火星接近2012天文講演会会場の熊本博物館プラネタリウム室
(鳴海泰典先生の許可を得て写真撮影・掲載しています)
平成24年3月3日、熊本市立熊本博物館プラネタリウム室にて
火星接近2012天文講演会 『3月6日に火星が接近、米国NASAの新しい火星生命探査はじまる』
が開催されました。
講師は九州東海大学( 現 東海大学)名誉教授の鳴海泰典先生。
天燈茶房亭主も朝から
熊本県菊池市での小惑星探査機「はやぶさ」地球帰還カプセル展示を見てから急いで熊本市に引き返し、参加してきました。
少し早めに熊本博物館に着いたので、プラネタリウムで12:15から上映のプログラム
「さよならスペースシャトル-有翼宇宙船30年の軌跡-」を鑑賞。
その後、同じプラネタリウムの中で天文講演会スタートです。
先ず、鳴海泰典先生の略歴紹介。火星探査機「のぞみ」にも関わられた、日本の火星観測研究の第一人者。
京都大学の学生だった頃は花山天文台・飛騨天文台で過ごした。
熊本に来た当初は観測に使える望遠鏡がなかったので、モデル計算の研究を行った。
最近は、世界各国のアマチュア天文家が自分のブログに良い写真をアップしているので
それを見ることが多いとのこと。
ここから本題。
今年の3月6日、火星が地球に少接近する。
火星の大きさは地球の約半分、質量は1/10。密度が小さい。
重力が小さいので大気が宇宙空間に逃げ出しやすく、気圧は地球の1/200(0.006気圧)。
95%が炭酸ガスで、残りは窒素など。
火星の地球大接近と少接近のしくみ。
火星は楕円形軌道なので、遠日点に近い位置での地球接近だと少接近となる。
今回は遠日点での接近なので、地球との距離は1億キロほど。
最近はCCDカメラで撮影するので、少接近時の観測でも良い写真が撮れるようになった。
以前フィルムを使って撮影していた頃には考えられないこと。これには驚かされる。
今回の火星少接近の話題。
2012年1月8日、火星の北半球タルシス山地に白雲が発生している様子が観測された。
火星の北半球では夏場なので、水の雲だと思われる。
1月11日にも継続して白雲が発生していることが観測されている。
白雲の発生する場所は、オリンポス山付近の火山の位置と一致する。
この白雲は、火星が夕方になっても明るく見える。何故か?
夕方には雲に横から太陽光が当たる為ではないか。
このことから、雲の光学的厚さがわかり、雲の量、水蒸気量もわかる。
NASAの新しい火星探査について。
ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機マーズ・エクスプレスが、火星の北半球がかつて大きな海だった証拠を掴んだと発表。
ESAはマーズ・エクスプレスの観測結果から、火星の地下1kmに液体の水が存在するのではないか?と考えている。
NASAのマーズ・グローバル・サーベイヤの観測した地形図での低地と、マーズ・エクスプレスの測定結果が一致している。
NASAのバイキングによる1976年の火星探査では、火星表面からは微生物が検出できず、
この後20年間NASAは火星探査を中止した。
しかし1996年、火星由来の隕石からバクテリアの化石?と思われるものが発見され、
翌1997年NASAは探査機マーズ・パスファインダーで火星探査を再開した。
同年、マーズ・グローバル・サーベイヤが火星の地形図を作成。
2004年、スピリットとオポチュニティが火星に着陸。スピリットは火星でシリカを検出、これは水が存在した証拠となる。
他にもマーズリコネッサンスオービターが夏になると水が流れると思われる地形を発見、
フェニックスは火星に降りてすぐに火星の水と思われる白い物体を発見。
今年夏、
キュリオシティによる新しい探査開始。
2012年8月初めにかつて火星の海と陸との境目だったと考えられるゲールクレーターに到着する。
火星に過去に水が存在していたことはもうわかった。
次の目標は、かつて火星に生命が存在したかどうか。
キュリオシティは火星の岩石・土壌の中の生命関連物質を検出する。
レーザービームによる分光で、岩石の有機成分がわかる。
日本ではどうか。
火星探査機「のぞみ」以降、小惑星探査機「はやぶさ」や金星探査機「あかつき」が旅立ったが、
残念ながら「のぞみ」の第2世代の探査機はまだ具体化していない。
でも、日本でもアマチュアの天文家はいい観測写真を撮って活躍している。
…以上、約1時間で非常に中身の濃いお話を伺うことが出来ました。
(少し時間が足りなかったかな?あと30分は欲しかったですね)
それでも最後に少しだけ質疑応答の時間が設けられたので、質問させていただきました。
Q:キュリオシティのサンプル採取用ドリルが滅菌処理されないままだったことが判ったと聞いたが、
火星での探査に影響は出ないのですか?
A:地上にバックアップ用のモデルがあるので、機械的なトラブルならこれを使って検証できるが、滅菌処理となると…
でも、キュリオシティの探査のメインはあくまでレーザー分光ですから。
…う~ん、ホントにどうなるんでしょうね?ともあれ、夏の火星到着を待つことにしましょう。
鳴海泰典先生、ありがとうございました!
2012天文講演会が終わってから、
もう一度プラネタリウム室に入って
「HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-」を鑑賞。
HAYABUSAは今でも大人気のプログラムで、週に一回土曜日の夕方に上映延長のロングランを続けているのです。
…そして僕がこの次にHAYABUSA -BACK TO THE EARTH-を観るのは、
多分ドイツのプラネタリウム・ハンブルグで上映が始まった
Hayabusa - Zurück zur Erde(HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-ドイツ語版)になります。
(ゴールデンウィークに、ハンブルグにHAYABUSA -BACK TO THE EARTH-ドイツ語版を観に行くのです)