タイヤの空気抜け修理と、ついでに12ヶ月目点検をするつもりでディーラーに持っていった愛車にオイル漏れが見つかり、
急遽そのまま工場に入院してしまった。修理は明日までかかるらしい。
困った事に、ディーラーでは今日は代車が出払っていて用意できないと言う。
仕方がない、「駅まで歩いて、JRに乗って帰るよ」と言うと、
「申し訳ありません、せめて駅まで送らせてもらいます」と、工場の裏から古めかしい「軽トラック」を引っ張り出してきた。
整備士氏に軽トラで駅まで送ってもらう。「何ならご自宅まで送りますよ」とも言われたが、遠慮する。
せっかくいい天気だし、このまま帰るのは勿体ない。
自宅まで散歩がてら、歩いて帰ろうと思ったのだ。ここから自宅までは約10キロ。
JR八代駅から線路沿いに歩く。線路と並行する道路がないので、線路沿いとは言っても急に住宅地に入り込んでしまったり袋小路に突き当たったりする。
やや盛りを過ぎて、葉混じりになった桜が咲いている土手を抜け、春の朝の散歩は気持ちがいい。
20分ほど歩くとJR新八代駅に到着。新八代の構内には博多から地上の在来線を走ってきた特急「リレーつばめ」が駅の高架2階の新幹線「つばめ」乗り場の真横に乗りつけるための渡り線がある。
この渡り線には、「リレーつばめ」が走行する本線以外にももう1本の線路が敷かれている。「フリーゲージトレイン試験設備」である。
フリーゲージトレインは車輪のゲージ(軌間)を自由に変える事の出来る車両。
線路のゲージの違う新幹線(1435ミリメートル)と在来線(1067ミリメートル)の間を自在に行き来する事ができる。
これを使うと、新規の新幹線建設予定の無い地区からでもダイレクトに新幹線に乗り入れる列車を運転する事ができるので、
四国地区や九州の大分地区で導入に期待が高まっているのだが…
ここ新八代では九州新幹線暫定開業時からフリーゲージトレインの実験を行う事を想定して、
在来線と新幹線の渡り線にゲージ変動装置を取り付けて実験開始に備えているが、
新八代駅開業から既に3年目、いまだに一度もフリーゲージトレイン乗り入れ実験は行われていない。
フリーゲージトレインの車両は今でも北九州のJR小倉工場に収められ埃をかぶったままだと聞く。
国としては既存の設備を有効利用できるフリーゲージトレインよりも、施設を一から造るフル規格新幹線の着工の方が興味があるのだろう。
既に錆の浮いてきたゲージ変動装置が稼動する日は果たしてくるのだろうか?
新八代駅で新幹線「つばめ」からバトンを引き継いだ「リレーつばめ」が、フリーゲージ装置の脇を掠めて渡り線を駆け降りて来る。
この誇らしい出発の風景も、2011年に九州新幹線が博多まで全線開業すると消える。リレーつばめが桜の花吹雪を浴びて走れるのも、あと5回…
新八代から先は一面の藺草田。畦道をテクテク歩いて、2時間で自宅に到着した。
くたびれたが、それなりにいい気分だ。春の散歩もたまにはいいな。