぷを差し出してくれました!
「やった~!思ったとおりだ。これでピサに行けるぞ!!」
かくして、イタリアの鉄道の最高の部分である「おしゃれで快適な高速列車Italo」と最低の部分である「買いたいのに買えないきっぷ」という
“イタリア鉄道の天国と地獄”を味わってしまいましたが、気を取り直してフィレンツェからピサまでローカル線の旅の始まりです。
フィレンツェとピサを結ぶイタリア鉄道
トレニタリアの近郊列車は、高速列車が次々に発着する華やかなサンタ・マリア・ノヴェッラ駅の片隅にある1番線プラットホームのローカル線のりばから発着します。
イタリアの田舎の生活臭が漂ってくるような、鄙びた趣きのあるローカル列車の旅路はどこからか映画「ニュー・シネマ・パラダイス」のテーマ音楽が聴こえてくるようです
(かなり陳腐なイメージですが(笑))。
フィレンツェから約1時間半、列車はピサ中央駅に到着。
今回の旅の最大の目的地である、ガリレオ・ガリレイ生誕の町にとうとうやって来ました!
今日から年明けまで暫くピサで滞在する宿は、町を貫いて流れるアルノ川の対岸にあるB&Bを予約してあります。
僕はこれまで基本的に味気ない男の独り旅ばかりしてきたので、駅前のビジネスホテルのような機能性重視の宿にばかり泊まっていて、B&Bに泊まるのは初めてなので楽しみですね。
中央駅からバスでも行けるようなのですが、ピサの町には着いたばかりで勝手が分からないので駅前からタクシーに乗って向かいます。
これまた生まれて初めてピサのタクシーで乗った日本製のハイブリッド車「プリウス」の奇妙な乗り心地に感心したりしているうちに、アルノ川を渡ってB&B「Affittacamere Delfo」に到着。
住宅地にあるありふれた民家の建物をそのまま使用したようなAffittacamere Delfoの玄関前でタクシーから荷物を降ろして呼び鈴を押したりしていると、ちょうど犬の散歩中にB&Bの様子を見に来たオーナーさんと遭遇。
その場で笑顔で握手を交わし、そのままダイニングキッチンに案内されてレセプションの説明を受けます。
宿の設備の使い方から、近所にある店、そしてピサの町の名所案内まで、一通り詳しく説明を受けると「それでは、どうぞ楽しんで!」という感じで気さくなオーナーさんは自宅に帰り、後は我々で自由にしていいという感じ。
いいですね、B&B!ホテルと違って、なんだか「アパート借りて下宿する」って感じ。
ダイニングキッチンももちろん自由に使っていいので、後で何か食材を買ってきて皆で料理するのも楽しそうです。
そしてAffittacamere Delfoは客室もきれいで豪華。
部屋は広いしベッドもでかいし、水回りもバスタブは無くてシャワーのみだけど清潔です。
これは、かなり「当たり」の宿かも…
でも、なぜか客室に標準装備されていたのがこれ。
VAPEって蚊取りベープかいっ!?…残念ながら日本のフマ◯ラー製ではないようだが
(笑)
オーナーさんも「ピサは冬でもモスキートが出るんだよ~。刺されないように、寝る時はベープ焚いてね」って言ってました。うむむ、イタリアの蚊は恐るべし…
B&Bが快適なので暫くダベっていたい気もしましたが、せっかくピサに来たのです!
一休みしたら、町に繰り出すことにしました。
B&Bのすぐ前の交差点にバス停があり、オーナーさんの説明によると全てのバスが環状運転で必ず中央駅に向かうので迷うことがなく便利!とのこと。
中央駅にはさっき着いたばかりだし、また行く用事もないのでバスには乗らず歩いて出発。
でも、バスを待っていたお婆ちゃんがイタリア語で「あんた達バスに乗るのかい!?どこに行きたいんだね!?」(と思われる事)をナチュラルなイタリア語で話しかけてきてくれたので、
「グラッチェ!時刻表見てるだけですよ」と英語で言うも全く伝わらない…
身振り手振りでどうにか意思の疎通を取るのも、かなり大変だけどこれも旅の愉しみの一つ。
バス停でお婆ちゃんと別れて、B&Bのオーナーさんが「アルノ川の岸辺のここら辺りは、夕陽を見る絶好のポイントだよ!」と教えてくれた場所に向かいます。
途中で道が分からなくなりピサ大学のキャンパスの裏手に迷い込んでしまったり、そこで通りがかりの親切な女性が「アルノ川の岸辺に行くには、旧市街を右折したり左折したりしてああ行ってこう行って…」と丁寧に教えてくれたり。
ピサには親切な人が多いということはちょっと歩いただけでよく分かりました。
そして辿り着いたアルノ川の夕陽の眺めは、なるほど絶景でした!
だんだんと暮れなずんでいくアルノ川とピサの町に、暫し見入ってしまいます…
ピサの旧市街の空に、宵の明星が輝き始めました。
やがて暗闇にピサの街並みが暖かく浮かび上がり、アルノ川の水面に街の灯が美しく映ります。
…そろそろ、帰りましょうか。
帰り途、旧市街の橋のたもとに若いインド人夫婦の営む小さなスーパーマーケットを見つけて、夕食の材料を買い込みます。
イタリアでの夕食といえば…
やっぱりパスタ!
小さなお店にも豊富な種類が揃っている乾麺のパスタと、トマトピューレと玉ねぎ、ハムを買って帰り、B&Bのキッチンに標準装備
(笑)のオリーブオイルとバルサミコ酢を使えば簡単に本格的なパスタが完成!
それに何より、旅する仲間の皆んなで一緒に料理を作るとやっぱり楽しいよね!
→その15:フィレンツェ散歩。花の聖母教会、ヴェッキオ橋に続く