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JAXAの小型月着陸実証機“SLIM”が運用を再開! 月の起源の解明に期待

2024年01月29日 | 月の探査
JAXAの小型月着陸実証機“SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)”が2024年1月28日夜に運用を再開しました。

この発表は“SLIM”の公式X(旧Twitter)アカウントによるもの。
投稿によると、日本時間1月28日夜に通信を確立。
早速、マルチバンド分光カメラによる科学観測を開始し、10バンド高解像度分光観測の初撮像(ファーストライト)まで終えています。

“SLIM”は1月20日に日本初の月面着陸、および世界初となるピンポイント月面着陸に成功していました。
でも、高度50メートル付近で2基のメインエンジンのうち1基を失い、当初の着陸目標地点から東へ約55メートル離れた地点に着陸。

接地時の降下速度は1.4m/s程度と仕様範囲より低速でしたが、横方向の速度や姿勢などの接地条件が仕様範囲を超えることに…
計画と異なる姿勢で接地した“SLIM”は、太陽電池パネルを西へ向けてつんのめったような姿勢で安定することになります。

太陽電池パネルの向きが想定とは違う方向を向くような姿勢になったことで、“SLIM”は太陽電池からの電力発生ができない状態となり、同日午前2:57には地上からのコマンドにより電源をオフにして休眠状態に入っていました。
この電源オフは、バッテリーが過放電して探査機を失うリスクを避けるためでした。

ただ、太陽電池パネルは西を向いているので、今後月面で太陽光が西から当たるようになれば“SLIM”は運用を再開できる可能性があるんですねー
今回の運用再開は、JAXAの期待通りになったという訳です。

休眠状態に入る前に“SLIM”は、マルチバンド分光カメラによる低解像度のスキャンを行って257枚の画像取得。
これにより、観測対象となる6つの岩石を特定していました。

今回、6つの観測目標のうち“(トイ)プードル”を10バンド高解像度分光観測で初撮像し、その画像が公開されています。
図1.10バンド高解像度分光観測の初撮像(ファーストライト)で“(トイ)プードル”を観測した画像。(Credit: JAXA)
図1.10バンド高解像度分光観測の初撮像(ファーストライト)で“(トイ)プードル”を観測した画像。(Credit: JAXA)
マルチバンド分光カメラは、月のマントルに由来するカンラン石を含んだ岩の分光観測を目的に搭載された観測機器です。

では、なぜカンラン石を分析するのでしょうか?
それは月の起源を探るためです。
月は、ジャイアントインパクト(巨大衝突)という形成過程を経て形成されたと考えられています。

ジャイアントインパクト説によれば、45億年前に火星サイズの天体“テイア”が、作られて間もない原始の地球に衝突。
この衝突から生まれた破片が、かなり急速(おそらく数百万年強の間)に分離し、月を形成したと考えられています。

そこで、月のマントルに由来するカンラン石の組成を分析し、その結果を地球のマントルと比較することで、ジャイアントインパクト説を検証する訳です。

これまでアポロ計画により月の岩石が持ち帰られてきました。
でも、残念ながらそれらの岩石は、“SLIM”で分析しようとしているマントル由来のカンラン石ではありませんでした。

今回の“SLIM”にカンラン石の組成の分析で月の起源は分かるのでしょうか?
復活を遂げた“SLIM”の活躍に期待ですね。


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