今回の研究では、20年以上にわたるハッブル宇宙望遠鏡の観測データから、天の川銀河最大の球状星団“オメガ星団”の中心に、太陽の8200倍の質量を持つ中間質量ブラックボールが存在する強力な証拠が発見しています。
この発見は、ブラックホールの進化におけるミッシングリンクと考えられている中間質量ブラックホールの形成と成長に関する重要な手掛かりとなるはずです。
天の川銀河の中で最大の球状星団
オメガ星団(NGC 5139)は、ケンタウルス座の方向約1万7700光年彼方に位置する球状星団です。
肉眼でも観測が可能で、南半球の星空観察の愛好家にとって人気のある天体一つでもあります。
球状星団は、星団のうち数百万個以上の恒星が重力で集合し、概ね球状の形をとったものを球状星団と呼びます。
数百光年以内に数万個以上の恒星が密集しています。
オメガ星団を構成する星々の数は約1000万個で、その規模は天の川銀河の中で最大の天体になります。
オメガ星団は、その巨大な規模だけでなく、他の球状星団とは異なるいくつかの特徴を持っています。
例えば、通常の球状星団よりも高速で回転していて、その形状は著しく平坦です。
また、他の大きな球状星団に比べて約10倍も大きく、小さな銀河に匹敵するほどの質量を持っています。
これらの特徴は、オメガ星団が過去に経験した複雑な進化の歴史を示唆していて、その中心に中間質量ブラックホールが存在する可能性を高めるものとなっています。
確実な発見例がほとんど無いブラックホール
ほとんどの銀河の中心には、太陽の100万倍から100億倍の質量を持つ“超大質量ブラックホール”が存在すると考えられています。
私たちの天の川銀河の中心にも、太陽の400万倍の質量を持つ超大質量ブラックホール“いて座A*(エースター)”が存在しています。
また、大質量星が超新星爆発を起こした後に誕生する、太陽の数倍~数十倍程度の質量を持つ“恒星質量ブラックホール”も宇宙には多数存在しています。
一方で、存在は予測されていても、確実な発見例がほとんど無いブラックホールもあります。
それが、太陽質量の100倍~10万倍という“中間質量ブラックホール”です。
超大質量ブラックホールは、恒星質量ブラックホールが合体を繰り返すことで形成されたとも考えられています。
なので、この2つのブラックホールの中間くらいの質量を持つ中間質量ブラックホールもあるはずなんですねー
このことから、中間質量ブラックホールは、ブラックホールの進化過程を理解する上で重要なカギを握ると考えられています。
でも、これまでその候補天体は、ごくわずかしか発見されていませんでした。
今回のオメガ星団における発見は、中間質量ブラックホールの形成場所や、その成長過程を解明する上で、貴重な手掛かりとなる可能性があります。
1.恒星質量ブラックホール
太陽の数倍から数十倍の質量を持つ、比較的小さなブラックホール。
大質量の恒星がその一生の最期に、自身の重力によって崩壊して形成されると考えられている。
2.中間質量ブラックホール
太陽の数百倍から数万倍の質量を持つブラックホール。
恒星質量ブラックホールと超大質量ブラックホールの中間に位置し、その形成過程や進化についてはまだ多くの謎が残されている。
3.超大質量ブラックホール
太陽の数百万倍から数十億倍という、非常に大きな質量を持つブラックホール。
ほとんどの銀河の中心に存在すると考えられていて、銀河の進化と密接に関係していると考えられている。
何らかの強い重力源の影響を受けている7つの星
ブラックホールは、極めて高密度で強い重力を持つ天体で、光さえも脱出できないので直接観測することはできません。
そのため、ブラックホールその存在を知るためには、周囲の天体の動きへの影響から間接的に推測されてきました。
そこで、今回の研究では、ハッブル宇宙望遠鏡が20年以上に渡って撮影した、500枚以上のオメガ星団の画像データを使用。
これらの画像は、当初ハッブル宇宙望遠鏡の機器の調整を目的としたものでした。
それらの画像が結果的には、星団の中心付近の星の動きを長期間にわたって追跡するのに、理想的なデータセットになった訳です。
研究チームは、これらの画像データから、星団中心付近にある約140万個の星の速度を測定し、その動きを分析。
その結果、7つの星が星団の重力から脱出してしまうほどの非常に速い速度で移動していることが明らかになります。
これらの星は、通常の進化過程では説明できないほどの高速で移動していたんですねー
この7つの星の速度と軌道は、星団の中心に、目に見えない非常に重い天体が存在していることを強く示唆していました。
このことから研究チームが考えたのは、これらの星を星団の中心に繋ぎ止めている重力源は、中間質量ブラックホールである可能性が非常に高いということ。
最終的に本研究では、7つの星の高速な動きを説明するために、星団の中心に太陽の約8200倍の質量を持つ中間質量ブラックホールが存在すると結論付けています。
今回の発見は、中間質量ブラックホールの存在を示す強力な証拠と言えますが、まだ確認には至っていません。
このため、研究チームはブラックホールの質量や位置をより正確に特定するのに、さらなる観測を計画しています。
特に、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による観測は、オメガ星団の中心に位置するブラックホールの謎を解明する上で、重要な役割を果たすと期待されています。
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡は、ハッブル宇宙望遠鏡よりも高い感度と解像度で観測することができるので、ブラックホール近傍の星の動きを、より詳細にとらえることが可能になります。
オメガ星団の中間質量ブラックホールの研究は、ブラックホールの形成と進化、そして銀河の形成と進化の関係を理解する上で、重要なカギを握っています。
今後の観測と研究の進展により、これらの宇宙の謎が解き明かされることが期待されます。
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この発見は、ブラックホールの進化におけるミッシングリンクと考えられている中間質量ブラックホールの形成と成長に関する重要な手掛かりとなるはずです。
この研究は、マックス・プランク天文学研究所のNadine Neumayerさんたちの研究チームが進めています。
図1.今回の研究では、ハッブル宇宙望遠鏡が20年以上に渡って撮影した500枚以上のオメガ星団の画像データが使用。天の川銀河最大の球状星団“オメガ星団”の最も内側にある7つの高速で動く星を検出している。これらの恒星は、中間質量ブラックホールの存在を示す有力な新証拠となる。(Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Häberle (MPIA)) |
天の川銀河の中で最大の球状星団
オメガ星団(NGC 5139)は、ケンタウルス座の方向約1万7700光年彼方に位置する球状星団です。
肉眼でも観測が可能で、南半球の星空観察の愛好家にとって人気のある天体一つでもあります。
球状星団は、星団のうち数百万個以上の恒星が重力で集合し、概ね球状の形をとったものを球状星団と呼びます。
数百光年以内に数万個以上の恒星が密集しています。
オメガ星団を構成する星々の数は約1000万個で、その規模は天の川銀河の中で最大の天体になります。
オメガ星団は、その巨大な規模だけでなく、他の球状星団とは異なるいくつかの特徴を持っています。
例えば、通常の球状星団よりも高速で回転していて、その形状は著しく平坦です。
また、他の大きな球状星団に比べて約10倍も大きく、小さな銀河に匹敵するほどの質量を持っています。
これらの特徴は、オメガ星団が過去に経験した複雑な進化の歴史を示唆していて、その中心に中間質量ブラックホールが存在する可能性を高めるものとなっています。
確実な発見例がほとんど無いブラックホール
ほとんどの銀河の中心には、太陽の100万倍から100億倍の質量を持つ“超大質量ブラックホール”が存在すると考えられています。
私たちの天の川銀河の中心にも、太陽の400万倍の質量を持つ超大質量ブラックホール“いて座A*(エースター)”が存在しています。
また、大質量星が超新星爆発を起こした後に誕生する、太陽の数倍~数十倍程度の質量を持つ“恒星質量ブラックホール”も宇宙には多数存在しています。
一方で、存在は予測されていても、確実な発見例がほとんど無いブラックホールもあります。
それが、太陽質量の100倍~10万倍という“中間質量ブラックホール”です。
超大質量ブラックホールは、恒星質量ブラックホールが合体を繰り返すことで形成されたとも考えられています。
なので、この2つのブラックホールの中間くらいの質量を持つ中間質量ブラックホールもあるはずなんですねー
このことから、中間質量ブラックホールは、ブラックホールの進化過程を理解する上で重要なカギを握ると考えられています。
でも、これまでその候補天体は、ごくわずかしか発見されていませんでした。
今回のオメガ星団における発見は、中間質量ブラックホールの形成場所や、その成長過程を解明する上で、貴重な手掛かりとなる可能性があります。
質量によって分類される3種類のブラックホール
1.恒星質量ブラックホール
太陽の数倍から数十倍の質量を持つ、比較的小さなブラックホール。
大質量の恒星がその一生の最期に、自身の重力によって崩壊して形成されると考えられている。
2.中間質量ブラックホール
太陽の数百倍から数万倍の質量を持つブラックホール。
恒星質量ブラックホールと超大質量ブラックホールの中間に位置し、その形成過程や進化についてはまだ多くの謎が残されている。
3.超大質量ブラックホール
太陽の数百万倍から数十億倍という、非常に大きな質量を持つブラックホール。
ほとんどの銀河の中心に存在すると考えられていて、銀河の進化と密接に関係していると考えられている。
何らかの強い重力源の影響を受けている7つの星
ブラックホールは、極めて高密度で強い重力を持つ天体で、光さえも脱出できないので直接観測することはできません。
そのため、ブラックホールその存在を知るためには、周囲の天体の動きへの影響から間接的に推測されてきました。
そこで、今回の研究では、ハッブル宇宙望遠鏡が20年以上に渡って撮影した、500枚以上のオメガ星団の画像データを使用。
これらの画像は、当初ハッブル宇宙望遠鏡の機器の調整を目的としたものでした。
それらの画像が結果的には、星団の中心付近の星の動きを長期間にわたって追跡するのに、理想的なデータセットになった訳です。
研究チームは、これらの画像データから、星団中心付近にある約140万個の星の速度を測定し、その動きを分析。
その結果、7つの星が星団の重力から脱出してしまうほどの非常に速い速度で移動していることが明らかになります。
これらの星は、通常の進化過程では説明できないほどの高速で移動していたんですねー
この7つの星の速度と軌道は、星団の中心に、目に見えない非常に重い天体が存在していることを強く示唆していました。
このことから研究チームが考えたのは、これらの星を星団の中心に繋ぎ止めている重力源は、中間質量ブラックホールである可能性が非常に高いということ。
最終的に本研究では、7つの星の高速な動きを説明するために、星団の中心に太陽の約8200倍の質量を持つ中間質量ブラックホールが存在すると結論付けています。
今回の発見は、中間質量ブラックホールの存在を示す強力な証拠と言えますが、まだ確認には至っていません。
このため、研究チームはブラックホールの質量や位置をより正確に特定するのに、さらなる観測を計画しています。
特に、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による観測は、オメガ星団の中心に位置するブラックホールの謎を解明する上で、重要な役割を果たすと期待されています。
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡は、ハッブル宇宙望遠鏡よりも高い感度と解像度で観測することができるので、ブラックホール近傍の星の動きを、より詳細にとらえることが可能になります。
オメガ星団の中間質量ブラックホールの研究は、ブラックホールの形成と進化、そして銀河の形成と進化の関係を理解する上で、重要なカギを握っています。
今後の観測と研究の進展により、これらの宇宙の謎が解き明かされることが期待されます。
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