←その6:ハンブルグの休日からの続き
プラネタリウム・ハンブルグ
Planetarium Hamburg は日本の旅行ガイドブックでは紹介されていない場合が多いようですが、
緑豊かな市立公園の中にあり多くの市民が訪れる、ハンブルグでは大変有名で人気のある場所だそうです。
そしてここで現在、小惑星探査機
「はやぶさ」の壮大な旅路を超高精細CGで描き上げた全天周プラネタリウム映像作品
HAYABUSA - Zurück zur Erde (
HAYABUSA-BACK TO THE EARTH-ドイツ語版)の
ヨーロッパ・プレミア上映が行われているのです。
僕たちは、今日この場所でHAYABUSA - Zurück zur Erdeを観るために、遥々日本からやって来たのです。
Uバーン(地下鉄)3号線に乗って、“約束の地”プラネタリウム・ハンブルグへ向かいます。
borgweg(市立公園)駅で下車。この辺りではUバーンも地上を走っていますね。
borgweg駅から徒歩数分で、鬱蒼とした木立に囲まれた市立公園の森の中へ。
ヨーロッパ有数の大都会ハンブルグの市街地中心部に、こんな森があるなんて信じられません。
街の喧騒も消えて、森の静寂の中に鳥の鳴き声が響き渡ります。
そして、森の小路を歩いて行くと…
突如、視界が開けて、
木立に囲まれた庭園の中にそびえ建つ威厳のある建物が現れます。
プラネタリウム・ハンブルグPlanetarium Hamburg です。
まるでレトロフューチャーなSF映画に登場する宇宙研究所か天文台のような独特の外観は、
この建物がプラネタリウムとして使われるようになる以前は、ハンブルグ市の水道の給水塔だったからだそうです。
高い塔の中には、巨大な水タンクが収められていたのですね。
現在では、水タンクの遺構はそのままプラネタリウムのドームとして再利用されているという訳です。
早速、プラネタリウム・ハンブルグの館内へ入ってみましょう。
館内はきれいに手直しされていますが、給水塔時代の名残りなのか壁や柱が同心円上にカーブを描いていますね。
エントランスホールにはプラネタリウムの資料が展示されています。
この建物の断面図がありました。上下に2つの球型タンクが重なっている構造になっていることがわかります。
このうち、下のタンクが現在のプラネタリウムのドームですね。
上のタンクはがらんどうのまま残されているそうで、先日ここを訪れられたHAYABUSA-BACK TO THE EARTH-(HAYABUSA - Zurück zur Erde)の
上坂監督ご夫妻は実際に上のタンクの中に入ってみたりされたそうですよ。
(※参考→上坂浩光監督のblog「星居Webブログ 2012年02月05日 ハンブルグ3日目(午後はお仕事)」)
資料展示の一角には新聞記事等のスクラップを集めたコーナーもあり、
HAYABUSA - Zurück zur Erdeのヨーロッパ・プレミア上映が始まったことを報じた記事も貼り出されていました。
当地でも、日本の小さな宇宙船の大冒険を描いた作品の上映は相当話題になっているようです。
プラネタリウム・ハンブルグは建物の外観はレトロですが、その中身は最新鋭のシステムを備えたハイテクプラネタリウムです。
映写機器類等のハードが最新鋭なのは勿論ですが、ソフト面でも最新鋭ぶりが徹底しています。プラネタリウム番組の鑑賞チケットがすべて事前に公式サイトでネット予約出来るのです。
HAYABUSA - Zurück zur Erdeはかなりの人気プログラムらしいので、僕も念の為に今日のチケットは日本を出発する前に予め自宅のパソコンを使ってネット予約しておきました。予約フォームがすべてドイツ語表記なので少々戸惑うこともありましたが、ドイツ語機械翻訳サイトを使って用語を読み解きながらスンナリと予約を済ませることが出来ました。
だから今日はエントランスの奥にあるチケットカウンターで、プリントアウトした予約フォームを見せるだけでOK!
カウンターの係員さんは、僕たちが日本人であるとわかると「ちょっと待ってて。日本語対応の音声案内ヘッドフォン貸してあげるから」と声を掛けてくれます。スタッフの気遣いもGoodです。凄いぞプラネタリウム・ハンブルグ!
プラネタリウムのドームに入る前のコンコースには、美しい星座図の天井画が描かれています。
ここにはグッズ類やスナック、飲み物を販売するカウンターもあります。飲み物はアルコール類も揃っていて、本当に「プラネタリウムは大人の社交場」という雰囲気。日本のプラネタリウムが基本的に「子供の教育」を主題としているのと対照的ですねぇ。
プラネタリウム・ハンブルグのオリジナルグッズ、日食をあしらったロゴ入りTシャツを見つけて、即購入。
これは帰国後、5月21日の金環日食の観望会で着るのにピッタリですね!
(実際に金環食の日に着ちゃいました(笑)→見えた!太陽のリング ~金環日食2012~)
いよいよドームに入ると、居ました居ました“御本尊”が!
プラネタリウム・ハンブルグの要となる投射機、ドイツが世界に誇る老舗カールツァイス社製の名機
The UNIVERSARIUM Mark IXです!
日本の名古屋市科学館にある世界最大の35mドームを持つプラネタリウム「Brother Earth」に設置された投射機と同じものですね。
日本国内のプラネタリウムと比べると上映前からかなり暗めのドーム内で、ネット予約時に指定しておいた席をちょっと難儀しながら探して、着席。
今日は日曜日ということもあってか、家族連れやグループ客が多く来場していて殆んど満席です。やっぱり事前にネット予約しておいて良かった!
上映前にスタッフから簡単に内容説明らしきものがあり、すぐに上映スタート。
…眼の前のドームに、もうすっかり見慣れたHAYABUSA-BACK TO THE EARTH-のオープニングの星空が広がります。
もうすっかり耳に馴染んだ心躍る旅立ちのテーマ曲が鳴り響き始めます。
でも、ドーム内に静かに流れる語りは、いつもの篠田三郎氏の声ではありません。
篠田氏同様に落ち着いた、でも時に力強く語られるドイツ語です。はやぶさに親しみを込めて語りかけるドイツ語です。
HAYABUSA - Zurück zur Erde…
僕の目の前で、HAYABUSAがドイツの街の宙(そら)に、いま羽ばたきました!
もう何度も何度も繰り返し観て、すっかり憶えてしまったHAYABUSA-BACK TO THE EARTH-が、ドイツの言葉で語られると新たな魅力と感動を持って心に染みこんできます。
僕はドイツ語は全く理解できないのに…不思議ですね。
そして、ドイツの観客たちも皆、HAYABUSAの物語に魅せられているのが手に取るようにわかるのが本当に嬉しかった。
機械を擬人化するという手法は、欧米の人にはあまり理解されないという話を聞いたことがありますが、少なくともHAYABUSA - Zurück zur Erdeではそんなことはありませんでした。
みんな、宇宙を旅する愛すべきHAYABUSAを「生きているもの」として見つめていました。
小惑星探査機の旅路を通して語られる生命の物語を見つめていました。
物語の終わりに、流れ星となり星空を駆け抜けるHAYABUSAと生命を次世代に繋いだカプセルの姿を見た時、観客の心に灯る想いは日本人もドイツ人も変わらない。
世界中のすべての人々が、きっと変わらぬ同じ想いを抱く。僕はそう確信しました。
本編上映終了後、日本のニュース映像も交えてスタッフから改めて丁寧な「はやぶさ」のミッションに関する説明があり、HAYABUSA - Zurück zur Erdeの上映は終了しました。
4月末現在では帰還バージョンではなくオリジナルバージョンでの上映でした(これは近日中に帰還バージョンに切り替えられる予定だそうです)。
そうそう、結局殆んど聴かなかったのですが、貸してもらった音声案内ヘッドフォンは日本語を始め数ヶ国語に対応、日本語は篠田三郎さんのオリジナルの音声トラックをそのまま使用していた模様です。
ドームから出ると、喜びが胸にこみ上げて来ました。
カウンターで飲み物を買って、皆で給水塔の最上階に登ります。
この景色を見ながら、
乾杯!!
地上に降りてもまだ嬉しくて、皆でポーズを決めて記念写真!
やったー!!はやぶさ超最高!!
→その8:プラネタリウム・ハンブルグこぼれ話に続く