Trakiški geležinkelio stotelė
←19:Bialystok 「HANCZA 」号にトラブル発生!からの続き
Białystok駅を発車した「HAŃCZA」号は、これまでのトラブルで生じてしまった1時間の遅れを取り戻そうとばかりに
かなりの速度で飛ばしていきます。
Białystok駅では列車の先頭に立つ機関車が非電化区間用の大型ディーゼル機関車に交換されましたが、
同時に編成の後方では何輌かの2等車の客車も切り離されました。
編成が短くなったせいか、列車の足取りも軽くなったようです。
…でも、どうせ編成を切り離すなら、さっき床下機器にトラブルが発生して列車の遅れの原因になっていた客車も
わざわざ操車場に引き込んで修理しなくても、さっさと切り離して置いて行っちゃえばいいのにな。
敢えてそうしないのがポーランド国鉄の流儀?(笑)
国境地帯を目指し走る「HAŃCZA」号の車窓には、美しい森林と田園風景が交互に現れるようになりました。
「HAŃCZA」号の頑張りはたいしたもので、駅に到着する毎に遅れが回復していきます。
国際列車を大幅遅延させてリトアニアに迷惑をかける訳にはいかぬとばかりに、ポーランド国鉄が本気を出したようです!
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やがて車窓には針葉樹林越しに、凍結した湖が見えてきました。
ポーランドとリトアニアの国境地帯は森と湖が散在する湖水地方となっており、
コテージや、湖の湖畔にプラットホームを設えた臨時駅のようなものもあります。
夏のシーズンにはこの辺りも、観光客が訪れるリゾート地になるのかも知れません。
ちなみに今乗っている列車の「HAŃCZA」号という愛称も、この湖水地方にある湖の名前から取られているようです。
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午後1時過ぎ、赤レンガの重厚な駅舎が印象的なSuwałki駅に到着。
この時点で、列車の遅れは半分の30分にまで縮まりました。
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Suwałki駅でリトアニアに向かう路線とポーランド国内北部へと向かう路線が分岐する関係で、
「HAŃCZA」号は“機回し”を行い、進行方向を変えます。
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Suwałki駅を発車し、雪に覆われた原野の中を進む「HAŃCZA」号。車窓にはいかにも国境地帯らしい景観が広がります。
そしてこの先の区間を走る旅客列車は、1日1往復の「HAŃCZA」号だけなのです。
午後1時45分、ポーランド国内で最後の停車駅であるTrakiški駅に到着。
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Trakiški駅を出たら、もう終点であるリトアニアのSestokai駅まで停車駅はありません。
辺りの風景はいよいよ荒涼としてきました。無人の原野が、地平線の向こうのリトアニアまで広がっています…
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/a1/8c7f69b46f6f5debe6cfed4d00d0e4ae.jpg)
リトアニア共和国は1990年のバルト三国独立までは、ソビエト社会主義共和国連邦に組み込まれていました。
同じくポーランドもソ連の衛星国であり、つい20年ほど前まではこの辺りは「鉄のカーテン」の向こう側。
しかも軍事的に重要な国境地帯ということで、
“西側自由主義陣営”からの旅行者が足を踏み入れる等ということは絶対に不可能だったことでしょう。
今こうして、誰もがパスポートさえ携えていれば自由に列車に乗ってここへやって来ることが出来るということは、
本当に素晴らしいことだと思います。
そして…この自由を手にする為に、多くの人が闘い血を流し、苦難を耐え乗り越えてきたことを忘れてはならないと感じます。
世界を自由に旅することを愛する者として、自由のために闘った人々に感謝の気持を捧げずには居られません。
午後2時7分頃、「HAŃCZA」号は時刻表には載っていない駅を通過しました。
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恐らく、ここがMockava国境駅。
ポーランドとリトアニアが共に、欧州の国境での入国審査を撤廃する「シェンゲン協定」に参加した2007年までは、
ここで列車の乗客の出入国管理が行われていたのでしょう。
今ではパスポートコントロールも行われないので、1日1往復だけの旅客列車である「HAŃCZA」号も素通りしてしまいます。
しかし、実は僕はこの駅である手続きが必要となります。
僕の持っている中欧5カ国の列車が乗り放題となるヨーロピアンイーストパスは、リトアニアでは有効ではないのです!
でも大丈夫。
事前に国境のMockava駅から終点のSestokai駅までの乗車券をヨーロピアンイーストパスと同時に手配しておいたので、
安心して素通り出来ます。
さあ、いよいよ初めての国、リトアニア国内に入ります!!
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Mockava国境駅の構内を出る分岐機を渡るところで、面白いことに気が付きました。
どうやら、この先の区間はポーランドから続くヨーロッパの鉄道線路の規格である標準軌(線路幅1435mm)よりも線路幅が広い
ソ連規格の広軌となっているようなのです。
「HAŃCZA」号は、明らかに今までより幅の広い線路に乗り移ったように見えました。
しかし、Mockava国境駅では停車せずに通過してしまったので、
もちろん車輌の台車を標準軌のものから広軌のものへと履き替えたりはしていません。
(ポーランドからベラルーシへと直通する国際列車では、実際に国境駅で台車の履き替えを行なっているそうですが…)
一体どうなっているのかと、列車の最後尾の車輌へと行って後方の景色を見てみると…
何と、レールが4本も敷かれています!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/f6/068363d10f8fcf751d97ff3db403ac47.jpg)
どうやら標準軌と広軌の線路を互い違いに敷設しているようです。
レールを3本並べて、2種類の線路幅に対応できるようにした「三線軌条」は世界中で割とよく見かけますが、
4本も並べた「四線軌条」というのは初めて見ました。
傾いた冬の太陽が、四線軌条のレールを穏やかに照らしています。
夕暮れの近づいたリトアニアの雪と氷の原野を、ラストスパートです!
午後2時半頃…
いや、ポーランドとリトアニアの間には1時間の時差があるので
1時間進んで午後3時半頃。
国際列車「HAŃCZA」号は約30分遅れで終着駅Sestokaiに到着しました。
ワルシャワから7時間半の旅でした。
→21:Sestokai 終着駅、そして鉄路は続くに続く