褐色矮星は、木星のような巨大ガス惑星と太陽のような恒星との中間的な性質を持つ天体で、その性質が注目されてきました。
“WISE 1049AB”は地球から最も近い褐色矮星の連星系で、その近さと明るさから、褐色矮星の詳細な研究に最適な天体として知らています。
今回の研究では、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線分光装置“NIRSpec”と中間赤外線観測装置“MIRI”を用いて“WISE 1049AB”を観測。
“WISE 1049AB”の大気組成、時間変動、およびそれらの波長依存性を詳細に調査しています。
本研究により、褐色矮星の大気機構や天候に関する理解は飛躍的に進歩しました。
今後、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による更なる観測や、より高度な大気モデルを用いた解析により、褐色矮星の気象条件と大気機構の理解が飛躍的に進むことが期待されています。
巨大ガス惑星と恒星の中間に属する天体
褐色矮星は、巨大ガス惑星と恒星の中間に属する天体で、その重さは木星の13倍から80倍あります。
そのような質量の天体では、(恒星と異なり)水素の核融合が起こらず、(惑星と異なり)重水素やリチウムの核融合が起こりますが、存在量が非常に少ない原子核を素にしている反応なので、すぐに停止してしまうことに…
その後は、赤外線放射をしながらゆっくりと冷えていくことになります。
一方、質量以外では、重い惑星と軽い褐色矮星は、ほとんど同じ性質を示すと考えられています。
褐色矮星は高温のタイプでも表面温度は2000度未満で、なかには100℃を下回って水の雲を持つ例すらあります。
この点で、褐色矮星は巨大ガス惑星の非常に重いタイプとみなすことができます。
“褐色矮星”は、恒星と惑星の中間の質量を持つ、太陽系には存在しない種類の興味深い星です。
木星のような巨大惑星と軽い褐色矮星は、ほとんど同じ性質を持つと期待されるので、巨大惑星の進化や大気を調べる上でも褐色矮星は重要な存在と言えます。
褐色矮星には、宇宙空間を単独で漂う“孤立型”と、恒星を周回する“伴星型”の2種類が存在しています。
また、“褐色矮星”の一部は、強力な磁場を持つことが知られていますが、その正確な起源は分かっていません。
褐色矮星の大気中に存在する分子の検出
これまでの地上望遠鏡では、地球の大気に吸収されてしまうので赤外線波長域での観測が困難でした。
そこに登場したのが、NASAが中心となって開発した口径6.5メートルの赤外線観測用の“ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡”です。
2022年に本格的な運用を開始したジェームズウェッブ宇宙望遠鏡は、赤外線観測に特化した高性能な望遠鏡で、宇宙空間から地球大気の干渉を受けずに観測を行うことができました。
約6光年という宇宙スケールでは非常に近い距離に位置する褐色矮星の連星系“WESE 1049AB”を、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の高い感度と高分解能によって、大気中に存在する水(H2O)、メタン(CH4)、一酸化炭素(CO)などの分子を明確に検出することに成功。
これらの分子は、褐色矮星の大気の温度、圧力、化学組成などを理解する上で重要な指標となります。
さらに、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の観測データから明らかになったのは、“WISE 1049AB”の大気が時間とともに大きく変化すること。
これは、これまでの褐色矮星の観測ではとらえることができなかった、大気中の雲の動きや嵐の発生を示唆していました。
多層構造を持つ褐色矮星の大気
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の観測データの詳細な解析から、“WISE 1049AB”の大気には複数の層が存在し、それぞれの層で異なる物理状態を持つことが明らかになりました。
これは、褐色矮星の大気がこれまで考えられていたよりも、複雑な構造を持つことを示唆しています。
それぞれで以下のようなことが明らかになっています。
WISE 1049A
WISE 1049B
これらのことから、“WISE 1049AB”の大気に見られる時間変動は、大気中に存在する雲の不均一な分布や、大気循環による雲の放射フィードバック、非平衡化学反応によって生じるホットスポットなどが原因として考えられます。
また、褐色矮星の大気中では、ケイ酸塩などの物質が凝縮して雲が形成されます。
この雲の分布が不均一な場合、褐色矮星の明るさや色が時間とともに変化すると考えられます。
褐色矮星の大気中では、地球の大気と同様に、対流や風などの大規模な循環が発生しています。
この大気循環によって雲の分布が変化し、それがさらに大気循環に影響を与えるというフィードバック機構が働くことが考えられます。
褐色矮星の大気中では、恒星のように一様に加熱されている訳ではなく、場所によって温度が異なる場合があります。
このような温度差によって、特定の化学反応が促進され、周囲よりも高温になるホットスポットが形成されることがあるようです。
“褐色矮星”は、恒星と惑星の中間の質量を持つ、太陽系には存在しない種類の興味深い星です。
木星のような巨大惑星と軽い褐色矮星は、ほとんど同じ性質を持つと期待されるので、巨大惑星の進化や大気を調べる上でも褐色矮星は重要な存在になります。
本研究では、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡により、褐色矮星の大気機構や天候に関する理解が飛躍的に進歩しました。
今後、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を用いたさらなる観測や、より詳細な理論モデルの構築によって、褐色矮星の大気の謎が、さらに解明されていくことが期待されています。
特に、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡は“WISE 1049AB”のような比較的地球に近い褐色矮星だけでなく、より遠くにある褐色矮星や、褐色矮星よりもさらに質量の小さい天体“自由浮遊惑星”の大気の観測も可能にしてくれるはずです。
これらの観測を通して、惑星と恒星の形成過程や、惑星系における多様性に関する理解が深まることが期待されます。
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“WISE 1049AB”は地球から最も近い褐色矮星の連星系で、その近さと明るさから、褐色矮星の詳細な研究に最適な天体として知らています。
今回の研究では、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線分光装置“NIRSpec”と中間赤外線観測装置“MIRI”を用いて“WISE 1049AB”を観測。
“WISE 1049AB”の大気組成、時間変動、およびそれらの波長依存性を詳細に調査しています。
本研究により、褐色矮星の大気機構や天候に関する理解は飛躍的に進歩しました。
今後、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による更なる観測や、より高度な大気モデルを用いた解析により、褐色矮星の気象条件と大気機構の理解が飛躍的に進むことが期待されています。
この研究は、エディンバラ大学のBeth A Biller教授を中心とした研究チームが進めています。
本研究の詳細は、天文学と天体物理学の研究を取り扱う査読付きの学術雑誌“Monthly Notices of the Royal Astronomical Society(王立天文学会月報)”に掲載されました。
本研究の詳細は、天文学と天体物理学の研究を取り扱う査読付きの学術雑誌“Monthly Notices of the Royal Astronomical Society(王立天文学会月報)”に掲載されました。
巨大ガス惑星と恒星の中間に属する天体
褐色矮星は、巨大ガス惑星と恒星の中間に属する天体で、その重さは木星の13倍から80倍あります。
そのような質量の天体では、(恒星と異なり)水素の核融合が起こらず、(惑星と異なり)重水素やリチウムの核融合が起こりますが、存在量が非常に少ない原子核を素にしている反応なので、すぐに停止してしまうことに…
その後は、赤外線放射をしながらゆっくりと冷えていくことになります。
一方、質量以外では、重い惑星と軽い褐色矮星は、ほとんど同じ性質を示すと考えられています。
褐色矮星は高温のタイプでも表面温度は2000度未満で、なかには100℃を下回って水の雲を持つ例すらあります。
この点で、褐色矮星は巨大ガス惑星の非常に重いタイプとみなすことができます。
“褐色矮星”は、恒星と惑星の中間の質量を持つ、太陽系には存在しない種類の興味深い星です。
木星のような巨大惑星と軽い褐色矮星は、ほとんど同じ性質を持つと期待されるので、巨大惑星の進化や大気を調べる上でも褐色矮星は重要な存在と言えます。
褐色矮星には、宇宙空間を単独で漂う“孤立型”と、恒星を周回する“伴星型”の2種類が存在しています。
また、“褐色矮星”の一部は、強力な磁場を持つことが知られていますが、その正確な起源は分かっていません。
褐色矮星の大気中に存在する分子の検出
これまでの地上望遠鏡では、地球の大気に吸収されてしまうので赤外線波長域での観測が困難でした。
そこに登場したのが、NASAが中心となって開発した口径6.5メートルの赤外線観測用の“ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡”です。
2022年に本格的な運用を開始したジェームズウェッブ宇宙望遠鏡は、赤外線観測に特化した高性能な望遠鏡で、宇宙空間から地球大気の干渉を受けずに観測を行うことができました。
約6光年という宇宙スケールでは非常に近い距離に位置する褐色矮星の連星系“WESE 1049AB”を、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の高い感度と高分解能によって、大気中に存在する水(H2O)、メタン(CH4)、一酸化炭素(CO)などの分子を明確に検出することに成功。
これらの分子は、褐色矮星の大気の温度、圧力、化学組成などを理解する上で重要な指標となります。
さらに、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の観測データから明らかになったのは、“WISE 1049AB”の大気が時間とともに大きく変化すること。
これは、これまでの褐色矮星の観測ではとらえることができなかった、大気中の雲の動きや嵐の発生を示唆していました。
多層構造を持つ褐色矮星の大気
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の観測データの詳細な解析から、“WISE 1049AB”の大気には複数の層が存在し、それぞれの層で異なる物理状態を持つことが明らかになりました。
これは、褐色矮星の大気がこれまで考えられていたよりも、複雑な構造を持つことを示唆しています。
それぞれで以下のようなことが明らかになっています。
WISE 1049A
- 水蒸気の吸収線が顕著に見られることから、大気中には水蒸気が豊富に存在することを示唆している。
- 8.5μm以上の波長域ではスペクトルが平坦になる傾向があり、これは小さなケイ酸塩粒子でできた雲の存在を示唆している。
- 時間変動は、WISE 1049Bと比較して小さく、比較的安定した大気状態を持つことが考えられる。
WISE 1049B
- WISE 1048Aと比較して、水蒸気の吸収線が弱く、メタンの吸収線が強くみられることから、WISE 1049Aよりも低温であることが示唆される。
- 8.5μm以上の波長域ではスペクトルが急激に減少していて、これはWISE 1049Aとは異なる大気構造を持つことを示唆している。
- WISE 1049Aと比較して、時間変動が大きく、活発な大気活動を持つことが考えられる。
- 特に、2.3μm以下と8.5μm以上の波長域では二重ピーク型の変動が見られ、4.2μmから8.5μmの波長域では単一ピーク型の変動が見られる。
これらのことから、“WISE 1049AB”の大気に見られる時間変動は、大気中に存在する雲の不均一な分布や、大気循環による雲の放射フィードバック、非平衡化学反応によって生じるホットスポットなどが原因として考えられます。
また、褐色矮星の大気中では、ケイ酸塩などの物質が凝縮して雲が形成されます。
この雲の分布が不均一な場合、褐色矮星の明るさや色が時間とともに変化すると考えられます。
褐色矮星の大気中では、地球の大気と同様に、対流や風などの大規模な循環が発生しています。
この大気循環によって雲の分布が変化し、それがさらに大気循環に影響を与えるというフィードバック機構が働くことが考えられます。
褐色矮星の大気中では、恒星のように一様に加熱されている訳ではなく、場所によって温度が異なる場合があります。
このような温度差によって、特定の化学反応が促進され、周囲よりも高温になるホットスポットが形成されることがあるようです。
“褐色矮星”は、恒星と惑星の中間の質量を持つ、太陽系には存在しない種類の興味深い星です。
木星のような巨大惑星と軽い褐色矮星は、ほとんど同じ性質を持つと期待されるので、巨大惑星の進化や大気を調べる上でも褐色矮星は重要な存在になります。
本研究では、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡により、褐色矮星の大気機構や天候に関する理解が飛躍的に進歩しました。
今後、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を用いたさらなる観測や、より詳細な理論モデルの構築によって、褐色矮星の大気の謎が、さらに解明されていくことが期待されています。
特に、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡は“WISE 1049AB”のような比較的地球に近い褐色矮星だけでなく、より遠くにある褐色矮星や、褐色矮星よりもさらに質量の小さい天体“自由浮遊惑星”の大気の観測も可能にしてくれるはずです。
これらの観測を通して、惑星と恒星の形成過程や、惑星系における多様性に関する理解が深まることが期待されます。
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