今週末、
熊本県民天文台の開設30周年を記念しての講演会が熊本市内で2日間に渡って開催されました。
僕も勿論参加してきました!以下、初夏の熊本での宇宙科学講演会ツアーの様子をレポートします。
第一日目 平成24年5月12日(土曜日)
宇宙科学講演会ツアーの初日は、熊本市中心部の公園の奥にある
中央公民館から。
会場の公民館地下ホールは、昭和レトロな雰囲気が漂います。
パイプ椅子が並ぶ講演会場は開催時間までにほぼ満席になりました(百名以上の方が参加されたそうです)。
参加者には明日の講演会の手作りパンフレットが配られました。僕は明日も行きますよ~(笑)
さて今日の講師は、ご存知
“JAXAのイケメン天文学者” 阪本成一先生(写真右)。
阪本先生は今日は熊本市東部公民会での講演会に引き続いて2回目の講演、今日から熊本市に3日間に渡って滞在されるそうですが、その間は「熊本の住人になりきって」一般向けと小学校中学校の児童生徒向けの講演を合計7回もこなされるとか。本当にお疲れ様です。
司会進行を務められた熊本県民天文台の
艶島台長(写真左)によるご挨拶に引き続いて、午後3時から阪本先生の講演会スタート。
阪本先生は昭和40年生まれ。高度成長期の公害や光害等で一番、夜空に星が見えにくかった世代。東京では星座は見えず、星は明るい惑星くらいしか見えなかった。
それでも天文学の道に進むきっかけとなったのは、カール・セーガンの「コスモス」の影響。
大学に入ったが、春は浮かれる季節(笑)。
先輩から「大学生活4年間でやらねばならないことは何か!?それは一つのことに取り組むこと!!という訳で、君!ボートを漕がないかね?」
「( ゜Д゜)ハァ?」
というようなやり取りがあってボート部へ入り、大学時代はひたすらボートを漕ぐ毎日。
まあ今では僕が新入生に「君!ボートを漕がないか?」と声を掛けてるけど(笑)
でも、ボート部で頑張った経験がその後の研究者生活に活かされた。
そして、科学とスポーツがいかに国民に力を与えることか。昔は力道山、今はなでしこジャパン!
…等々、楽しい語り口で宇宙科学に対する取り組みと小惑星探査機「はやぶさ」の挑戦について語って下さいました。
第二日目 平成24年5月13日(日曜日)
一夜明けて、宇宙科学講演会ツアー二日目は熊本県民天文台にも程近い
火の君文化センター城南公民館にて開催。
今日も会場には多くの参加者が詰めかけて大盛況。熊本地方でも宇宙熱の高まりを着実に感じます。
艶島台長と公民館スタッフの方のご挨拶に引き続き、二日目の講演会スタート。
今日は鹿児島大学物理宇宙専攻の半田利弘先生の講演
「なんと素敵なこの銀河~天の川銀河の謎~」から。
天の川とは何かという話から始まり、
テニスボールとビーズを使っての太陽系の天体の大きさとスケールを実際に熊本市内繁華街各所で先生ご自身が撮影された写真と当て嵌めての実感的な説明、
そして国立天文台の電波天文学、VLBIによるVERAプロジェクトまで。
宇宙と星が好き、そして何より天の川銀河が大好きな半田先生の情熱と愛情を感じる、とても熱いお話でした。
(そして半田先生、かなりの「鉄道好き」とお見受けしました。天の川の説明資料に登場した鉄道車輌のイラストのこだわりと精巧さが半端じゃなかったです(笑)
何しろ、鉄道に関する著書まで書かれているそうなので…)
休憩時間、艶島台長による来週5/21に迫った金環食の観測方法レクチャー。
ピンホール板を用いた安全で楽しい観測法の紹介がありました。熊本県民天文台では鹿児島県志布志への金環食観測ツアーも企画されているそうです。
引き続いて、午後3時からは
阪本先生が登場。
「この3日間は、僕は熊本の人だから。地元のためなら何でもやります(笑)」
小学校と中学校での連続講演の話しから「小学生と中学生は似てるところがあるけど、小惑星と惑星は全然違う」と、小惑星探査の意義についての説明。
サンマの生態を調べるのに、塩焼きのサンマを調べても困る。「この網目模様は何だ!?」「落ち着け、それは焼き網の跡だ!」というようなことになる。
だから、生のサンマを一本釣りしてクール宅急便で研究施設に持ち帰ることが必要となる。それをやったのが小惑星探査「はやぶさ」。
「はやぶさ」の地球脱出速度はマッハ33が必要。ダルビッシュはたったの時速150キロでしか投げられない。新幹線の「はやぶさ」でも時速300キロ、だいぶ頑張っているがまだ全然足りない。
それだけの速度を稼ぐために、ロケットの重量の大部分は燃料の重さが占める。
ちなみに「ウルトラマン」はマッハ5で飛ぶが、これでは全然速度が足りない。空気抵抗がなくて角度45度で飛び立ったと仮定して計算してみると、彼はせいぜい300キロ程度の距離しか飛べず海に飛び込むことになる。「光の国」はそんなに近くない筈(笑)
「はやぶさ」帰還後、小惑星イトカワで採取した眼に見えないサイズの微粒子をカプセルから取り出すのが大変だった。
「微粒子を日本全国で巡回展示したいのだけど…」と聞くと微粒子取り出しの担当者は「お前!どの口でそんな事言いやがって!!」と激怒。
「お前が自分でカプセルから微粒子拾い出したら巡回展示してもいい」と言われた(笑)
「はやぶさ2」はもうハラハラドキドキはさせない。ワクワクさせるだけでいい。もう絶対、映画を3本も作らせたりしない!(笑)
「はやぶさ」の弟は出来が良いし、爆弾で小惑星の地表を吹き飛ばすなど「肉食系」。
後半ではALMAの話題と、つい先日チリで事件に巻き込まれ亡くなられた国立天文台のALMA担当研究者、森田先生への追悼。
森田先生は阪本先生の同僚であり、先輩の研究者だったそうです。
最後に質疑応答では映画の「宇宙兄弟」に搭乗するNASAの有人ロケットについての質問もありましたが、
「『宇宙兄弟』はJAXAが全面的に協力していて、極めてリアル。無駄にリアル(笑)。何しろNASAのゴダード宇宙センターの会議室の写真まで資料として欲しがられた程。そんな細かいものまで用意出来るわけ無いだろー!(笑)」とのこと。
映画「宇宙兄弟」は僕もまだ観ていないのですが、早く観たくなって来ました!
…そして気がつけばもう終了時間の午後5時。
かくして、二日目の午後一杯使った講演会も大盛り上がりのうちに終了。
熊本での宇宙科学講演会ツアーは無事に幕を閉じたのでした。
半田利弘先生、阪本成一先生、そして艶島台長、今回は楽しい宇宙講演会ツアーをありがとうございました!!
でも、阪本先生は明日は小学校と中学校を回っての宇宙授業なんですよね。本当にお疲れ様です!
(出来れば僕も明日は小学生や中学生に混じって阪本先生の授業受けたいんですが…w)