今年(2013年)3月24日に営業運転を開始したばかりの、
九州の第三セクター鉄道・肥薩おれんじ鉄道の観光列車
「おれんじ食堂」。
日本で始めての、鉄道の車内でのお洒落な食事を楽しむための本格的ランチクルーズ列車として話題の、
この「おれんじ食堂」に僕も今日、乗車して来ました!
九州の西海岸、東シナ海と不知火海に沿って海を走る優雅な午后のランチクルーズの様子を、是非ご覧下さいませ!
「おれんじ食堂」は熊本県の新八代駅から鹿児島県の川内駅までの間で折り返しながら1日3便運行。
今日は、川内から新八代まで走る2便目の
「おれんじ食堂2号」に乗車します。
九州新幹線で川内駅に降りたって、乗り換えの肥薩おれんじ鉄道乗り場に行くと
濃紺の車体の「おれんじ食堂」が待っていました。
改札口で、シェフエプロン姿が凛々しい「料理長」氏(?)に事前に手配していた予約バウチャーを見せて、
ウェイターさんに予約席まで案内してもらいます。
気分はまさに、三ツ星高級レストランでの昼食!
それでは、「おれんじ食堂」の“店内”を見てみましょう!
「おれんじ食堂」は2輌編成で、それぞれ車内インテリアが異なります。
フルコースの食事を予約した乗客が案内される1号車の車内はこの通り、まるでホテルのレストランのダイニングルーム!
進行方向に沿って大きな長テーブルが据えられ、椅子が並ぶという、
まるで古き良き時代の欧州の国際寝台列車オリエント急行の食堂車を思わせるインテリアです。
厨房はオープンキッチンスタイル。
「おれんじ食堂」で出される食事は沿線の有名レストランやホテルで予め仕込まれてから列車に積み込まれるので、
ここでは料理の最後の仕上げと盛り付けが行われるようです。
飲み物のボトルが並んでいて、バーカウンターのような使われ方も想定しているようですね。
長テーブルだけではなく、海側の窓に沿ったカウンターテーブルも用意されています。
食事中に海がよく見える区間に差し掛かると、このカウンターに移動することも出来るんですね。
窓際に鎮座する、沿線名物の巨大かんきつ類「晩白柚(ばんぺいゆ)」が可愛らしいです。
運転席の後ろは記念撮影コーナーと、子どもたちのための特等席!
列車の前面展望を楽しめる、小さな子ども用座席が用意されていますよ。
運転席と反対側のデッキには、コーヒーサーバーが置かれたカフェラウンジコーナー。
ちょっと一息コーヒーブレイクできる、こちらは大人のためのスペースです。
のれんをくぐって、隣の2号車へ行ってみましょう。
2号車は食事を取らない乗客も利用できる、リビングルームのようなインテリアとなっています。
海側には小テーブルを挟んで向かい合う席が並び、その反対側はカーテンで仕切られた個室風のソファ席です。
ソファ席は、海の眺望を犠牲にしている分だけ豪華なつくりです。
こちらは車窓の景色よりもプライベートな時間を楽しみたいカップル向けかな。
2号車には厨房が無く、代わりにトイレがあります。
トイレの周りが、なぜか沿線の民芸品を展示したショーケースになっているのが楽しい!
デッキにはこんなものも。
車内はとにかく、遊び心のある仕掛けであふれています。
こんな楽しい列車の仕掛け人は、もちろん!ご存知あの方…
そう、ドーンデザイン研究所を率いる
水戸岡鋭治先生です!
車内にはメーカーズプレートと並んで、しっかり“四つリンゴ”のドーンデザインマークも掲げられています。
水戸岡デザインの技が光る車内を見ているうちに、発車時刻になりました。
午後2時過ぎ、「おれんじ食堂2号」は川内駅を出発!昼下がりのシーサイドラインを巡るランチクルーズが始まります。
今日はあいにく子どもたちのお客さんは乗車していないようで、特等席は空席です。
なのでつい、「大きなお友達」も遠慮無く前面展望かぶりつきに夢中になってしまうんですよね~
でも、今日はお洒落な大人のランチクルーズ。そろそろ食事の時間です。自分の席に戻りましょう。
今日は伯母と同行しているので、大部屋ダイニングルームの1号車ではなく、
相席の客を気にせずくつろげる2号車の海側テーブル席をリクエストして予約しておきました。
2号車は本来は食事とセットで予約しない乗客向けなのですが、希望すれば1号車と同等の食事コース込みの
フルパッケージのサービスも受けることが出来るのです(もちろん、追加料金がかかります)。
本日の食事コースのお品書きが配られます。
「おれんじ食堂」は運行便ごとに食事のメニューが異なり、さらに月替りでメニューが変わるという凝りようです。
今日の「おれんじ食堂2号」の食事コースは、
始発駅の川内駅がある薩摩川内市の八重山で育った黒豚を使用した
「黒豚膳フルコース」。
料理が運ばれてくるのを待つうちに、列車は東シナ海の海沿い区間を走ります。
前菜は
特製オードブルバスケット。
ボリューム満点で、これだけでランチセットになりそう。
この素晴らしい車窓の眺めを見ながら食べる料理が、美味しくない筈がないですよね!
海と美味を愛でる、ランチクルーズはまさに至福のひと時。
オードブルバスケットを食べ終わった頃、阿久根駅に到着。
阿久根駅には、
かつてこの区間を経由して鹿児島と関西を結んでいたブルートレイン「なは」号の寝台車を使ったライダーハウスがあります。
阿久根駅で余生を送るブルートレインは、新しく登場した青い車体の観光列車を横目に静かに昼寝をしているようでした。
阿久根駅に停車中に、メインディッシュが運ばれてきました。
黒豚三種盛り、ポークシチューとポークコロッケ、そしてミートパイ。付け合せは温野菜。
阿久根駅を発車すると、阿久根のお土産が配られました。ぼんたんの砂糖漬けです。
メインディッシュに続いて、締めは
ちりめんと桜塩漬けのお茶漬け。
デザートは
キャラメルアイスクリーム。
食後の飲み物は、搾りたてのフレッシュジュースとコーヒー。
フレッシュジュースは車内のオープンキッチンのジューサーで絞っているようで、繊維質たっぷりでほろ苦い爽やかな味でした。
食事が終わる頃には、列車は熊本県内に入り水俣駅を発車しています。
水俣のお土産として、4種類のみかん詰め合わせと瓶詰みかんジュースが配られました。
水俣駅の次は、佐敷駅に停車。
佐敷駅では10分ほど停車。
フルパッケージのサービスを受ける乗客には、駅のプラットホーム上でお土産のカレーパンが配られたようです。
お土産は伯母さんに任せて僕は、列車の撮影タイム。
佐敷から先は、列車は不知火海に沿って走ります。
岩の海岸に荒波が打ち寄せる外海の東シナ海と違って、内海の不知火海は波静かな渚に干潟が広がる穏やかな風景。
長い午後の春の海に、少しづつ傾きかけた陽射しが降り注ぎます。
眠気を誘うような、気怠く微睡む海の旅…
眠気覚ましのおやつは、日奈久温泉のお土産の竹輪。
そして、八代の名産トマトを使ったトマトジュレ。
列車はトマトの名産地・八代を目指しラストスパート。
日本三大急流の球磨川を渡ると、もう八代駅に到着です。
「おれんじ食堂2号」は、九州新幹線との接続駅である一つ先の新八代駅まで足を伸ばします。
午後5時過ぎ、「おれんじ食堂2号」は無事に終着駅の新八代に到着。
美味しく楽しい、そして思いっきりのんびりと鉄道の旅を楽しめたランチクルーズでした!
列車は新八代駅に到着後、すぐに「おれんじ食堂3号」として折り返し発車していきます。
「おれんじ食堂3号」は夕暮れの海と夜景の車窓を、お酒も飲みながら楽しめるとのこと。
この次は、もっとエレガントで大人な雰囲気の、夜のおれんじ食堂も楽しんでみたいですね!
…いかがでしたか?
日本初の本格的ランチクルーズ列車「おれんじ食堂」の旅。
今年は秋に、これまた水戸岡鋭治先生プロデュースで日本初の本格的な超高級クルーズ寝台列車「ななつ星in九州」も
デビューが予定されており、
水戸岡先生が描き続けてきた九州の鉄道ルネッサンスも成熟した新たな時代を迎えようとしている感があります。
これからも日本の、いやアジアの鉄道と生活文化を、想像もしなかった未来へと牽引していこうとしている
水戸岡鋭治+ドーンデザイン研究所の活躍からは目が離せそうにありません。
「我々の生活は、これからどれだけ楽しくなれるんだろう…」
そんなことを考えながら、素晴らしい車窓と美味を味わうランチクルーズを満喫するのもまた一興かもしれません。
皆さんも是非、「おれんじ食堂」で楽しいひとときを!
その時はまた、車内でお目にかかりましょう。
(終)