スペースシャトル試験機「エンタープライズ」 イントレピッド海上航空宇宙博物館
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摩天楼のNYマンハッタン、タイムズスクエアにも程近いハドソン川に面した86番岸壁には巨大な航空母艦が係留されている。
第2次世界大戦から朝鮮戦争・ベトナム戦争にまで長く戦役に就き、第2次大戦末期には日本海軍の戦艦「大和」を攻撃し撃沈したという戦歴を持つアメリカ海軍の空母「イントレピッド」の退役後の船体をそのまま使った“水上の博物館”、イントレピッド海上航空宇宙博物館である。
このイントレピッド海上航空宇宙博物館には数多くの歴史的な軍用航空機が艦上の滑走路甲板に並べて展示されているのだが、それだけにとどまらず宇宙に関する貴重な機体も展示されている。
それが、スペースシャトル「エンタープライズ」である。
…何故、航空母艦にスペースシャトルが?
と首を傾げたくなるところだが、実はイントレピッドは第2次大戦後にはNASAの初期の有人宇宙飛行計画であるジェミニ計画に参加しており、
地球に帰還した宇宙船ジェミニ3号と搭乗していた2名の宇宙飛行士をフロリダ沖の大西洋上で回収するというミッションを行っている。アメリカの宇宙開発史にも大いに関わりのある船なのである。
その縁で、前代未聞の空母でのスペースシャトルの実機展示が実現したのだろう。
これが、空母イントレピッドの甲板上に鎮座ましますスペースシャトル!
最初に造られて空を飛んだ試験機「エンタープライズ」だ!!

…大きすぎてファインダーに収まりきれない(笑)
この「エンタープライズ」、空母イントレピッドの航空甲板後部に設えられた展示用建屋の中に収められており、見学には通常のイントレピッドの入場券に加えて特別料金が必要。
狭い空母の甲板上の建屋に大きなシャトルの機体を無理矢理押し込めたような感じになっているので、圧迫感を感じるほど間近でスペースシャトルを見ることが出来るのだ。

スペースシャトルの鼻面を真っ正面から、しかもこんなに近くから見ることが出来る。
…それにしても、この位置から見るとなかなか愛嬌のある顔をしているな(笑)

滅多に見る機会の無さそうな脚周りもこの通り、じっくり細部を眺め放題!
さらに見る機会の無さそうなシャトルの尻尾も、真下から見上げてこの迫力!

…見ての通り、「エンタープライズ」には尻尾にロケットエンジンのノズルスカートが見当たらない。
実はこの「エンタープライズ」、スペースシャトルの開発過程で製作された試験機であり、主に地球帰還時の大気圏内での翼を用いたグライダー滑空性能の確認が任務である。
その為に宇宙空間への飛行は当初から考慮されておらず、当然ロケットエンジンも非搭載で、滑空試験前後にジャンボジェットの背中に載せて空輸する際の気流調整用のカバーで尾部を覆われた姿なのだ。
記念すべき最初のスペースシャトルであり、アメリカの大河SFドラマ「スタートレック」のファンの悲願により劇中の宇宙戦艦の名前を冠して華々しく登場するも、結局一度も宇宙に行くこと無く終わった「エンタープライズ」は今、NYのど真ん中で空母に載って静かに余生を送っている…

ちなみに、何故か「エンタープライズ」の尻尾の下にはロシアのソユーズ宇宙船の帰還カプセルも展示されていた。
ソユーズTMA-6と表記されているので、2005年に打上げられた国際宇宙ステーションISSへの往還ミッションらしい。

そして「エンタープライズ」の船体の下にはこんな宇宙船が…
スペースシャトル「エンタープライズ」の名前の由来となった、「スタートレック」に登場する宇宙戦艦U.S.S.エンタープライズ号に搭載された小型シャトルの実物大モックアップのようです(笑)
こういう洒落が利いてるのが、如何にもアメリカの博物館展示だなぁ
そして、こんなものまで…

…確か、映画の中ではジャンボジェットの背中に載って空輸中に突然ロケットエンジンを噴かしてハイジャックされるんだよなぁ。外部燃料タンクも無い状態で一体どうやってロケットエンジンを動かしてたんだろう、謎だ(笑)
…という訳で、狭い展示スペースに玉石混交に色々なものがつめ込まれた、まさにマンハッタンのカオスなおもちゃ箱のようなイントレピッド海上航空宇宙博物館のスペースシャトルでした。
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